#3 What's Happen?
あるとです。
最初らへんは完全解説パートになります。
1000文字くらい、そこら辺はもうずっと。
Exhaustはセリフ中心で展開していくんですが、
この作品は解説中心の作風でいこうと思ってるので、
こんな感じでこれからも書いてきます。
ジュンのR32の420馬力という数字は、このもみじラインというステージでは、オーバースペックと言えるほど。
ストレートに出てしまえば、300馬力程度のパワーのワンビアであれば、すぐにオーバーテイクできる余裕は十分ある。
ストレートでの高速性能は、R32の方が圧倒的に高い。空力性能を意味するCD値は、リトラクタブルヘッドライトであるワンビアよりも低く、なおかつ出せるパワーも大きい。
だが、コーナーではワンビアに劣ってしまう。香取のワンビアが、特別コーナリング性能が高いという訳ではなく、R32という車だからこその不利なのである。
直6エンジンは大きく、なおかつ重い。FF車であれば、フロントにトラクションをかけられるために、まだマシであると誤魔化せるが、FR車では言い訳できない。
車はアクセルを踏むと荷重が後ろに流れていく。これが荷重移動の法則。FR車はリアが駆動輪となり、リアが軽いと重心がリアに流れてもタイヤが地面に押さえつけられにくい。
例として、今回バトルしている2台を比べてみる。重量配分が約60:40のR32(純正での値)と、54:46のワンビア(〃)では、断然ワンビアの方が加速が良く、加えて操作性もいい。
特に峠では、その差が顕著に現れる。ブレーキングで前荷重になった瞬間、R32と比べて軽いノーズを持つワンビアはスッと向きを変える。
対してR32は、重いRB26エンジンがフロントへ強い慣性を生み、ワンテンポ遅れて曲がる。
たったそれだけだが、その"たった"が命取りになる。コーナーがメインとなる峠では、上記の条件下にあるR32は、コーナー間でジワジワと離されてしまう。
そして、この車の差がハッキリ出るステージというのは、もみじラインの特徴でもある。ストレートやコーナーの数やバランスも良く、それぞれの長所を活かせるところで活かしていく。
それがこのコースの勝負の決め手となる。ジュンとR32が勝つためにしなければならない事は、ストレートでワンビアをぶち抜く。ただそれだけだった。
それだけなら、序盤にあるストレート(とても緩いコーナーがあるので、完全に直線とは言えないが)で抜いてしまえば終わること。
だが、ジュンにはそれをするつもりは一切ない。理由は簡単。ジュンはワンビアと"勝負"をしているから。
相手がコーナーで離すなら、それに食らいついていく。相手の土俵で戦うからこそ、見えてくるものがあるはず。
ジュンはその思想を信じて、今、勝負をしているのだ!
(25コーナーか……こっからはコーナーが多くなる。コーナーの弱いそのRで……俺のワンビアについてこれますか、ジュンさん!)
左ヘアピンに突っ込む2台。ワンビアのLEDテールランプが光る。スモーク加工のされているテールは、発光しているか否かがはっきりと分かる。
ジュンは相手のテールが光ると同時に、強くブレーキを踏みつける。フロントに重心があるため、曲がる際にボディを大きくアウトに振っていく。
そうしなければ、アテーサETSの介入による駆動配分の制限が仇となり、アンダーステアで曲がりきれないのである。
(俺はこの大胆に曲がってくのが好きだ。コーナーの度にいちいちケツを振って、点と点を大きく結んでく!
……その時に身体にかかる横Gが心地良い……最高だぜ、32R。もっと大胆に、もっと速くッ!)一種の変態か何かだろうか。
コーナーを抜け加速する2台。C25を曲がってすぐ、直角に近い右コーナーが迫る。そして、そのままのギアで右ヘアピンへと加速していく。
速く走るためのラインは、たった一つしかない。ラインを外せば大きくタイムを落とす。香取に至っては、ジュンに大幅に近づかれてしまう。
(ミスは許されない……くッ!)ワンビアのテールが光る。ジュンはテールが光るよりも早く、ブレーキペダルを踏んでいた。
(チッ、踏み切れないのが腹立たつぜ……パワーを全部出し切れねーのが、嫌味ったらしくバカにされてるようで、ムカついて仕方ねぇ!)
