第18話「千年の夢、大龍脈の目覚め」
帝国の中心部、かつて始まりの龍が眠りについたとされる「天啓の谷」
そこが、今回の旅の終着点だった。
旅を通じて玲玉の心は大きく成長していた。
地下室で膝を抱えていた頃の弱気な影はなく、今の彼の瞳には、慈愛と、それを実行するための強い意志が宿っている。
「ここが、すべての気が集まる場所か」
龍帝が、谷の底にある巨大な水晶の祭壇を見上げてつぶやいた。
そこは、龍脈の源流であり、ここが正常に機能しなければ、いくら末端を浄化してもいつか再び瘴気が溢れ出してしまう。
龍帝は玲玉の手を取り、ゆっくりと祭壇の階段を上っていった。
「玲玉。最後の仕事だ。ここをお前の気で満たしてくれ。朕は、お前の命が尽きぬよう、朕のすべての生命力を、お前に注ぎ込み続けよう」
「陛下……。それでは、陛下のお体が……」
「案ずるな。朕はお前なしでは生きられぬが、お前がいれば無限に強くなれるのだ」
龍帝は玲玉の背後から腰を抱き、二人で一つの命となるように、その額を玲玉の後頭部に押し当てた。
玲玉は深く、長く呼吸を繰り返した。
彼の意識は次第に研ぎ澄まされ、大地の下を流れる、広大で力強いエネルギーの奔流を感じ取った。
それは帝国の血潮であり、龍の呼吸だった。
玲玉は、自分という器を極限まで開放した。
「……清らかなる龍よ、目覚めてください。この地に住むすべての人々を、温かな光で包み込んでください」
玲玉の言葉とともに、谷全体が激しく鳴動した。
祭壇の水晶が虹色に輝き、天に向かって巨大な光の柱が打ち上げられた。
龍帝の放つ黄金の魔力が、玲玉の白銀の光と混ざり合い、螺旋を描きながら大地へと吸い込まれていく。
二人の体が宙に浮き、周囲を舞う花弁や木の葉が、祝福の舞をうたう。
玲玉はたしかに感じていた。
自分の魂が、温かな風となって帝国の隅々にまで届いていくのを。
病に伏せる子供の頬に赤みが差し、荒れた田畑が青々とした緑を取り戻し、人々の心から不安の影が溶けて消えていく……そのすべての喜びの光景を。
『ああ……。私は、このために生まれてきたのかもしれない』
その幸福感に包まれたとき、玲玉の背中から光の翼が広がり、彼は文字通り「大地の化身」となった。
龍帝は玲玉の腰をしっかりと掴み、その重圧に耐えながら微笑んだ。
「そうだ、玲玉。お前の美しさを、世界に見せつけてやれ」
一際大きな光が爆発し、帝国全土を清浄な風が吹き抜けた。
千年にわたる沈黙を破り、大龍脈はついに完全な覚醒を遂げた。
大地には清らかな水が満ち、空にはかつてないほど鮮やかな虹が架かった。




