#9 機械の限界、身体の限界
あるとです。
先日の活動報告でも述べた通り、
今週からは、With My Rは毎週投稿となります。
ハイペースで話が進んでいくようになるので、
書く側のモチベーションも上がります。
この勢いで次の話早く書きてぇ〜、ってなるので。
なので、そこんとこよろしくお願いします。
髙木のレビンに搭載されている、7A-GEユニット。
AE111に元々搭載されていた、5バルブの4A-GEエンジンのシリンダーヘッドと、AT211型のトヨタ・カリーナなどに搭載されていた7A-FEエンジンのシリンダーブロックを合体。
そうして生まれたのが、髙木のレビン7A-GEエンジンである。7A-GEの最高出力は、およそ200馬力〜220馬力が一般的。
だが、"髙木スペシャル"7A-GEは話が別。ピークパワーを10000回転まで引っ張り、クロモリ鋼のフルカウンタークランクシャフトを組み込むなどにより、NAながら実に250馬力という、超パワーを発揮する。
そのアシストもあるため、7A-GEの得意な低中回転域では特に、パワフルトルクフルに路面に動力を伝えることができる。
髙木は、そんな高度なチューニングを施したエンジンを、コンプリートエンジンとして販売していて、その腕が確かなものであることを証明している。
FFに乗り続けた事で手に入れたタックインの技術だけでなく、これまでのノウハウを活かして活躍する、エンジンビルダーの役割もこなせる、まさに二刀流人間である。
が、そのエンジンには明確な弱点が存在した。高回転域での強度は保証されているものの、高回転まで回したから速度が伸びる、というわけではない。
1.8Lへの排気量アップは、あくまでも低中回転域のアシストの為。いくら5バルブとはいえ、ストロークの長くなったエンジンでは、高回転域での速度の伸びが、お世辞にもいいとは言えなかった。
クランクシャフトが回れば回るほど、エンジンに取り入れる空気の量が追いつかなくなっていく。圧縮比などを最適化しているとは言えど、その弱点に関してはどうしようもない。
だからこそ、立ち上がりでの低中速回転域での加速の良さが成り立つ。悪さを見捨て、良さを伸ばす。髙木はそれを重要視して、このエンジンを作り上げた。
それに加えて、エンジンの速度を伸ばす動力となるトランスミッションは、Hパターン6速ロークロス仕様。もちろんクラッチも強化されていて、シフトロスも少ない。
ギアシフトを出来る限り早く行えるようにする事で、低中速回転域で走る区間が長くなるようにしている。7A-GEの低中速トルクも相まって、その効果は絶大。
彼のレビンは、エンジンの悪さを良さに変えることではなく、元からある良さを更に伸ばす事によって、真価を発揮できるのだ……!
(C-7は加速力とステアリングの技術が噛み合わなければ、基本速くは走れない。だが、リーダーはこれまでの走りで感覚が身についている……厄介だ。
地元でもないくせに、自分の得意なフィールドになった時だけは、異様に速いんだもんな、リーダー……!)
現在3台の向かっているC-7付近は、ジグザクとしたS字区間の連続によって構成されている。ここを速く走れるテクがないと、すぐに置いていかれる。
それに加えて、C-7のインサイドには蓋のない側溝があり、誤ってインを攻めすぎて側溝にハマると、最悪の場合には大クラッシュを招いてしまう。
ジュンはこのステージでの走りに慣れている。何百と往復し続けて研ぎ澄まされた彼の感覚は、一番速く走れるラインを自然と走れるようになっていた。
唯一、公道最速・新庄元也に敗れたことこそあるが、これまでに鍛え上げてきたここでの走りが、その一戦だけで無駄になったという訳ではない。
ここのS字の形状を得意とする髙木とレビンに、ジュンはついていける。そう、確信できる状況下だった。
(イケる、俺のモチベーション最ッ高にビンビンだ……車もタイヤも俺の調子も、手応えはキッチリある……ぜってェ逃さねえ!)
迫りくるS字に備えてブレーキを踏んだGT-Rのフロントが、先に深く沈んだ。そしてすぐ、4速から一気に2速までシフトダウンする。
0.5秒とない一瞬のシフトダウンで、ジュンはS字への準備を終わらせた。
(FFでしかできないツッコミに、お前はリズムを合わせられない。このフィールドじゃオレが一番速えんだ。ここでチェックメイト……逃げ切らせてもらう!)
そしてレビンのフロントも一気に沈む。フロントのブレーキローターが摩擦によって熱を持ち、赤く発光する。
香取はブレーキを踏み、すぐにステアリングを回してリアを流し、フェイントモーションに入る。
3人は、ほぼ同時にステアを切り、連続S字に突っ込んでいった。グネグネと続く緩いS字を、3台は駆け抜けていった。
ジュンがアクセルを抜くたび、タービンのブレードが急激に失速し、シュルシュルという音と同時にバックタービンを引き起こした。
マフラーからは、抑えられた銃声のような音と共に炎が放たれる。
(イイ音だぜ、ほんとに……車のレスポンスはいい、タイヤもまだ残ってる。この調子のまま、このまま耐えてくれよ……俺のRッ!)
