西の屋敷のあやかし達
しばらく陰陽師達が合同訓練をしてると
遂にあやかし達がやって来た。
「都に来たのは初めてで
本当は色々回りたかったですが」
「仕方ないよ音寧様、今回は訓練だし」
「な! 小さい錫音!?」
あやかし達と一緒に来た小さな錫音に全員驚く。
「あはは、私が都に姿を見せたのは初ですしね。
私は錫音様ではなく、錫音様の式神、音寧です」
「式神……」
清美はふと思い出す。
東西南北の屋敷に居ると言う式神の話を。
話を聞いていただけで、実際の姿を見たのは初だ。
想像とは違い小さな式神に少し驚いた。
「純粋な霊力で作られてるわね」
「はい、私は錫音様の霊力のみで作られました」
「眼鏡を掛けてる理由は? 錫音はしてなかった」
「いやー、私は読み物を良くしてましてね
この眼鏡と言うのは色々調整出来て便利です
錫音様が用意してくれたんですよね」
「何か特殊な力があるの?」
「眼鏡にですか?
うーむ、自由に倍率を変えられることですかね?」
「いや、あなた自身に」
「あ、私にですか? いえ、特には。
私は戦闘のために作られた式神では無く
あくまで屋敷の管理を行う為の式神ですので」
式神の用途を調整する。基本的に式神は
戦う為の戦力としか考えてなかった清美には
その発想はあまりに斬新に感じた。
「音寧様は物知りなんだよー
確か見たものは絶対に忘れないんだって」
「違いますよ、キキ。
覚えようとしたものは忘れないだけです」
「そう」
清美はかなり彼女に興味を抱いた。
錫音が作り出した小さな式神。
こんな独特な形の式神を見たのは初である。
容姿が錫音とそっくりな事にもかなり興味を惹かれた
本来、式神の容姿が自分に似ることは無い。
一部の要素が似ることはあれど
ここまで容姿が瓜二つになる事は無い。
それが、目の前の式神は完全に瓜二つ。
小さい事と眼鏡以外は完全に同じである。
他には腰に付けてる刀の本数が違うが
それは大した事ではないだろう。
「清美、細かい話は後で良いだろう。
今は訓練の準備だ。
音寧様、今回来る予定のあやかし全員ですか?」
「はい、ほら皆、自己紹介をしなさい」
「はい! 僕はキキだよ!」
「彼女は雀から変化したあやかしです。
非常に元気が良い良い子なんですよ。
実力はまだまだですがね」
彼女は非常に背が低く、精々5歳程度の容姿だ。
だが、背中の翼はかなり大きく、全力で開けば
彼女の全身よりも大きくなりそうである。
唇などはなく、耳は人と同じ様になってる。
だが、毛色は全体的に茶色く、雀に近い。
「私はワンダ、よろしく」
「わかるでしょうけど、
何のあやかしかは言いましょうね」
「……い、犬のあやかし」
アキエのすぐ近くで照れながら彼女は自己紹介をした。
容姿は全体的に黒っぽく、少し背が小さい。
すぐ前にいるアキエより若干背が低い。
服装はアキエに近く、毛色が一緒なら
若干姉妹の様に見えるかもしれないが
アキエが可愛い系の顔付きなのに対して
彼女は少し大人びた顔付きなのだから
あまり姉妹の様には見えないだろう。
だが、アキエのすぐ後ろに引っ付いて
尻尾が激しく左右に揺れてるし、妹の様に見える。
「何か近いわね、姉妹かしら」
「姉妹って雰囲気は無いけどなぁ」
「私はアキエだよ、見た目でわかるかもだけど
犬のあやかし、よろしくね」
ワンダが近くに居るのは当たり前なのか
特に気にせず彼女は元気よく自己紹介をした。
その様子を見て総一郎が少し眉を動かす。
「……彼女、相当な手練だな」
「そう? 何か馬鹿っぽいけど」
「馬鹿っぽいとか言わないでよ清美ちゃん」
「大丈夫だよ、よく言われるから」
全く気にする様子もなくニコニコと笑いながら答えた
その雰囲気に清美は少し呆れを見せる。
「私はハク、馬のあやかしです。
よろしくお願い致しますわ」
おしとやかに微笑みながら彼女はお辞儀をした。
この中で1番背が高い彼女。
髪色は白く、馬のような耳が生えている。
