#8 7A-G(セブンエージー)の実力
あるとです。
水曜日、やっと届きました街道バトル3。
面白い。
とはいえハンコンの挙動がヤバいです。
ハンドル角をたった1°曲げただけで
車がエグいほどに曲がります。
全然ゲームを進めるにはハードモードすぎて、
すぐにパッドに戻しました。
同時刻、麓にある岡本のカフェ。閉店作業を終えた彼は、暗い店内で1人、小さな明かりを1つだけつけて読書をしていた。
岡本は、小説に書かれている文字をスラスラと読んでいく。("「そこらに落ちてる小さな幸せを、よく噛み締めて生きる事こそが、生きる理由なのだろう。」
男は俯いたまま目を開くと、立ち上がって背伸びをした後に、太陽の向かう方向へと歩き出した…。 終")
岡本は本を閉じ、自分で淹れたカフェオレの入ったカップをすする。(この本いいな。バッドエンド終わりに見えるけど、主人公にとっちゃハッピーエンドって雰囲気だし……
複雑でも、不思議と納得できる終わり方なんだよな。)カップを置き、立ち上がって背伸びをする。そして本を小さな棚に戻した岡本は、1枚の履歴書を取り出した。
(……このコ、採用してから気づいたが、"アイツ"と高校同じなんだな。それも2つ上の先輩。会ったことあんのかな……?)
その履歴書の学歴覧に、ジュンと同じ高校の名前が記されていた。岡本は軽くため息をつき、カップに入っていたカフェオレを飲み干した。
手際よくカップを洗い、店の唯一の明かりを消し、店を完全に閉めた。店の外に出た瞬間、岡本の頭にポツンと一粒の雨が。(ん……霧雨のうちに帰るか。)
もみじラインの序盤。ジュンと髙木、そして香取の3人は、3連S字コーナーに近づく。2つ目のコーナーのインサイドは、擁壁と道路の間に空間があり、軽いショートカットが出来る。
その直前の1つ目のコーナー、インサイドのガードレールが途中から2つ目のコーナーの直前まで途切れている。インを攻める際、一気にインサイドに車を寄せることができる区間になっている。
フェイントドリフトの際でも、リアバンパーがガードレールにぶつかることも無いので、リアを気兼ねなく振る事ができる。
その直前の左中速コーナー。ジュンのR32は、髙木のレビンのすぐ後ろを走っていた。だが、ジュンはアクセルを全開にすることは一度もない。
抜こうとする素振りを見せながらも、前に出ずにひたすら焦らし続けているだけ。一度も前に出ることはなかった。
(チッ、邪魔くせえ動きばっかしやがってコイツ。ミラーにチラチラと光が映るせいで、眩しいったらありゃしねぇ……!)
それでも前を向き、自分の走りに集中していく髙木。すると、ジュンのバックミラーにも、ヘッドライトによる白い光が映る。
香取のワンビアが、ジュンのR32に追いついてきた。(な……宏一くんのワンビア!着いてきてたのか……って、にしちゃ速すぎじゃねーか!?)
香取のスタートしたC-1ヘアピンから、1kmちょっとの距離。全開走行の車と、それに合わせてついて行く車に追いつこうとするには、少し短すぎる。
それでも、香取はついさっきのジュンとのバトルで、彼の走りから分かったことを実践している。
いつもなら軽くアクセルを抜くようなコーナーでも、香取は迷いなくアクセルを踏み続けた。迷いのない走りが出来たからこそ、2台に追いつく事が出来たのだ。
(まぁいいや、そこで見ててくれよ宏一くん。ちょっとアイツの事ビックリさせてやっからよッ!)
左中速コーナーに入る3台。髙木はアクセル全開のまま、インサイドを陣取るラインで走る。ジュンと香取はそれについていく。
コーナー中腹に差し掛かったその瞬間、ジュンのR32がインサイドの縁石を乗り上げ、雑草地帯にタイヤを乗せて走るライン取りを見せた。
「今度こそマジで抜く気か、インベタの更にイン側を走ってやがるだと!?」ジュンの思惑通り、髙木は彼に動揺した。そのせいで力が緩んだのか、レビンの走行ラインが少し外へとズレた。
すかさず、ジュンは空いたスペースに車をねじ込もうとする。が、ラインの修整に入った髙木により、スペースを封じられてしまう。香取もジュンの走りに驚かされていた。
(本当、面白い走りをする人だ……ホームコースを走るのって、こんなに躊躇がないものなのか?……頭のネジが飛んでるのか、それとも元々そんな物ないのか。)
(今の一瞬でライン修整するなんて。やっぱリーダーやってるだけあるな、判断が早え。車の方も、その判断に追いつけるだけのスペックがある……このレビン、バカ速えぞ!)
