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2 能力確認

 体が地面と一体化しているように重たい。動かない両手足を諦めて、冬斗は息をすることに専念した。暖かい。芝生で昼寝でもしているみたいだ。このまま眠ってしまおうかと冬斗が考えた時、誰かの声がした。


「…………ぃ……おい、……おい起きろ!」


「うわぁっ!?」


 怒鳴り声で目が覚めた。飛び起きて頭が誰かにぶつかるなんてことはなく、目の前に美少女がいるわけでもなく冬斗は少し落胆する。


「ふん、やっと起きたか」


 声のする方に目を向けると、黒髪の美女は不敵に笑った。




 ≪≪≪≪≪




 黒髪の美女の名前はペトラと言い、まだベッドの上にいる冬斗に暖かいスープをご馳走してくれた。木の器に入ったスープはコーンスープよりもクリームシチューに近い。ミルクを沢山使っているのだろう。ゆっくりと嚥下すると熱が食道を通って下腹部に溜まる。


「……うまい」


「そりゃアタシが作ったからなぁ」


 ベッドの傍らにある椅子に腰かけて、背もたれを抱き抱えながら自慢するペトラ。幾つかは分からないが、ペトラが動く度にそのポニーテールにされた黒髪がぴょんぴょこ動いているのが目に入り、どうにもほんわかした気持ちになる。


 冬斗はあっという間に食べ終わるとベッドの上でペトラから説明を聞く。


「ここはアンメリッター国の辺境、ラファ。ま、正確にはその町の近くってとこかな」


 アンリメッター国もラファという町も、やはり聞き覚えが無かった。冬斗は皿をペトラに返し、部屋を見回す。コテージのようなものだろうか。木を用いて作られているこの家はなかなかしっかりしているようだった。


「ふぅん……」


「なんでそんなにどうでも良さそうなんだよ。気にならねぇの?」


「全く」


「変わってるねぇ」


 冬斗にしてみれば、ここは見知らぬ土地のひとつでしかない。この世界のどこにいようと日本の親しんだ土地ではないのだから。


「で、あんなとこでどうして死にかけてたんだ?」


「あ、やっぱり俺死にかけてましたよね」


 ペトラの質問に冬斗はさらりと返す。もう怒りの気持ちはなかった。確かに神様によって魔王を倒した勇者に、ではあるが転生しているのだからこれからいちゃいちゃすればいいのだ。そう、いちゃいちゃすれば。


 そう考えるとペトラはなかなかいいんじゃないだろうか。黒髪は日本人のようで見ていて安心するし、しっかりとした家もある。はきはきとものを言う性格は冬斗の人見知りを補ってくれそうだ。そしてなにより。胸がでかいのである。上品な胸のでかさ、と言えば伝わるだろうか。大きすぎず、小さすぎず。そういう微妙なのが好みなのだった。さすが童貞。


「んー、じゃあ何も覚えてないのか。アイツみたいなもんかな」


(アイツ……そうか、相手がいるのか)


 その一言で冬斗は諦める。修羅場は勘弁。ペトラに限らず女の子には幸せになってもらいたいのだ。さすが童貞。


「ん? 同じような境遇の人がいるのか?」


 もしや同じ転生者なのか、と少し期待する。同じ転生者だったらどうにかして話をしてみたい。しかしそれも打ち砕かれた。


「ああ、といってもアイツはいいとこ育ちだったみたいだけどな」


「そうか~」


 ガックシ。そんな効果音が似合いそうなほど冬斗は肩を落とした。それを見たペトラがなにか気がついたような顔をする。


「もしかして……お前ステータスも分からないなんて言わねぇよな?」


「ステータス」


「……じゃあスキルは?」


「スキル」


「ギフトは? アビリティは?」


「ギフト、アビリティ……」


 冬斗はぽかんとした顔でただ復唱していた。そういえば、何も考えていなかったなぁなんて考えつつ変わっていくペトラの顔をぼんやりと見ていた。驚き、訝しみ、最終的には引かれた。


