子供達の挑戦
錫音派閥のあやかし達の事や刀を知る事はできた。
次こそは本格的な訓練となる。
清美も渋々ながら式神を用いた訓練をする事になる。
「よし、あなた達が小さい子で1番強いんだね!」
「はい! 清美お姉ちゃんに教わったから!」
「ぼ、僕で良いのかな……御剣部隊の代表……」
「あやかしなんて倒しちゃうもんね!」
キキ1人に対して各組織で1番強いと評価された
小さな子供達が戦う事になった。
陰陽師の代表は幸子。
清美がしっかりと教えてる唯一の子供と言える。
御剣部隊の代表は健太。
総一郎が鍛えてる子供達の中ではまだまだだが
守りに関しては1番と評されてる男児である。
白爪部隊の代表は高嶺。
山彦の半妖であり、反射の妖術が使える半妖。
「一応選んだけど不安ね、幸子はまだ霊力の扱い
下手だし結界術使え無いし」
「なら、何故彼女を選んだんだ?」
「陰陽師の基本で、霊力の正式な扱いを教えるのは
7歳を超えてからなのよ、だから、それ以下の子は
基本的に霊力の扱いを教えてないの。
幸子を選んだのは剣術が理由ね。
霊力が皆使えないなら、別で選ぶしか無いし。
因みに、あんたがあの子を選んだ理由は?」
「最も守りに優れた実力だからだな」
「私の方もそれが理由だね
高嶺の反射は特殊な妖術だし」
「山彦の半妖だったわね、そんなに特殊?」
「山彦は結構珍しい妖怪だからね
それの半妖なんてかなり特殊だよ。
因みに山彦だからね? 木霊じゃないよ?」
「同じ様に思えるけどね、そいつら」
山彦と木霊はそれぞれが音を反響する妖怪である。
だが、そのあり方はかなり違うと言える。
「山彦は実は悪鬼でね、山に幼子を誘って
霊力を奪うのが基本なんだよ。
木霊は確か式神が変化したあやかしでしょ?」
「昔、そんな式神を作った陰陽師が居たそうね。
まぁ、現存する式神に木霊系列は居ないけど」
「あやかしの国には居るんですけどね。
初音と言うあやかしなのですが
錫音様の身に付けてる鈴を作る際に
錫音様に協力してくれたあやかしです」
「特別な鈴なのですか?」
「はい、妖力を込めれば周囲に音を広げ
音が聞こえる範囲内の大声に必ず気付けます」
錫音が来た時に聞こえた鈴の音を清美も思い出す。
だが、あまり広範囲に聞こえてる雰囲気は無かった。
おそらく妖力を込めていなかったのだろう。
「でも、前に錫音が来た時は
そんな大きい雰囲気は無かったわ」
「おそらく妖力を込めてなかったのでしょう。
焦って妖力を込めるのを忘れていたのか
はたまた、大軒に気付かれないように
あえて妖力を込めてなかったのか」
「分からないのね」
「はい、私は錫音様の式神であり
錫音様本人ではありませんからね」
そんな会話をしていると、幸子達の戦いが始まる。
布陣としては幸子が先陣を切るようだ。
「行くよ! えりゃー!」
「変わらず間の抜けた掛け声ね」
いつも通りの間の抜けた掛け声で幸子は駆ける。
刀は振り上げた状態で走っており
あまり剣技が得意な様には見えない。
「振りが目立って、のわー!」
キキに向かって振り下ろされた一振り。
普通なら簡単に避けられる。
だが、最初の雰囲気からは想像出来ないほどに
素早く木刀が振り下ろされた。
それもあり、キキは驚きながらも何とか回避した。
「彼女、振り下ろす力は凄いな」
「幸子はね、形はかなり下手なんだけどね。
振る力だけは凄いのよ、不思議な事にね」
「凄いけど隙だらけだよ!」
すぐにキキは反撃を幸子に仕掛けた。
だが、その攻撃を健太が防いだ。
「うぅ、やっぱりあやかしは力が強い……」
「やるね! どんどん行くよ」
「うわ! くぅ! あー! ひぃ! ひゃわぁ!」
情けない声を出しながらではあるが
健太はキキの攻撃をかなり上手く捌いていた。
本当はかなり冷静だろうと言いたくなる程だが
本人は至って真面目に騒いでいる。
「滅茶苦茶情けない声出しながらだけど
かなり上手く捌いてるわね。
実際は冷静でしょ、あれ」
「健太は少し頼りない雰囲気はあるんだが
防御だけに集中すればかなり出来るからな。
今回はかなり格上だから、
防御に専念してるんだろう」
「うわぁ! ひぁう! ひにぅあ! ひゃん!」
「かなり女々しい悲鳴上げてますな。
その割に綺麗に捌いてますがねぇ」
「情けないわね、男のくせに」
「そう言うな、まだ子供だぞ?
