第17話「魂の共鳴、炎の抱擁」
「……はあああああっ! 」
玲玉の叫びとともに、彼を縛っていた黒い呪縛が真珠色の閃光によって弾け飛んだ。
その光は瞬く間に戦場全体へと広がり、絶望に沈みかけていた兵士たちの心に、不屈の勇気を注ぎ込んだ。
玲玉は立ち上がり、欄干を掴んで戦場を見下ろした。
「陛下、私の力を使ってください! 私は、陛下の盾になります! 」
その言葉に呼応するように、龍帝の全身から放たれる黄金の気が、玲玉の白銀の光と混ざり合い、巨大な光の龍となって天へと昇った。
それは、かつて一度も見たことのない、美しくも苛烈な「魂の合一」の姿だった。
龍帝の力は数倍にも膨れ上がり、彼の剣はもはや物理的な武器ではなく、この世の邪悪を裁く光の裁定者と化していた。
蛇王が放つ闇の盾は、龍帝のひと振りでガラス細工のように砕け散った。
「馬鹿な……。ただの共鳴者が、これほどの出力を見せるなど! 」
驚愕する蛇王に対し、龍帝は電光石火の速さで迫った。
「お前は過ったのだ、蛇王。玲玉は朕の道具ではない。朕の魂そのものだ。魂を汚そうとした罪、その身に焼き刻むがよい」
龍帝の剣が蛇王の胸を貫き、玲玉の放った浄化の光が、そのどす黒い邪悪な魂を内側から跡形もなく消滅させていった。
叫び声すら残さず、蛇王と闇の軍勢は風に舞う灰となって消えていった。
◆ ◆ ◆
静寂が戦場を包む。
黒い雲が割れ、そこから差し込む朝日が、血と雪に汚れた大地を照らした。
龍帝は血のついた剣を納め、一目散に玲玉のもとへと駆け上った。
「玲玉、無事か! 」
龍帝は荒い息をつきながら、玲玉をきつく抱きしめた。
その体は戦いの熱で熱く、玲玉の冷え切った肌を溶かしていく。
「……陛下。勝ったのですね」
玲玉は龍帝の胸に顔を埋め、安堵のあまり涙を流した。
自分が戦いの役に立った。
初めて、自分という存在がこの国と、何より愛する人のために貢献できたのだという実感が、彼を震わせた。
龍帝は玲玉の頬を両手で挟み、その震える唇に深く、誓いのような口づけを与えた。
「お前の勇気が、この戦いを終わらせたのだ。玲玉、お前は朕が守るだけの存在ではない。共に帝国を護る、最愛の伴侶だ」
二人は朝日の中で、重なり合うように抱き合い続けた。
周囲の兵士たちは、その神々しい姿に誰一人声をかけることもできず、ただ静かに頭を垂れていた。
戦いは終わった。
けれど、この地を襲った傷跡は深い。
二人は残された「大龍脈」の最終的な浄化に向けて、最後の地へと向かう決意を固めた。