ジュンはブレーキを強く踏み込み、R32のノーズを右へ叩き込む。重い車体。大きな慣性。だが、それすら押さえ込むようにステアリングを切る。
(でも我慢。このバトルの決め手はストレート、それまでは我慢するしかねえ。)
右コーナーからすぐ右ヘアピン。左へと寄っていく荷重とリア。それをそのまま、ヘアピンを曲がるための振り出しへと変えていく。
ジュンはこのコーナーが一番苦手。ここでミスって離されれば、あとにも大きく影響するはず。それを理解していた。
2台のテールが同時に光る。(どんな時でも先行よりワンテンポ遅れる。それは後追いの宿命。それでも、よくへばり付いてくる人だ、アナタは……だけどッ!)
軽いフェイントだけでヘアピンを曲がるワンビア。駆動方式の差により、車の走らせ方がRとは違う。
右コーナーを抜けてから少し余裕があるワンビアは、コーナーでも無理なく軽快に曲がっていける。軽いカウンターのみで、コーナーを曲がり切ってみせた。
(こんの……ッ!)香取とは対照的に、ジュンはステアリングを目一杯切り、一瞬だけサイドブレーキを引く。重く鈍いR32で、ドリフトを決める。白煙を上げながら、コーナーを駆け抜けていく。
普通なら失速しておかしくないような角度。だが、アテーサETSによる、コーナーのきつさによって変化する駆動配分。
ヘアピンの中腹で、駆動配分は50:50になる。ランエボやインプレッサのような、典型的なフルタイム4WDと同じ値。
そして、立ち上がりに向かう度に駆動配分はリアに寄っていき、段々と後輪にパワーが集中していく。
これだけのことをGT-Rでするには、サイドブレーキを引かなければならない。その際に、手を一瞬離す。その離す瞬間も、力強くステアを曲げなければならない。
荷重移動が甘ければアンダーステアが出てしまい、サイドブレーキを引きすぎたり、引くタイミングがズレるだけでスピン。
繊細かつ力強い操作が必要となる。GT-Rでドリフトをするという事は、本来はこれだけ繊細で難しい事。
だが、ジュンはその工程を気合だけで乗り越えてきた。今までもそう。これからも、きっとこのやり方を続けていくだろうと、ジュンは心の内で考えているだろう。
コーナーを曲がり終えるGT-R。心底不安で仕方なかったコーナーだったが、相手との差はそれほど広がってはいなかった。「セーフ……だなッ!」
(な……離れない、低速コーナーでGT-Rを離せないだと? 何が起こってんだ、この状況!?)香取はバックミラーをチラと見る。
そこには、得意なはずの低速コーナーで、相手を突き離すどころか近づいてこようとしているR32が映っていた。
(左のあと右……ステアが忙しいなホントこのコースは!)その後のS字も難なくクリア。香取は意地でも付いてこようとするR32に焦りを見せていた。
(早い内に逃げきらなければ……確実に負ける。この先は左のキツいヘアピン。ここでも付いてくる気か、この人は!?)
ジリジリと近づいてくるR32のフロントバンパー。ジュンは理解している。香取がこのままの心境でヘアピンを曲がれば、確実にミスを起こす。
ミスが起きれば、最悪事故が起こり、バトルどころではなくなってしまう。過度なプレッシャーを与えれば、事故の原因につながる。そんなの、無駄でしかない。
(直線が来て近づいた所で、どうせコーナーで離されんだ。今の内ぐらいは、相手のマイペースに合わせてやってもいいだろ。
だが、直線では容赦はしねーぜ。直線が来たら、キッチリぶち抜いてみせる……それが車の差ってもんだろッ!)
ジュンは軽くアクセルを緩める。それだけでいい。無駄な無理をしないように、相手の興奮を抑えていく。「え……?」
わずかに2台の間の差が、数メートルだけ開く。(アクセルを緩めた……なぜ? なぜ、こんな所でアクセルを緩める?
ヘアピンだとはいえ、そのRでなら、もっと突っ込んでいけるはずだ。一体何がしたいんだ、アナタは。
でも、なぜか気持ちが落ち着く……というより、抑えられていくような。気持ち悪い、この感覚。さっさと、この距離をもっと離してやる。)
ヘアピンを抜ける2台。グネグネと続くコーナーの連続区間が迫る。(大丈夫だ、落ち着け……ここのコーナー区間でアクセルを抜いた分、アイツに近づければ、俺は勝てるはずだ。
勝負だ、香取。行くぜ32R。ここが"お前"の見せ場だぜッ!)
簡易的愛車紹介の第2弾!
香取宏一のワンビア(S13シルビア)
カラーはクリスタルホワイト。
張り出し……と言えるほどではないですが、
社外のドリ車風のエアロを装着。
リアウイングは板っパネに近い形状のものを。
テールランプはLEDのスモーク加工仕様。
今の時代で見ても古臭くないような仕様となってます。
1話で出てきたエボ9の話はまた次に。
以上、あるとでした。




