4.少しずつの歪み
ユウマの生活は、相変わらず変わらない。
朝起きて、ギルドへ行って、安い依頼を見て、ため息をつく。
「……今日もかよ」
掲示板の前。
そこにはもうミナがいた。
「おはようございます、ユウマさん」
「おう」
このやり取りも、少しだけ慣れてきた。
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「今日も一緒に行きませんか?」
「またそれ?」
「はい」
即答。
ユウマは少しだけ顔をしかめる。
「お前さ、そんなに俺と組みたい理由ある?」
ミナは一拍置いてから答える。
「一人だと危ないので」
「いや俺が守られる側なの納得いかねぇんだけど」
「そういう役割です」
「役割って何」
会話はずっと噛み合わない。
でも一緒にいることは増えていく。
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依頼は森の薬草採取。
戦闘はほぼない。
ユウマは周囲を見回して歩くだけ。
「これ意味ある?」
「あります」
ミナは短く返しながら、手際よく薬草を集めていく。
「お前ほんと仕事できるよな」
「そうですか?」
「そうだよ。俺より絶対向いてる」
ミナは少しだけ黙る。
「ユウマさんは、そのままでいいと思います」
「どこが?」
「危なくないところです」
ユウマは笑う。
「それ褒めてんのか?」
「はい」
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その帰り道。
町の外れ。
ユウマはふと立ち止まる。
「なあ、お前さ」
「はい」
「なんでそんな俺と一緒にいんの?」
ミナは一瞬だけ間を空ける。
「……依頼です」
「依頼?」
「ギルドの」
「そんな依頼あるのかよ」
ミナは視線を逸らさない。
「あります」
「ふーん……変なの」
ユウマはそれ以上深く考えなかった。
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その夜。
ギルドの屋上。
セレスは報告を受けていた。
『対象ユウマ・カザハラ、接触者増加』
「……ミナ・クロフォードは?」
『監視対象の一環として配置継続』
セレスは短く息を吐く。
「問題なし」
そう言って報告を終える。
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ユウマはまだ気づいていない。
ミナが「偶然の友達」ではないことに。
そしてそれが、少しずつ“日常の形”を変えていることにも。
(続く)




