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With my R  作者: あると
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7/10

#7 理詰めのコーナリング

あるとです。

私は最近、彼らの行うバトルに合う

ユーロビートを聴きながら書いています。

やっぱり峠バトル=ユーロビートのイメージなので。

メジャーなのはもちろん、

マイナーなのもよく聴きます。

Giordano Gambogi氏の歌う曲は特に聴きます。

いいんですよね、あの渋い感じの声。

「カウント行くぞーッ!」


2台の車のアイドリング音が夜の静寂の中で響く。髙木のAE111レビンと、ジュンのR32がバトルを始めようとしていた。


もみじライン上り。最初のセクションは、速度が乗ってすぐにヘアピンカーブ、という構成が2つ。そこでの脱出速度がキモとなる。


GT-Rはトラクションが乗り、加速はレビンの比ではない。が、髙木はそれを克服するために様々な解決策を、車に秘めていた。


(……絶対に抜かさせない、必ず逃げ切らせてもらう。)先行は髙木。パワーの低いレビンを先に行かせる事になった。


ジュンはこの様なバトルに対して、ある種の美学を感じている。"後ろから相手を追っかけて勝つ"という事が、自分にとって一番気持ちイイ勝ち方だと、それを信じている。


「……っしゃ、やってやるッ!」ジュンは両手で自分の頬を叩き、眠気を完全に吹き飛ばす。コーヒーに入っていたカフェインも相まって、ジュンの目は完全に覚めた。


(前に出れなきゃ負けだからな……パワーの低いクイックな走りの相手を追い回すのは得意なんだ。いつもの俺ならやれんだろ、そんくらいッ!)


前方の髙木のレビンを強く睨む。イエローの車体を見据えて、ジュンはアクセルを踏み、エンジンを吹かし始める。ミラーから彼の表情を見た髙木は、彼を鼻で笑う。


(フン……そんな睨まなくたって、コッチも最初から本気(マジ)で行かせてもらうぜ。俺の"テンハチ"エンジンの実力を、お前に得と見せてやるよ……。)


「10…! 9…! 8…! 7…!」ついにカウントが始まる。もみじライン上りの最初のヘアピンカーブであるカーブ1駐車場では、


ジュンが自分のために戦おうとしている、その勇姿を見守るために、香取やCzSのメンバーたちが待機していた。


(頼みますジュンさん。こんな俺のためにも、このバトルだけは絶対に勝ってください、お願いします……ッ!)


香取は心の内で、ジュンを応援する。心の声は遠くにいる人間には届かない。だが、ジュンにはその思いが届いていた。


「6…! 5…! 4…!」段々と迫るスタートへのカウントダウン。2台の間の緊張感が、より高まる。髙木もアクセルを踏み、エンジンを軽く吹かした。


その直後、髙木はアクセルの開度を固定し、ローンチを開始する。適度な回転数まで上げ、スタート時に最適な加速を発揮できるようにしている。


レビンのエンジンが唸る。彼の行うローンチはまるで、ハンマーを倒して引き金を引く寸前、ギリギリで止められたリボルバー。


いつでも撃てる、いつ引き金を引いても最高の弾を発射できる、その余裕のある状態こそが、髙木の望む最高のスタートだった。


「3…! 2…! 1…!」直前にまで迫るスタートの声。2人のドライバーの覚悟は決まった。2人はクラッチを切り、ギアを1速に入れようとする。その瞬間に、ついに合図の声が鳴る。


「GOッ!」スターターの声が聞こえた瞬間、1速にギアを入れ込み、クラッチを離す。そしてアクセルを踏み、2台は急加速でスタートした。


一気に飛び出す2台は、5秒にも満たない時間で時速100km/hを超える。(やっぱリーダー、速えッ!)


