1.誤認
「――ユウマ・カザハラ。確認した」
静かな夜の部屋に、女の声が落ちた。
ユウマはソファから立ち上がる。
「……誰だよ、お前」
玄関を見ると、扉は開いている。
そこに立っていたのは銀髪の少女だった。
黒い装備。鋭い目。
ただの侵入者ではないのは一瞬でわかる。
「ちょっと待て、勝手に入ってくんなよ!」
少女は短く答える。
「ユウマ・カザハラ。町襲撃事件の関係者として確認されてる」
「は? 俺そんなの知らねぇって!」
次の瞬間、テーブルが弾け飛ぶ。
ユウマは慌てて後ろに飛ぶ。
「いやいやいや! いきなり殺しにくるの普通じゃないだろ!」
少女――セレスは表情を変えずに距離を詰める。
「普通かどうかじゃない。任務」
「その任務の相手が間違ってる可能性は!?」
セレスは一瞬だけ止まる。
「可能性は低い」
「低いならあるってことだろ!? それで殺すなよ!」
「魔力痕跡が一致してる。映像記録にも映ってる」
「だからそれ俺のせいじゃねぇって!」
ユウマは玄関へ走る。
「話し合いって選択肢ないのかよ!」
「ある。でもあなたには必要ない」
「なんでだよ!」
外へ飛び出す。
夜の街。
セレスは追ってくる。
「逃げても意味ない」
「意味あるだろ! 死にたくねぇんだよ!」
ユウマは走りながら叫ぶ。
「俺ほんとに何もしてねぇって!」
「それは調べる」
セレスの声は冷たい。
その瞬間――
ドン、と地面が揺れた。
「うわっ!?」
ユウマがよろける。
ビルが軋む。
地面に亀裂。
「地震……!?」
「違う」
セレスは一瞬だけ周囲を見る。
さらに大きな揺れ。
街が崩れ始める。
「おいマジかよこれ!」
ユウマは走る方向を変える。
瓦礫が落ちる。
道が潰れる。
セレスも一瞬足を止める。
「……今は無理か」
小さくそう言って、周囲を警戒する。
ユウマはその隙にさらに距離を取る。
崩壊する街の中を必死に走る。
⸻
数分後。
揺れが収まる。
ユウマは瓦礫の陰に倒れ込むように座る。
「……なんなんだよ、ほんとに」
呼吸が荒い。
周囲は崩壊している。
あの少女の姿はもう見えない。
ただ一つだけ残る。
「俺、なんで殺されかけてんだ……」
(続く)




