表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
身代わり花嫁の忌み子Ω、冷酷な暴君皇帝に番として溺愛される〜虫けらの俺が国を救う唯一の光らしい〜  作者: 水凪しおん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/24

番外編 第3話「白蓮の記憶、月下の再訪」

 ある月の美しい夜、玲玉は龍帝に連れられて、かつての白家があった場所を訪れた。

 そこは今、広大な公衆庭園となっており、市民たちの憩いの場として愛されている。

 龍帝は玲玉の希望を聞き入れ、かつての暗い屋敷を跡形もなく取り壊させ、代わりに水と緑豊かな空間へと作り替えたのだ。

 二人は変装し、身分を隠して園内を歩いた。


「……あそこです。私の地下室があったのは」


 玲玉が指差したのは、庭園の中央にある大きな蓮池だった。

 月明かりに照らされた水面には、真っ白な蓮の花がいくつも咲き誇り、幻想的な光景を作り出している。


「今では、あんなに綺麗な花が咲いているのですね」


 玲玉は池の縁に立ち、過去を懐かしむように目を細めた。

 あの地下室で、たった一人で明日を夢見ていた少年。

 自分がこの世に必要のない人間だと思い、死を待つだけだった日々。

 龍帝は玲玉を背後から抱きしめた。


「お前の流した涙が、この池の種となったのだ。お前の苦しみは、今こうして多くの民を癒やす美しさに変わった。……無駄なことなど、何一つなかったのだよ、玲玉」


 龍帝の温かな言葉に、玲玉の胸に熱いものが込み上げた。


「陛下……。私を、見つけてくださって、本当にありがとうございました」

「礼を言うのは朕の方だ。お前という光に出会わなければ、朕の心は今も凍りついたままだっただろう」


 二人は誰もいない夜の庭園で、静かに唇を重ねた。

 過去の痛みは、完全に消えたわけではない。

 けれど、それを分かち合い、慈しむことができる伴侶が隣にいる。

 池の蓮の花が、風に揺れてかすかな音を立てた。

 それは、かつての孤独な少年への、祝福の歌のようにも聞こえた。


「さあ、帰ろう、玲玉。お前の帰る場所は、あのおぞましい地下室ではない。朕の待つ、温かな寝所だ」


 龍帝は玲玉の手をしっかりと握り、前を向いて歩き出した。

 二人の影は月光に照らされ、長く、一つに重なっていた。

 もう二度と、玲玉が一人で暗闇を彷徨うことはない。

 龍の国に訪れた平和は、二人の愛が続く限り、永遠に守られていくのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