2.監視
町襲撃事件のあと、ユウマは冒険者ギルドの安い宿に身を寄せていた。
「……結局ここかよ」
逃げる場所も金もない。
あの夜から数日、世界は何も説明してくれないまま動いている。
“町襲撃事件の犯人”
そんな噂だけが一人歩きしていた。
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一方その頃。
セレスはギルド支部にいた。
任務報告はすでに済んでいる。
上からの指示は明確だった。
『単独での討伐は不可。監視に移行』
「了解」
短く返し、彼女は街へ降りる。
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ユウマのいる街は、冒険者と商人が混ざる中規模都市。
昼は普通に騒がしい。
夜は危険な魔物が出る。
そんな世界だ。
「……腹減ったな」
ユウマはギルドの安飯を食べながらぼやく。
誰も自分のことなんて気にしていない。
そのはずだった。
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数日後。
ユウマの周囲に“違和感”が増える。
道端でよく見かける新人冒険者。
同じ顔。
同じ距離感。
「……またあいつか?」
偶然にしては多い。
だがユウマはまだ気づかない。
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その一人。
ミナ・クロフォードは、普通の新人冒険者として振る舞っていた。
「おはようございます」
「お、おう……」
ユウマに軽く挨拶する。
ギルドで何度か顔を合わせる程度の距離。
それ以上でも以下でもない関係。
ただ、彼女は少しだけ観察していた。
(……本当に“あれ”なの?)
報告にはそうある。
だが、目の前の男はただの疲れた一般人にしか見えない。
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その夜。
セレスは屋上から街を見下ろしていた。
「……監視対象、問題なし」
ミナからの報告も同じだった。
“異常なし。危険性不明”
セレスは一瞬だけ考える。
(それでも、あの魔力痕跡は消えない)
結論は変わらない。
「……継続」
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ユウマは知らない。
自分の周りに、すでに“監視の輪”ができていることを。
そしてその輪の中に、これから日常として入り込んでくる存在がいることも。
(続く)




