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歪んだ世界の中で  作者: わっしょい
第一章 冤罪人【ユウマ・カザハラ】
2/9

2.監視

町襲撃事件のあと、ユウマは冒険者ギルドの安い宿に身を寄せていた。


「……結局ここかよ」


逃げる場所も金もない。


あの夜から数日、世界は何も説明してくれないまま動いている。


“町襲撃事件の犯人”


そんな噂だけが一人歩きしていた。



一方その頃。


セレスはギルド支部にいた。


任務報告はすでに済んでいる。


上からの指示は明確だった。


『単独での討伐は不可。監視に移行』


「了解」


短く返し、彼女は街へ降りる。



ユウマのいる街は、冒険者と商人が混ざる中規模都市。


昼は普通に騒がしい。


夜は危険な魔物が出る。


そんな世界だ。


「……腹減ったな」


ユウマはギルドの安飯を食べながらぼやく。


誰も自分のことなんて気にしていない。


そのはずだった。



数日後。


ユウマの周囲に“違和感”が増える。


道端でよく見かける新人冒険者。


同じ顔。


同じ距離感。


「……またあいつか?」


偶然にしては多い。


だがユウマはまだ気づかない。



その一人。


ミナ・クロフォードは、普通の新人冒険者として振る舞っていた。


「おはようございます」


「お、おう……」


ユウマに軽く挨拶する。


ギルドで何度か顔を合わせる程度の距離。


それ以上でも以下でもない関係。


ただ、彼女は少しだけ観察していた。


(……本当に“あれ”なの?)


報告にはそうある。


だが、目の前の男はただの疲れた一般人にしか見えない。



その夜。


セレスは屋上から街を見下ろしていた。


「……監視対象、問題なし」


ミナからの報告も同じだった。


“異常なし。危険性不明”


セレスは一瞬だけ考える。


(それでも、あの魔力痕跡は消えない)


結論は変わらない。


「……継続」



ユウマは知らない。


自分の周りに、すでに“監視の輪”ができていることを。


そしてその輪の中に、これから日常として入り込んでくる存在がいることも。

(続く)

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