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歪んだ世界の中で  作者: わっしょい
第一章 冤罪人【ユウマ・カザハラ】
5/9

5.距離

「……また一緒か」


ユウマは掲示板を見ながらぼやく。


隣には、いつものようにミナがいる。


「はい」


「はいじゃねぇよ。なんで毎回いるんだよ」


「偶然です」


「絶対違うだろそれ」


ミナは少しだけ考えてから言う。


「じゃあ、必然です」


「余計おかしいわ」



依頼はいつも通り、低ランクの雑用に近いものだった。


街の外の見回りと、簡単な魔物の駆除。


ユウマは剣を持っているが、戦う気はほぼない。


というより、戦えない。


「来たぞ!」


小型の魔物が飛び出してくる。


ユウマは反射で後ろに下がる。


「無理無理無理!」


「そこ下がってください」


ミナは前に出る。


動きに迷いがない。


一瞬で距離を詰めて、的確に斬る。


「……やっぱ強ぇなお前」


「普通です」


「普通じゃねぇよ」



帰り道。


夕方の光が、石畳を長く引き伸ばしていた。


昼間の喧騒が少しずつ落ち着いていく時間。


商人が店じまいを始め、冒険者たちも三々五々に散っていく。


ユウマとミナは、その流れの中を並んで歩いていた。


特に会話はない。


それでも、気まずさはなかった。


足音だけが一定のリズムで続く。


ふと、風が吹く。


ミナの髪がわずかに揺れて、すぐに元に戻る。


ユウマはなんとなくそれを見て、すぐに視線を逸らした。


言葉にするほどのことでもない、どうでもいい瞬間。


でも、なぜかそのまま歩き続けていた。



街に戻る。


夕方。


人通りが少し増えてくる時間。


「じゃあ、また明日」


ミナが言う。


「……ああ」


ユウマは少しだけ間を置いてから頷く。


別れるのが当たり前みたいになっている。


それが少しだけ、不思議だった。



その夜。


ミナは一人、静かな場所にいた。


手元の通信具に小さく声を落とす。


「……対象ユウマ・カザハラ」


報告は淡々としている。


「危険性、現時点では確認できず」


少しだけ間が空く。


「……一般人と大差ありません」


それだけ伝える。



別の場所。


セレスはその報告を受けていた。


「……了解」


短く返す。


表情は変わらない。



少しずつ、“一人じゃない時間”に慣れ始めていた。


「……まあ、悪くないか」


誰にも聞かれないように、小さく呟く。

(続く)

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