スターターの男が2台の走る方向に振り返る。GT-Rに引けを取らないローンチスタートで、髙木はジュンを引き離そうとした。


すぐに迫る第一コーナー。右コーナーの直後に緩い左コーナーが続く、S字コーナー。髙木は余裕の表情でコーナーに侵入、そのままコーナーを抜けていく。


ジュンはその走りをトレースするように車を走らせる。本来はジュンの方が圧倒的に速いのだが、ジュンはその力をすべて発揮せずに、相手の走りの様子を伺っていた。


ジュンはFF駆動の車を相手にしたバトルの経験は少なかた。そのため、相手がどのような動きをするのかなど、FF相手のバトルに慣れていない。


ジュンは慎重に相手を観察し、勝利を狙っていく。そして香取たちの集まるカーブ1ヘアピン。「来たぞッ!」


誰かの声が聞こえると、ギャラリーは2台が向かってくる方向を覗く。ヘッドライトの光とエンジン音が段々と大きくなり、近づいてきていた。


ギャラリー達は息を呑んで、2台を見守った。先に現れたのは髙木のレビン。ブレーキランプを光らせ、フロントノーズを沈めて荷重を前へ寄せていく。


(俺のレビンのエンジンは7A-G……中速トルクマシマシの立ち上がり重視のエンジンだ。こういうコーナーではバカ見てえに速い。それに加えて……ッ!」


ブレーキを踏んだままコーナーに侵入すると同時にハンドルを切り、アクセルを一瞬抜く。するとグイと一気に角度が増えた。


「さすがはリーダー。"タックインの魔術師"の異名は伊達じゃねえぜ!」


髙木はギアを3速から1速まで一気に下げ、エンジンブレーキメインでスムーズにヘアピンを曲がっていく。一方、ワンテンポ遅れてきたジュンとGT-R。


髙木よりもペースが遅れているにも関わらず、ジュンは余裕の表情で、コーナーとは反対方向にリアを振っていく、フェイントドリフトの体勢に入る。


そして流れるようにブレーキを踏み、リアの流れる角度を増やしていく。ハンドルの抵抗を抑え込み、車を力尽くで流す。


同時に、ハンドブレーキを一瞬だけ使用することで、アテーサETSのアシストをより増幅させて曲がるのが、ジュンの上りでのスタイルだ。


白煙を上げながらヘアピンを曲がるGT-R。コーナーの頂点に到達しても、まだ加速をやめない。地元民としての意地を、ギャラリーたちに見せつけた。


コーナーを立ち上がってすぐ、一気に髙木に近づく。ジュンはコーナーで離れた差を一気に縮めようとしていた。


ギャラリー達は今の2台の一連の走りを見て、軽く沸いた。「あのGT-Rもすげぇ!」「ずいぶんと大胆な走りだな、地元民の余裕ってやつか、ありゃ?」


香取は白いシルビアの中でジュンの走りを見ていた。2台が通り過ぎようとしているヘアピンを横目に、静かな車内でジュンの走りを1人考察する。


(外から見るとあーゆー感じに曲がってるのか……結構無理やりなんだな。やっぱりジュンさんって、走りの理屈なんてどうでもいいタイプなのか。


それでも、コーナー1つだけでも十分あの走りが分かる、理解できる……速い! あの人の走り、もっと知りたい……よし!)


そう思い立つと、香取はシルビアのエンジンをかけて、エンジンを軽く吹かす。「な、香取!?」ライトが点灯し、一気に道路に飛び出した。


(もっと知りたい……その速さの本質、そして走る意味を! )たった1つのコーナーだけでの情報とは到底思えない。


それでも、ジュンの走りがどれほど規格外なのかを、香取には十二分に伝わった。だからこそ、自分の目で見たい、知りたい、理解したい。


自分で走って理解するのとは違う、彼らの後を追って理解する。それが一番大事なんだと、そう考えた香取は、急いで2台の後を追う。


300馬力のCA18エンジンを響かせながら、もみじラインを上っていくのだった。


一方、2つ目のヘアピンに到達したジュンと髙木。(タックインね……やっぱFFのドライバーって感じで、全然見慣れねー。


けど、一度もバトルした事ない、勝ったことないわけじゃねーんだ。むしろ今のとこFF車には全勝だろ、俺。ならやれんだろ、俺!)


ジュンは髙木より一足早くブレーキを踏み、4速まで上げたギアを一気に1速まで下げる。ギアを下げたタイミングで、髙木がブレーキを踏む。


どちらもアウトからのライン取りで、コーナーに突入していく。GT-Rのリアが流れる様子をバックミラーで見ながら、再びアクセルを離す髙木。


(バカみたいな走りで無駄にケツ振ったって意味ねーんだよ。FFでなきゃ、こういう所は速く走れねえんだ。


特にインベタは、リアだけじゃなく車全体が外に流れるドリフトだと不都合、コーナリングとしては最悪なはずだぜ。)


髙木のレビンはスムーズにインベタを走る中、彼の言うとおり、GT-Rの車体全体がどんどん外に膨らんでいき、茂みにリアフェンダーが掠れる。


そこで、ジュンはハンドルをコーナー側に切り、力尽くでインに寄せた。ジュンは故意にオーバーステアを誘発させたのだ。


オーバーステアが出ても、アテーサETSとHICASのダブルパンチでなんとかなるはずだと、ジュンはそう考えた。


段々とインに戻っていきながらも、安定さを取り戻していくGT-R。髙木との差は大きくなりつつも、ジュンインベタのまま立ち上がっていくことを選択。


一番効率の良いアウトインアウトを、ジュンはあえて選ばなかった。(コイツさっきから何がしたいんだ? 


煽ってんのか、アイツの走りの方針なのか……バカみてぇな走りしやがってッ!)髙木は当然、ジュンの行動が理解できなかった。


理屈ずくめ計算ずくめの髙木にとって、彼の走りは見ててとても腹の立つ、イライラするものだった。だが、ジュンにとってそれは好都合。


2台は再び、コーナーを立ち上がって加速していく。その直後、香取のシルビアがコーナーに侵入する。


外から進入し、リアが軽くアウトへ膨らみながらも、それをハンドリングだけで受け流していき、コーナーを曲がる。


効率の良い、少ないカウンターステアで速さを突き詰めたドリフトをしていく。香取も、ジュンの走りが理解できない。


無駄が多いのに、それでも自分の理詰めの走りを超えてきた。それが不思議でたまらない。速く彼らに追いついて、その本質を見てみたい。


香取はその思いを乗せて、車を走らせるのだった……。

チーム名を考える際にたまにやるんですが、

複数形として使われるsをzに変える、

というちょっと変な事をしています。

変わったとて、意味や読み方は変わりません。

ただカッコいいと思ってやってます。

以上、あるとでした。

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