中速コーナーを抜けた3台。髙木は得意気に、ニヤリと笑みを浮かべた。(4A-GEのカムブロックと7A-FEのシリンダーブロックの組み合わせは、やっぱり正解だった。
20個のバルブによる抜群の吸排気性能と、1.8Lへの排気量拡大での、4A-Gでは薄かった低中速トルクの向上によるこの加速感。
ついてこいよR、重っ苦しいそのエンジンとその走り方で、俺のライン取りに、7A-GEの実力にッ!)迫る第1コーナー。
髙木は大きく外に車体を寄せ、アクセルを踏んだままハンドブレーキを引く。レビンは一気にリアが出て、直角的なJターンでコーナーに侵入する。
FFとは思えないほどに鋭いターンインを見せつける髙木。それを香取は少し遠くから見て、1人呟く。「リーダーはヘアピンじゃいつもこれだ。ドリフト嫌いのくせに。」
ジュンはブレーキを限界まで踏み、一気にギアを下げていく。そして軽くフェイントをかけながら、ハンドブレーキを引き、煙を上げながら車を無理やり曲げていった。
香取は、それに追走するようにドリフトをして、コーナーを曲がる。ジュンは段々と、インサイドに車を寄せていく。
ガードレールが途切れると同時に、フロントを一気に寄せる。ガードレールがなくなった分、空いたスペースにノーズをねじこむことができた。
ジュンがステアをパッと離すと、立っていたポールがフロントバンパーギリギリを掠め、車は外へと膨らんでいく。ステアリング角も段々と真っ直ぐになっていった。
(ほぉ、着いてくるかよッ!)髙木はドリフト勢より一足先に2つ目のコーナーへ入った。得意のタックインを使い、擁壁と車道の間にあるアスファルトを通っていく。
(ずいぶん躍起になってる。さっき抜かれそうになって、焦りが出てんな……焦んの早くねえかコイツ、まだ序盤も序盤だぞ?)
ジュンは心の中でそう思いながらステアを再び掴み直し、彼もコーナーに飛び込んで行く。一気に左へと回転したステアを利用し、左へ一気に車を曲げていった。
流れていくR32のリア。高い進入速度で一気にインサイドのブランク地帯を抜けていく。このショートカットに近いライン取りが、このコーナーは最も速い。
重量級の4WDでそのラインを通すジュンも十分異常だが、慣れないコースで、その最速ラインを初見同然で正確に選び取った髙木もまた、並の走り屋ではなかった。
(何度も考えるが……ほんとにコイツが、宏一くんよりも遅いのか?なら、何か弱点があるはずなんだが……分かんねえな。)
3コーナー目。2コーナーの立ち上がりである程度スピードの乗った状態からの急ブレーキング。ジェットコースターのようなこの区間は、特に進入ラインと速度が重要だ。
基本的にどのコーナーもそうだか、ライン取りでミスを起こすとコーナーで出せる限界速度に制限がかかってしまう。
荷重移動によって変化するラインの計算をする事はもちろん、常に左手をシフトノブに手を置かなければならず、完全にハンドル操作に集中することができない。
いくらパワステがついている車でも、よく曲がるFR車でも、感覚だけで急激なGに耐えることは、到底難しいことだ。
(ラインピッタシ、このままいけるッ!)ジュンはハンドブレーキを強く引き、リアタイヤを固定し滑らせる。そのまま、片手でハンドルをねじ曲げていった。
ジュンは、まさかのパワープレイで曲がっていった。計算なんてものはなく、自分の持つパワーと感覚のみでコーナーを曲がる策に出たのだ。
(速い、R32があんな動きするなんて、今まで見たことも聞いてねえ……理屈のねぇ走りで、ここまでついてこれるってのか!?)明らかな動揺を見せる髙木は、ギアを高速で上げ下げしていく。
ジュンは、自分の走りに集中する事に精一杯だったが、後ろから腹八分目の本気度で走り、2人を見ていた香取は、それに薄々気づいていた。
(ジュンさんは気づけますか……彼の弱点。もうモロに見えている、あの車の弱点に。このままペースを上げれば、絶対に分かる。このまま行ってください、ジュンさん!)
ジュンの真後ろに近づき、ジュンを急かす香取。(……そういうことか。オッケー、宏一くんッ!)ジュンは彼が真後ろに近づいた意味にすぐに気づく。7A-GEエンジンの重低音を響かせる髙木。
3連コーナーを抜けた3台は、先を急ぐように暗い峠を攻め続けた。左……右……軽い直線のあとにまた、左……右……と、連続してやってくるコーナーをリズミカルに曲がっていく。
(ここからの区間は俺の十八番なんだ。FFらしい鋭いこのハンドリングレスポンスに、低中速トルクの高い7A-Gは相性抜群なんだ。
いくらパワーがあっても、重量級の車にはここはキツイんじゃないのかよ……このまま逃げ切らせてもらうぜ、GT-Rッ!)
ジュンが序盤も序盤といった通り、
現在3人がいるのはフルコースの
4分の3あたりの地点です。
あのC-7コーナーにもついてません。
なので、あと2話くらい
このバトルに使うことになりそうです。
以上、あるとでした。