2速と3速の間を何度行き来させたのか、ジュンはもう覚えてすらいない。それほどにシフトチェンジの回数が多いこの区間。C-7までだけではなく、その先もまだ、このようなフィールドが続いていく。
その時、体力的にも限界が近かったジュンは、何か自分の身体に異変が起こっていることを察する。異変が起きているであろう箇所は、右足のふくらはぎ。
アクセルを軽く離したり、また踏み込んだり、その動作を繰り返し続けていくジュン。彼はどうしても、アクセル開度を一定に保つことができなかった。
(ふくらはぎ辺りからじわじわと感じる……これ、痙る!)
ずっと車に座り続け、車を走らせて小一時間。機械の限界よりも、身体の限界のほうが先に来ていたのだ。
ぎこちない右足首の動きが、それを表している。
このデバフを治すには一度、アクセルを離しきるしかない。だが、そんな事すればレースに負ける。ジュンは最悪のタイミングで、苦渋の決断を迫られてしまう。
(こんなとこで負けてたまるかよ。だけど……ッ!)そう考えているうちにも、無慈悲にもコーナーはやってくる。
C-7コーナー、蓋のない側溝がインサイドにあるにも関わらず、髙木のペースは一気に速くなり、どんどん先を急ごうとしていた。
インサイドギリギリを攻めきる髙木。その異常な速度は、彼の扱うエンジンを動かす足と、ギアセッティングにある。
彼がなぜ、"タックインの魔術師"と呼ばれるのか。
そもそもタックイン自体は、レースの世界でFF車に乗る人は誰もが使う。FF乗りの"常識"として扱われ、親しまれているテクニックである。
やり方は簡単。コーナーの走行中、アンダーステアが出た/出そうになった際に、軽くアクセルを抜く。
たったこれだけ。アクセルを抜くことで、荷重が前へ移動する。
速めの速度でコーナーに進入した事によりアンダーステアが引き起こされても、この一連の動作によってオーバーステアに近い挙動を意図的に出せる。
FF車で走りを極めるならば、自然と身についていくようなこのテクの重要な部分というのは、タックインを放つその"タイミング"である。
髙木はFFに乗り続けて自然と身についた、タックインのベストタイミング。どれくらいのキツさのコーナーで、どの侵入速度で……それを一瞬で処理している。
そしてそれを完璧に行う。ベストタイミングで放つタックインと、加速をより高めるクロスミッションのダブルコンボは、髙木の走りを更に引き伸ばす。
それに加えて、完成度の高い7A-GEエンジンと組み合わせれば、3連続のストレートパンチが決まる。
(Rのペースは……落ちていないだと?)
髙木は"知っている人間"らしい走りを見せつけた。だが、髙木のレビンの身にも、目に見えて一つの異変が起こり始めていた。
タックインを決めるタイミングまでは、コーナー中はブレーキかアクセルを踏むことになる。またはアクセルオフによるエンジンブレーキ。
前へと加速するためには、アクセルを踏むこと以外に方法はない。それは、車全体がそうなのである。
FFはフロントに重さが集中している。ドライブシャフト、トランスミッション、なによりエンジン。走るためのものが、フロント周辺に詰まっている。
リアのタイヤは、それらについていくように転がっているだけ。FF車はフロントタイヤを酷使することになるのだ。
ストレートで加速しようにも、コーナーを立ち上がろうにも、フロントタイヤのみで加速する。
レビンのタイヤの限界は、ジュンの32Rやジュンのふくらはぎよりもキツいものだった。だが、その先はヘアピン区間。
髙木はここで離しておきたかった。だが、しぶとくついてくるジュンと32R。そしてジュンについていく香取。
2人のドライバーと車は、髙木の走りよりも圧倒的に耐久性の高いものだった。限界が来てからが本領のジュン。
「ッふぅ〜……ヨシッ!」
足の痛みが、だんだんと引いてきていた。だが、足に気を取られていた時間にも、髙木は離そうとしてくる。
C-7コーナーで、3台はインサイドギリギリを限界領域で走りながら、コーナーを抜けていく。コースはまだ中盤。
連続S字の直後、ヘアピンコーナーがまた何度も続く区間が姿を現す。
ジュンは身体の限界を気合で超え、ロスした分のアドバンテージを取り戻すべく、アクセルを踏み込む。
そして、バトルは終盤へと突入する事になる。
なんか、香取の立ち位置が
よくわかんなくなってきちゃいました。
自分で描いてて、「コイツどうしよ?」
となる瞬間が多いのです。
「活躍はさせたいし、でも今いらないし」と、悩んでます。
キャラ下手なのはあまり気にしないで……。
以上、あるとでした。