男女差等どうでもいい時期だ」
キキが健太の相手をしてる隙を見てか
幸子が刀を構えて近付いた。
最初とは違い、かなり素早く。
「そこだ!」
「ぬおっと! 最初より速い!」
「うりゃりゃー!」
「うわ! 結構速いね!」
最初よりも素早く踏み込んでの連続攻撃。
最初の振りも早かったが
打ち合えば打ち合うほどに早くなる
幸子の攻撃に驚きながらもキキは攻撃を捌く。
「調子上がって来たわね」
「あれは?」
「幸子が調子上がって来たらああなるのよね。
かなり攻撃が鋭くなるわ。
集中力がかなり増してる状態ね。
霊力強化をする時もたまにああなるわ。
結構な才能で、霊力量はもう桐絵を超えたしね」
「成る程、集中力がかなり優秀と言うわけか」
「ええ、陰陽師にも必須の才能ね」
「あはは、掛け声は変わってないみたいだけどね」
「ちぇりゃー!」
間の抜けた掛け声は変わらないままではあるが
キキが反撃出来ない程の猛攻撃を続けていた。
だが、キキも錫音派閥のあやかし。
並のあやかしよりも強い。
「そこだね!」
かなりの攻撃を捌きながらも幸子の隙を見抜き
素早く木刀を振るった。
確実に当たる軌道ではあるが
キキの木刀は何かに阻まれた。
「結界!? いや、そんな感じじゃない!」
衝撃が自身に返って来てる感覚を覚えた為か
キキはこれが結界では無いと感じ取る。
「木刀なのに折れないなんて!」
「これは、高嶺の反射かな、
良く木刀折れなかったね」
「あの木刀は霊具神姫で作った物だからね。
そう簡単に折られたら困るよ」
「反射ねぇ、案外大した事ないの?」
「遠距離攻撃には滅茶苦茶強いんだけどね
近距離攻撃には、ちょっと特殊な結界程度かな」
「攻撃にはあまり使えない訳ね。
てか、攻撃得意なの幸子位なの?」
「そうなるな、健太は防御しか出来ないからな。
防御から攻撃に転じようとすれば必ず隙が出来る」
「高嶺も能力頼りだしね」
「あー、負けるわね」
しばらく戦いは続いたが、結果は清美の予想通りだった。
「うきゅぅ、負けたー」
「強すぎるぅー」
「二人共! が、頑張って、うひぃー」
「やるね! 本当に防御が得意なんだね!」
「このままだと負ける、攻撃しなきゃ……」
「防御だけは凄いわね、あの子」
「あぁ、だがまぁ、もう1人だけだし
時間の問題だな。おそらく攻撃しようとして
大きな隙を晒すだろう」
「今なら!」
「うん? 隙あり!」
「いだぁ!」
「やはりそうなるか」
隙を見付けての攻撃を仕掛けようとした健太だが
やはり、攻撃の瞬間に大きくためらった事で
逆に隙を晒し、キキからの攻撃を食らった。
「躊躇ったね、攻撃するの苦手?」
「ち、違っ、あ、あの」
「相手を傷付けるのが嫌なのかな?」
「それは、そんな事は」
「隠す事無いよ! 悪い事じゃ無いんだから。
でも、それならもっと皆を守れる様にしなきゃ!
皆を守れたらきっといつか勝てるんだから」
「……僕は攻撃出来ない、御剣部隊なのに
御剣部隊になりたいのに、何でいつも……」
「御剣部隊は帝を守る為の組織です。
相手を傷付ける事が出来ない事を恥じる事は無い。
守る為の組織なのですから」
「音寧様……」
「ですので、あなたは守る事を極めるべきです。
仲間も全て守る事が出来れば、
いつか必ず勝つ事が出来るのですから」
悔しそうにしながらも、健太は音寧の言葉を聞く。
小さく俯き、自身の両手を眺めた。
手に出来たマメが、彼が頑張って来た証なのだ。
「こう言うの、あんたがやるべきでしょ」
「いや、俺も声がけはしてたはずだが」
「どうせ、あんたの事だし、口足らずで
お前は凄い、頑張れ程度でしょ?」
「何故それを!」
「……具体性に欠けるのよ、あんたは」
自分はそもそも褒めたりしないだろうから
あまり相手の事を言えないと感じながらも
少し呆れながら呟いた。




