合同訓練
御剣部隊と陰陽師達の合同訓練。
今まで、この2つの組織はあまり絡みがなかった。
片や対悪鬼の組織。片や対人の組織。
そもそも、想定してる相手が違って居た。
しかし、今まで無敗だった双方の長が共に敗北を経験した事で、新たな試みが行われる。
「うし、今回は初の合同訓練!
剣技をあまり好んでないあんたらからすれば
下らないと感じる奴もいるかも知れない!
でも、霊力が効かない悪鬼相手にも善戦できる様に
今回の訓練は行うわ!」
「対人を想定した組織である我々が
何故陰陽師と、と考える者も居るだろう!
だが、霊具神姫の活躍もあり
俺達御剣部隊は悪鬼相手でも戦う事が出来る!
故にいざという時に陰陽師を救えるように
我々は霊力による特殊な戦いが出来る
陰陽師達と訓練を行い、特殊な力を持つ悪鬼相手に
戦える様に訓練を行う!」
陰陽師、御剣部隊に所属する者たちは
今回の特殊な試みを前に混乱が生じて居る者も居た。
だが、双方の長が部下に説明をして納得させた。
「あの清美様が大きな行動をするとはな」
「よっぽどあの敗北がデカかったんだろう」
「このまま成長して欲しいな」
「幸子ちゃんが来てから変わったな。
俺達も努力しなければ」
意外な事に陰陽師達は清美の行動を好機と捉えた。
今までとは違う彼女を見て可能性を感じたのだ。
いつもの癇癪では無い、長としての行動を見て。
「まずは俺と清美で実戦を見せよう」
総一郎の目配せで清美も動いた。
ある程度距離を空け、訓練用の模造刀をお互いに取る。
そして、お互いに構えた。
「行くぞ、清美」
「来なさい」
その会話の直後、お互いに接近する。
まずは総一郎の一太刀が振るわれた。
だが、その一撃は清美が展開した結界術に阻まれ
ガラスを殴った様な音と同時に空中で静止する。
即座に清美は体勢を低くして、
総一郎めがけ、切り上げる様に刀を振るう。
「良いぞ清美、太刀筋が速くなった」
総一郎は少し嬉しそうに反応。
清美の一撃を回避してみせた。
その後、即座に隙を晒した清美の胴に向け振るう。
「ふん、相手を褒める余裕あんの?
部下の前で無様晒すわよ?」
清美は総一郎の一撃を再び結界術で防ぐ。
最初と違うのは結界の角度だろう。
清美は結界に傾斜を作り、総一郎の一撃を逸らす。
総一郎の一撃はこの結界により流されてしまい
清美の頭上を通った。
大きな隙だ、清美は無防備になった総一郎の胴めがけ
距離を詰めて模造刀を振る。
「踏み込みが甘いぞ、それでは避けられる」
かなり正確に隙をついた一撃ではあったが
総一郎は紙一重でその一撃を避けた。
彼の言う通り、清美の踏み込みは浅く
彼に一撃を届かせられる者ではない。
「踏み込んでたら、あんたは反撃出来るでしょうに」
刀を振るった勢いを殺さず、清美はその場で回転
そして、総一郎視点からは見えないタイミングで
懐から複数の霊針を取り出し総一郎に投げた。
「そう来るよな」
だが、既に想定通りだったのだろう。
総一郎は冷静に霊針を弾き、構え直した。
清美も同じく再び構える。
「相変わらず、反応だけは良いわね」
「お前は素晴らしい判断力だが
また、基礎が崩れているぞ?」
「はん、あえて崩してやったのよ」
小さくお互いに憎まれ口を叩いた後に
お互いに構えを解いて部下達を見た。
「俺達の実戦はここまでだ、参考になったか?」
「正直、あんたらにはまだここまでは求めない。
まずは相手と刀を使って隙を作るまで戦う事よ。
隙が出来たら式神を召喚し戦う形ね」
陰陽師と御剣部隊は
あの一瞬の攻防について行けなかった。
達人同士の間合いの詰め方や攻防。
それぞれ違うジャンルによる戦いであるために
慣れていない彼らは追いつけなかった。
「あたしらの戦いでそんな困惑してたら
妖怪の動きに付いて行けないわよ?」
この戦いも河童の長との死闘と比べれば
かなり手を抜いた戦いだったと言える。
お互いに命懸けの戦いだった時とは違い
今回はただの組手、本気度に大きな差がある。
ましてや今回は部下達に戦いを見せるために
お互いにかなり手加減した戦いでしか無かった。
それなのに部下達は彼らの戦いに付いてこれてない。
まさに天地の差と言える。
「はぁ、大丈夫なのは不安になるわ」
「大丈夫にする為に合同訓練をしてるんだ。
とにかくこの戦いで分かっただろう。
妖怪達は場合によってあの攻防以上に素早く
お前達の命を狙ってくる。
今のままではお前達はすぐに命を落とすだろう。
妥協せず、本気で訓練を行う様に」
「とにかく、陰陽師は反応速度を上げること。
あたしらの想定してる敵は悪鬼。
都に蔓延る雑魚を狩るだけで良いと
腑抜けてたらちょっと強い悪鬼にやられかねない。
少しでも反射神経鍛えて反応しなさいよね」
お互い、毛色は違うが人々の為に戦う事を選んだ者達。
今回の組手に反応出来なかった事を反省し
彼らは長の言葉を受け入れ、本気で鍛える事を選んだ。
それぞれの長に指導を受けながら努力を始める。
「よし、行くよ!」
「うん……」
幸子が同じ位の男児と向かい合い刀を構えた。
まだ結界術を納めていない幸子だが
剣技は清美に教えてもらって居たからか
少し元気よく戦っている。
「御剣部隊に子供居たのね」
「御剣部隊を志した男児は多いからな。
あの子は幼子達の中でも結構出来る子なんだが
相手を殴る事に躊躇いがあってな」
総一郎が認める事はあり、幸子と戦ってる男児は
幸子の攻撃を捌き、隙を作る事に成功した。
だが、彼はその隙を突いて攻撃は行わず
幸子が体勢を立て直す方が早かった。
「どうして攻撃を止めたの?」
「あ、いや、隙が無くて……」
「隙だらけになったと思うんだけどなぁ」
「やるわね、幸子を捌くとは。でも、躊躇う。
どうなの? それは御剣部隊的には」
「構わない。俺達は相手を殺す為の組織じゃない
帝を守る為の組織だ。
たが、健太はそれを理解してない。
攻撃出来ない自分を責めて無理矢理攻撃しようとしてる」
軽く2人の戦いを観てるだけで分かる。
健太は何度も攻撃をしようとして隙を晒してる。
「てりゃ!」
「あだ!」
その隙を突いて幸子が攻撃を仕掛けて
健太は一撃を受けてしまった。
「前途多難ね」
「何とかするさ」
周囲の訓練を見ながら2人が呟く。
長として、これこらどうするか考えながら。




