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守護狐の千年物語  作者: オリオン
第3章、初めての失敗
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好奇心

散々な目にあった清美ではあるが

何とか気を取り直し、準備を始めた。

準備が完了するまでは交流を行う。


「うーむ、音寧様、聞きたいことがあるんです」

「はい、何でしょう、私が知ってる事なら答えます」

「では、音寧様の腰に付けてる刀は?」

「あ、これですか?」


音寧が自身の刀を引き抜いた。

まるで爪楊枝の様に細い刀身だが

確かにこれが刀だと分かる。

綺麗な刀身にかなり興味が惹かれた。


「これは錫音様が式神に持たせてる刀です。

 名前は小雨、全て同じ名前ですね」

「小雨、名の由来は」

「既に分かってるでしょうが

 小雨の名の由来は時雨の名を持つ錫音様の刀です

 勿論、雨と言う漢字が入ってるので

 この小雨は霊力を込めて打たれた刀です。

 あなたがた、霊具神姫の魂宿りを用いてます」

「凄い……こんなに小さいのに」


非常に小さな刀ではあるが

その刀の素晴らしさに亜希子は目を惹かれた。

自分も小さな刀を打つが、この大きさは不可能だ。

それ程に繊細な刀である。


「あの、錫音様が妖力を用いて打った刀は

 他には無いんですか?」

「はい、由紀恵様に教わり打った月華以外

 錫音様は妖力を込めた刀は打ってません。

 理由は妖力を込めた刀は人間が使える武器としては

 かなり非効率であり、

 むしろ悪鬼の力になりかねませんからね」

「なら、何で錫音はそんな刀を打ったのよ」

「好奇心ですよ」

「そんな下らない事で」

「好奇心、つまり興味と言うのは

 新たな道を開拓するのに必須です。

 知的好奇心を抱かない者はいつか必ず停滞し

 それ以上の成長を投げ捨てる事になります」


彼女は錫音の知的好奇心が前面に出ている式神。

彼女は常に探求者であろうとしている。

新たな事を始める先駆者であろうとしている。


「何故そこまで好奇心に強い思い入れが?」

「そうですね、私が錫音様の好奇心と言う感情が

 強く出た式神だから……ですかね」


本人にはそこで確信はないのだが

漠然とそうでは無いかと考えていた。


「式神に感情が大きく出るわけが無いわ」

「そうでしょうか?

 式神と言うのはある意味術者の写し身です。

 人間ならば無くてはならない霊力と言う

 命に直結した力を切り離し作り出された存在。

 それ即ち、本人の一部と言えましょう。

 式神に霊力を使えば使った分の霊力は回復しませんからね」

「え?」

「え?」


清美が音寧の言葉を聞いて

かなり間の抜けた返事をした。

まさか知らなかったとは思わなかったのだろう。

音寧は清美の返事に同じく間の抜けた返事をする。

その反応を見て周囲の長達が清美を呆れながら見る。


「まさか、知らなかったとか?」

「い、いや、知ってるし!?」

「露骨だよ清美ちゃん……」

「あー、まさか式神を純粋な霊力で用意するのが

 かなり難しい理由って」

「式神を作る為に使った霊力は回復しないからですね。

 完成してなければ大丈夫ですが、完成したら

 使用した霊力は回復しません。

 しかし、主が生きてる限りは基本的には

 式神は主の霊力で活動。

 長時間主と共に活動した場合、主が死んだとしても独立して動きます。

 なので、私達は錫音様の霊力で基本的に活動するので

 錫音様の霊力が空っぽになる九尾化を錫音様が

 使用した場合、活動出来なくなります。

 意識はあるんですが、身体が全く動かないのです」

「だそうだ、知ってたか? 清美」

「知ってるわよ!」


かなり強がってる清美だが、当然知らない。

しかしだ、これは知らないのが当たり前の知識だ。

霊力が最大まで回復しない。

こんな事は陰陽師だろうと理解できない事。

自身の霊力を完全に把握し管理する事など

安野柄清流ですら不可能である。

あくまで自身の霊力は何と無くでしか分からない。

だが、錫音はそれを完全に把握していた。

理由は妖力である。妖力と霊力を満遍なく鍛え

丁度の均衡を意識していたからこそ

錫音はこの情報を知り、その式神である

彼女も知って居た。だが、すれ違いが生じた。

陰陽師達も知ってるだろうと錫音は考えたのだ

ならば当然、宝龍達も知ってると。

だから、錫音が気付いたこの真相は陰陽師達には広がらなかった。


「ふーむ、しかし、長である清美様が知らぬとは。

 もしや、陰陽師達はこの情報を知らない?」

「いや、こいつが勉強不足なだけかと」

「でもさ、清美ちゃん結構努力家だし

 知らない事があるのかな?」

「清美の奴は河童の情報を知らなかったんだぞ?」

「知ってたわよ! わ、忘れてただけで……」

「いやぁ~、清美ちゃんはドジだねぇ〜」

「うぎぎ……」

「しかし、清美様が知らないだけだと確定したわけではありませんからね。

 錫音様も人々にこの情報を伝えてません。

 自身より霊力の扱いに長けた人々が知らないはずが無い

 そう言う先入観もあります。ひとまずは

 陰陽師達に確認しましょう」

「必要無いし」

「知らないならば大事な情報ですからね。

 情報は力です。知る事は成長の第一歩ですから」

「部下達が知ってたら恥ずかしいですなぁ〜」

「だ、だから知ってたし!」


そんなやり取りを行い、

部下達に音寧はこの話を聞いた。

結果、誰も知らないことが分かる。


「誰も知らない、まさか本当に新事実なのでは?」

「ほ、ほら! 誰も知らないし!」

「清美ちゃんは知ってるって言ってなかったかなぁ?

 ならー、教えてないのは職務怠慢じゃないかなぁ?」

「うぐ……し、知らなかったです」

「ですよねぇ〜」

「ムカつく! そのつらぁ!」

「こらこら奏さん、相手を馬鹿にしてはだめです。

 知らない事を知れたのは清美さんのお陰です。

 合同訓練を行った事で我々に交流の機会が生まれ

 新たな事実を人類に共有出来たのですから」

「合同訓練を発案したの総一郎だし……」

「発案したのは俺だがお前も受け入れてくれたんだ

 あまり卑下するな」

「ふーむ、なーんか、仲良くなりましたね、お2人」

「あぁ、共に敗北を学んだからな」


ずっと喧嘩ばかりだった総一郎と清美。

2人の不仲は都では常識に近かった。

それが、今は仲良く会話をしている。

それだけ、彼らからすれば、あの敗北は大きかった。


「敗北を経験するのは大きい事ですからね。

 大きな成長のきっかけになります」

「あんたの主は負ける事無いでしょうに」

「まさか、錫音様の歴史は敗北から始まってます」

「あいつが負ける事があるわけ!?」

「はい、錫音様は元は最弱の妖狐でしたからね。

 今でも萩花にはたまに負けますし朱婷童子には

 九尾化を用いても敵いません」

「朱婷童子……三大悪鬼、最強の悪鬼か」

「ふん、いつか私が狩ってやるわ」

「応援してます、清美様」


清美の宣言をにこにこしながら音寧は聞いた。

自分の事をここまで肯定するその姿に

容姿も相まって甘えたいと言う感情が出そうになるが

清美はそれを全力で抑えた。

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