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With my R  作者: あると
15/19

#15 敢えて敢えての繰り返し

あるとです。

最近は投稿日ギリギリに

話を書き終わることが多いです。

やらなきゃとは思ってるんですが、

手が進まないんですよね……

他に意識が行きがちです。

ヘアピンを走行する2台。


辻は荷重移動を利用した滑らかな動きでドリフトを始め、そのまま豪快にヘアピンを曲がっていった。


ジュンも慣れた手つきでシフト操作をこなし、安定感のあるグリップ走行で辻の後を追う。


コーナーを立ち上がり、また再びヘアピン。辻のMR-Sは立ち上がりでの加速でジュンのR32を一気に突き放す。(やっぱ立ち上がりだよな……あのMR-S速えッ!)


(次のヘアピン、さっきのよりは緩い。スピードは乗せられる……だが!)ヘアピンに備えてブレーキを踏む準備をするジュン。その時、辻は車内でニヤリと笑みを浮かべた。


「何!?」だがその瞬間、想定よりも早くMR-Sのブレーキランプが点灯し、赤く発光する。


(あえて踏みすぎくらいにブレーキを踏んづける!)想定よりも早く相手のテールが発光したことで、ジュンは衝突の危険を感じ、咄嗟にブレーキを強く踏む。


(あの野郎、何考えてんだ。あれだけ軽い車なら、まだもうちょいブレーキは待てるってのに!?)


辻はそのまま加速しながらヘアピンを曲がる。速度の維持もせず、ただアクセルを踏み続け、ステアリングを曲げてコーナーを走り続けた。


極度ともいえるスローイン・ファーストアウトに、ジュンは驚きながらもアクセルを踏み直し、コーナーに向かう。


が、ジュンは辻の想定外のブレーキングに突っかかってしまい、乗せたかった速度を殺されてしまう。「チッ……!」


加速しようにも、この先のヘアピンでまた減速させられる。結局アクセルオフのままコーナーに突っ込むことになってしまった。


ジュンにとって大事な進入速度も消え、無駄となったこの区間も、全て相手が作り出した罠だった。


相手が想定してないであろうタイミングでブレーキを踏み、相手を混乱させることにより、"お前の手には乗らねえ"という意思を見せつける。


いきなり想定外(スパート)を見せることにより、手の内をいきなり見せた、手の内を出し切った、とも思わせられる。


何しろジュンは単純。こういう練り込まれた作戦に引っかかりやすい。この部分は辻が想定していた事ではなかったが、ジュンが彼の作戦にまんまと引っかかった為に、自分の主導権でレースを進められる。


レース中に超即興で考えられることでは無いだろうが、そこは大会経験者の頭の回転の良さだろう。


(フン、単純な野郎だ。公道(ストリート)のタイマンの勝ち方は、駆け引きに引っかかる/引っ掛けれるかどうかなんだ。公道レースでの駆け引きがクリーンだって、誰が言ったんだよ?)


辻が大会で連戦連勝を続けられる理由は、彼のレース全体を支配する能力にある。相手の思考や走りを予想し、それに合わせて攻撃を仕掛ける。


それは罠だったり、防御だったり、それを即時に選んで使いこなせる力を、辻は何年も走り込んで鍛えてきた。


辻は、峠で誰よりも速く走るのが目的ではなく、峠で勝つ事が目的なのだ。


辻は落ちきった速度域からのコーナー進入のおかげで、ヘアピンでは一切ブレーキを踏まず、進入からずっとアクセルを踏んだままコーナーを抜けられる。


前述の作戦だと自分も失速する事になるが、この作戦を何度も行ってきた辻は、流れる様な手つきでリカバリーし、無駄なく立ち上がりでの加速の良さを引き出せる。


「よぅし、そっちがその気なら!」相手が一筋縄ではいかない事を頭で理解したジュンは、落ちきった速度から一気に立ち上がりで加速する。


「天下の32Rのパワー、舐めんじゃねえぜッ!」2つのタービンが一気に回転し、空気圧が急上昇。ターボの恩恵もあり、420馬力を発揮するRB26が一気に吠える。


緩いカーブが続く、ほとんど全開区間に近いこの場所で、軽量で加速重視のMR-S、そして鈍重で最高速重視のR32がぶつかり合う。


もちろん立ち上がり加速で有利に動いた辻が加速では有利。だが、ここは峠で下り勾配。R32が加速の伸びで有利に動いた。


段々と差が埋まっていく、MR-SとR32の差。辻はバックミラーを覗いてそれに気づくが、未だ余裕の表情のまま、目線を前へ戻し右コーナーへと突っ込む。


辻は敢えてオーバーアクションのブレーキングドリフトを繰り出し、R32との差を縮めていく。(距離が離れ過ぎたら、それァちと可哀想過ぎるからな……これからまた離してやるよ!)