足元から馬と同じ尾が見えるのだから確実に馬だ。
身長は高いが胸はあまり大きくはない。
しかし、髪の毛が非常に長く、戦いにくそうだと
清美は感じた。
「僕はポチノ、皆とは違って宝龍様の部下
憧れは宝龍様! 空間術を勉強してます!」
「あいつの部下? にしては雰囲気軽いわね」
元気よく自己紹介をしてる彼女はポチノである。
毛色は灰色であり、宝龍の影響か若干白が強い。
身長は他の犬系列と同じく低い方であり
アキエより若干低く、ワンダより少し背が高い。
「私はツユミですー、牛のあやかしですー
お近付きの印に牛乳どうぞー」
「いや、いきなり牛乳って」
不意に渡された牛乳に清美は少し困惑する。
牛乳は瓶に入っており、紙のフタがしてある。
「ありがとう、私のど渇いてて、早速頂きます」
「亜希子! 少しは警戒しなさい!」
だが、亜希子はすぐに渡された牛乳を飲んだ
瓶に入ってるため、すぐに飲めてしまう。
他にもかなりの牛乳を持っている。
牛乳の量は非常に多く、それを1人で
軽々と持っているのだから、怪力なのが分かる。
「とうぞー、お好きにー、沢山あるからねー」
「ありがとう!」
「幸子まで……」
「うっま! この牛乳うっま! 滅茶苦茶美味い!
こんなに甘くて飲みやすい牛乳初めて!」
「ありがとうねぇー」
「美味しい! 凄い甘くて美味しい!」
「お、美味しいのね」
この牛乳を飲んだ人達は全員口を揃えて美味しいと言う。
流石に周囲の反応を見て清美も牛乳に興味を抱いた。
「確かにこの甘さは凄いですなぁ
コホン、では質問ですが、この牛乳
実はあなたが出したとか」
「馬鹿かあんたは!」
不意に馬鹿な事を聞いた奏を清美は怒鳴った。
だが、攻撃はしない。実は清美も思ったからだ。
相手は自分で牛のあやかしと言っていた。
実際、容姿からもそれがわかる。
鬼とは違う、牛のような角が生えてるし
全てが滅茶苦茶大きい。
流石にあの大きさだと戦いに支障が出るだろう。
「流石にこの量は出ませんよぉ
西の屋敷で私が育てた子のですー」
「あー、なら良いか」
それなら大丈夫かと、清美は渡された牛乳のフタを空けた、裏にはニコニコマークがあったのだが
無駄に手の込んだ事をしてるなと思いながら飲んだ。
あまりに爽やかな甘さ。しつこすぎないさっぱりしたのどごし。優しさに包まれるような上品な甘み。
「う、美味いわね……」
少し笑みが出そうになる甘さだったが
清美はその笑みを抑えた。
「良かった、実は清美さんに渡したの
私が出した牛乳で」
「なぇ!?」
不意に告げられた驚き情報に清美は驚愕する。
全て飲んだ後に言われてはこう反応するしか無い。
「最初の人には当たりを渡そうとして
他は適当に入れてますー」
「あ、あぁ、な、なぁ、何で、あ、あの」
「清美ちゃんが動揺してる!」
「俺でもああなるな、間違いなく」
「だから総一郎殿は飲まなかったのですか?
それはー、変な想像してたという証拠に」
「奏殿、学習してください」
「殺気こわ!」
清美は動揺を隠せずに目を泳がせている。
「私、あやかしになってから、お乳の出が悪くて
でも、味には自信あったんですー
美味しいって言ってもらえて良かったですー」
「あ、えあ、そ、そう、あ、あ、うん、美味しかった
またください」
「はい! 喜んで」
(何馬鹿なこと言ってんのわたしー!?)
あまりの動揺に自分が馬鹿な事を口走ったと気付き
内心動揺しまくり、叫び声を上げたが
周りに気付かれないように抑え込んだ。
「かなり気に入ったんだな」
「いや、気に入ったのはそうだろうけど
内心叫んでるね、あれは」
「冷静に見えるけど」
「あれが冷静はないよ、滅茶苦茶動揺してるよ」
そんな清美の姿を見ながら、亜希子は2本目を空けた。
蓋の裏にはニコニコマークが付いていたが誰も気付くことは無かった。
ただ2本目が1本目よりも滅茶苦茶美味しかったのは
亜希子のみ知る事てある。