「はぁ~~、お前どうやって生きてきたんだよ……」


「ちょっと特殊な場所で、かな」


 そうとしか答えられない。日本です、なんて言っても知らない土地だろうし。なんだかんだ間違ってはいないはずだ。日本に帰りたいか、と言われたら……どうなんだろう。母さんの作ったハンバーグが食べたいけども。


「んー、じゃあ。ステータスって呼んでみ。出てくるから」


 ペトラに言われてステータスと口ずさむ。まるで本当にゲームの世界に入ったみたいだなと冬斗は感じた。


「ステータス」


 ジジッ……。

 そんなテレビのラグのような音を出して半透明の緑の板のようなものが現れた。日本語で文字が書かれている。軽く触ってみるとスマホのように硬い。


─────────────────────

名前:ハイネス=ブレイブ(鎌田冬斗)


年齢:17


レベル:99(+40)


職業:勇者


筋力:13440(+320)


体力:16720(+320)


耐性:13280(+320)


敏捷:17880(+320)(+880)


魔力:13670(+320)


魔耐:13290(+320)


スキル:全属性適性、全属性耐性、薬物耐性、物理耐性、複合魔法、剣術、剛力、縮地、先読、透視、鑑定、看破、念話、高速魔力回復、高速体力回復、高速体力変換、痛覚切除、気配感知、魔力感知、熱源感知、毒耐性、麻痺耐性、石化耐性、恐慌耐性、限界突破、言語理解


アビリティ:勇者の欲望、世界最速


称号:世界の踏破者、転生者

─────────────────────


 なかなかまずい気がする。それが冬斗の感想だった。


「どうだ!? なんか面白かったか!?」


 ペトラはワクワクとした顔で冬斗を見る。正直ここまでしてくれたペトラに見せたい気持ちはある。あるけれど……果たしてこれは見せてもいいものなんだろうか。普通がわからない状態で、名前以外何も知らないペトラに見せてもいいのか、判断が難しい。


 もしかしたら勇者としては普通なのかもしれない。勇者の中で弱い可能性もある。だけど、一般人は? もしなにかが原因でペトラが情報を漏らしてしまったら、あの王宮に戻らなければいけないのだろうか。


(そうだ。俺は狙われているんだ……。迂闊に教えたら、きっとすぐにバレてしまう)


 ステータスに触れてみる。名前や年齢、筋力などに触れても何も起こらないが、スキルやアビリティに触れるとその意味が表示された。

 しかし、今冬斗が求めているのはこれではない。ステータスを隠す方法だ。


(なにか無いのか……?)


 イライラして画面を叩くとメニュー画面が表示された。


(は……?)


 大した抵抗もなく表示されるその画面に、冬斗は目を走らせる。いろんな項目があるが、確認は後回しだ。そして冬斗は下から3番目にあるそれを見つける。


 プライバシー設定。その中の「常人偽装」をタップする。

 改めてステータスを見ると、画面は変わっていた。


─────────────────────

名前:鎌田冬斗


年齢:17


レベル:17


職業:


筋力:320


体力:320


耐性:320


敏捷:320


魔力:320


魔耐:320


スキル:剣術、剛力、鑑定


アビリティ:


称号:

─────────────────────


「これは、弱いのかな?」


「見せてみろ!」


 好奇心が抑えきれなくなったのかがばっとペトラが抱きついてくる。キラキラした目でステータスを見ると、ペトラは大きく笑った。


「おお! なかなか向いてるスキルじゃないか!」


 いったい何に向いているのか。そう聞こうとした冬斗は目の前に入ってきた人影と目が合った。


「ペトラ……?」


 ごとんと落ちたリンゴ。籠から飛び出たパン。それを見ると視界に入るのは人の足。


「おい、なぜここに……それがいるのだ、?」


 その子は冬斗に向けて震える指を指しながらおそるおそるといったように口を開く。そこにいたのは、真っ白な髪をひとつに三つ編みにした褐色の肌の……見知らぬ女の子だった。

 メインヒロインはペトラじゃないです!! 銀髪褐色美少女です!! お待ちがえなく〜〜!


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