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歪んだ世界の中で  作者: わっしょい
第一章 冤罪人【ユウマ・カザハラ】
1/9

1.誤認

「――ユウマ・カザハラ。確認した」


静かな夜の部屋に、女の声が落ちた。


ユウマはソファから立ち上がる。


「……誰だよ、お前」


玄関を見ると、扉は開いている。


そこに立っていたのは銀髪の少女だった。


黒い装備。鋭い目。


ただの侵入者ではないのは一瞬でわかる。


「ちょっと待て、勝手に入ってくんなよ!」


少女は短く答える。


「ユウマ・カザハラ。町襲撃事件の関係者として確認されてる」


「は? 俺そんなの知らねぇって!」


次の瞬間、テーブルが弾け飛ぶ。


ユウマは慌てて後ろに飛ぶ。


「いやいやいや! いきなり殺しにくるの普通じゃないだろ!」


少女――セレスは表情を変えずに距離を詰める。


「普通かどうかじゃない。任務」


「その任務の相手が間違ってる可能性は!?」


セレスは一瞬だけ止まる。


「可能性は低い」


「低いならあるってことだろ!? それで殺すなよ!」


「魔力痕跡が一致してる。映像記録にも映ってる」


「だからそれ俺のせいじゃねぇって!」


ユウマは玄関へ走る。


「話し合いって選択肢ないのかよ!」


「ある。でもあなたには必要ない」


「なんでだよ!」


外へ飛び出す。


夜の街。


セレスは追ってくる。


「逃げても意味ない」


「意味あるだろ! 死にたくねぇんだよ!」


ユウマは走りながら叫ぶ。


「俺ほんとに何もしてねぇって!」


「それは調べる」


セレスの声は冷たい。


その瞬間――


ドン、と地面が揺れた。


「うわっ!?」


ユウマがよろける。


ビルが軋む。


地面に亀裂。


「地震……!?」


「違う」


セレスは一瞬だけ周囲を見る。


さらに大きな揺れ。


街が崩れ始める。


「おいマジかよこれ!」


ユウマは走る方向を変える。


瓦礫が落ちる。


道が潰れる。


セレスも一瞬足を止める。


「……今は無理か」


小さくそう言って、周囲を警戒する。


ユウマはその隙にさらに距離を取る。


崩壊する街の中を必死に走る。



数分後。


揺れが収まる。


ユウマは瓦礫の陰に倒れ込むように座る。


「……なんなんだよ、ほんとに」


呼吸が荒い。


周囲は崩壊している。


あの少女の姿はもう見えない。


ただ一つだけ残る。


「俺、なんで殺されかけてんだ……」

(続く)

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