ジュンは急に縮まった相手との差に違和感を覚えながらも、やはり立ち上がりの加速で離そうとするMR-Sを追いかけることに集中する。


ガードレールがない為、道路幅いっぱい以上の振り幅でコーナーを曲がる2台。タイヤがアスファルトの側面に引っかからないギリギリを攻めていく。


公道レースの次元ではない位に、ハイレベルのバトルを行なっている、と傍から見ていたギャラリー達は盛り上がる。


そして徐々に急になっていくS字へ向かう2台。左、右、左の順番でコーナーが迫り、そしてキツくなっていく。


(左! 右!)慣れた手つきで走るジュン。前にいる辻に目を配ると、彼は少々このコーナーが苦手なことに気づいた。


それもそうだろう、左から右、そしてキツい左。車がふらついて仕方ない。軽量ハイパワーMRは、お世辞にも安定感があるとは言えない。


アクセルを踏めば300馬力のパワーが後輪のみに伝わり、逆にアクセルを離せばブースト圧が戻るまでのラグが命取りになる。


その隙を突いて、ジュンは一気に差を詰める。そして3つ目の左コーナー、カーブ28に突っ込んでいく。


辻はふらついた勢いをそのままドリフトへと繋げ、斜め向きになった車体でR32の前をブロックする。


ジュンは最初に一気にブレーキングをした後、小刻みにブレーキを踏みながらコーナーを曲がっていく。


(チッ、邪魔くせえライン走りやがって、コイツ!)


前に出たくても出れない状況のまま、カーブ28を抜けていく。


その後20〜30m程度のストレートを抜けて、70度の右コーナー。辻は再び、アーリーブレーキングでジュンを惑わそうとした。


(またそれか……ここ!」


だが同じ手には2度も引っかかる気はないと言わんばかりに、ジュンは横に並び、その瞬間にブレーキを強く踏んだ。


(俺のリズムを掴んできたな……だがそれが命取りだッ!)


R32は突っ込み過ぎによるアンダーステアが出てしまった。ジュンは辻を抜こうと必死になり、オーバースピードで突っ込んでしまったのだ。


「肝心な所で……戻れぇッ!」


大幅に外に膨らんでしまうR32。アウトにどんどん寄っていき、なんとかガードケーブルギリギリで持ちこたえたが、その隙を逆に辻に突かれてしまった。


辻はアンダーを出したジュンを横目に、(駆・け・引・き、ヘヘッ!)と言い残し、空いたインサイドを堂々と使ってジュンを抜き去っていく。


速度が落ち、ホイルスピンさせながら一気に加速するR32。ストレートでも、コーナーで詰めることが難しい。


ならばどうすれば勝てるのか……ジュンは走らせながら、コーナーを攻めながら考える。


(相手の手のひらの上でぶっ転がされてんな、俺……なら、手のひらから下りればいいんじゃねえのか? でも、どうやって……?)


さっきまでフラついていたMR-Sの挙動が段々と安定し始めてきた。タイヤが温まって、グリップが強く効き始めてきたのだ。


左コーナーも抜け、また全開区間。(これ以上、相手の思い通りにやられる訳にはいかねえな……悪ィけど、また無理してもらうぞ、32R!)


MR-Sの独走状態に近い状況の中、逆にジュンはラインを好きに使って走れる。前に自分のリズムを乱す野郎もいないなら、道路幅いっぱい好きに使うのが一番だろう。


集中力MAXでスパートをかけ始めるジュン。本気で先行を捕まえに行く目で、ジュンはMR-Sを追う。


タイヤもまだまだ手応えがある。ジュンには、もしかしたら勝てるかもしれないという、少しばかりの勝算が見えていた。


インサイドから外へとラインを膨らませ、アウトサイドから左ヘアピンに突っ込んでいく。


アウト・イン・アウトでコーナーを曲がり、立ち上がっていく。辻のバックミラーに、一瞬R32のヘッドライトの光が映る。


(……来たかよ、やっと!)


(逃さねえぞ……ぜってぇ追いつくッ!)






「音が近づいてきたな……。」C-18の先、コース最長のストレート。ギャラリーに紛れてバトルを見守る岡本と鴨居。


近づくにつれて騒がしくなる、ギャラリーの集まり。それを気にせず、岡本と話を続ける鴨居。「そうね……辻に勝つ勝算はあるのかしら、彼?」


「さぁな……なぁ、ジュンの勝率をパーセントで例えれば、どれくらいの確率なんだ?」岡本の質問に、鴨居は頭を傾げて考える。


「……大体25%って所かしら。」「まあまあだな……じゃ、今回25%を引き当てるんだな、アイツ。」自信満々でそう言い切る岡本。


「辻に勝つ方法を知ってるの?」鴨居が岡本を見上げながら理由を聞くと、岡本はニカッと笑って答えた。


「……ちょっとだけ教えたんだ。俺が"アイツに勝った時のやり口"を、な。」鴨居の目が段々と睨むような目つきへと変わる。


「あとで私にも教えてよ。」「えぇ……?」

岡本と鴨居と辻は、

全員が峠出身のプロレース経験者で

地元も全員もみじライン。

そこから発展して埼玉に行ったり、

上京したり地元に残ったりと、

それぞれ多彩な生活を過ごしています。

岡本は走りの世界を引退して、

現在カフェを営業中……。

以上、あるとでした。

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