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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
第八章
208/209

疑似魔人VSウリエル様の聖刻者

 疑似魔人のあり得ないくらいの進化速度と、アズ様と同じ魂を集めて再生してくる能力。一時は弱点を見抜き突破口を見つけたのだが、やはり一度受けた攻撃に対してすぐさま適応してくるという能力に苦戦を強いられた。

 そのうえ魔人は未だに完全体ではないという状態。これにより俺たちは長引けば長引くほど不利になるという絶望的な状況に陥った。


 そんなピンチに、どこまで通用するのかは不明だが、ウリエル様の聖刻者であるカスケードとカマボコが名乗りを上げた。

 聖刻も駄目、物理的な攻撃も駄目な相手に、どういう作戦で攻めるのかは分からないが、ここは二人を信じて任せるしかなかった。


“俺たちの銃弾には絶対に触れるな。下手をすると一生の傷を負うぞ。魔人が攻撃してきたときだけ身を守ってくれ”


 二人は銃で攻撃するつもりらしい。しかしマジでどんな弾を使おうとしているのか、やたら物騒な注意をする。


 そのヤバイ言葉には流石に皆ビビるしかなく、魔人はコロッセオの中央に独りぼっちとなった。


“じゃあ始めるぞ”


 魔人が孤立すると、いよいよ攻撃が始まるようで、二人は深く銃を構えた。


 魔人は未だにパイロットを探しているようで、コロッセオの中央で項垂れたように立ち尽くしている。そこへカスケードたちが息を殺して狙いをつける。

 

 一見すると動きの無い穏やかさはあるが、そこには不気味な静けさがあり、不穏な空気で満たされていた。


 そんな静けさの中で、カスケードたちの銃が火を噴く。


 今度の射撃は、止まることの無い連射だった。静かさの後の響き渡る銃声は、突然発生したかのような驚きを感じるほどで、その後も止まらない爆音は、コロッセオを銃弾飛び交う戦場に変えた。


 カスケードとカマボコの攻撃は、先ほどと変わらないアサルトライフルでの連射。おそらく弾を何か特殊な物に変えたのだろうが、当然ヒットしても魔人には効かない……いや、先ほどよりも悪く、どれだけ弾がヒットしても魔人は先ほどよりも固くなったようで、体を小さく揺らす程度でダメージを与えてさえいない。

 

 それでもカスケードたちが射撃を続けると、次第に変化が現れる。


 最初の異変は、魔人の体が濡れ始めた事。おそらくこれはカスケードたちの弾による物。

 カスケードたちは何かの液体を弾に込めているようで、それが大量にヒットする事で魔人が濡れ始めた。

 しかしそれは濡れているだけで、魔人へのダメージは未だない。


 すると今度は、魔人の体の濡れた部分から白い湯気のようなものが上がり始める。


 その煙は徐々に濃く確実なものとなり、一体それが何なのかは不明だが、確実にヤバイ薬品なのだと分かった。


 それでも魔人は未だに棒立ちのまま、全くダメージを受けている様子は無い。


 だけどやっぱりウリエル様の聖刻者は頭が良いようで、ここでカスケードだけが弾倉を変えた。そしてカスケードが射撃を開始すると、魔人の体に一気に銃弾が突き刺さった。


「すげぇ!」


 あれだけ固かった魔人の体を、いきなり豆腐のように柔らかくさせたカスケードたちの攻撃は魔法のようで、いつものギャップのせいか、計算された攻撃には余計に驚かされた。


 カスケードの銃弾は想像以上に効果があり、魔人の右腕を吹き飛ばすほど胸を抉り取った。

 しかしその衝撃で魔人が倒れてしまい、折角あれほどの効果がある銃撃も止まってしまう。


「構うな撃て、カスケード!」

 

 魔人が倒れてしまったせいで、カスケードたちが狙い辛くなったのかもしれない。それでも今は少しでも傷を負わせて瘴気を使わせた方が得。

 一度受けた攻撃は二度効かないため、無理をしてでもダメージを与える事が優先だった。


「どうした! なんで撃たない!」

「落ち着け大将。もう撃っても無駄だ」

「なんで⁉」


 そこまで言うと、何故かカスケードはノンバーバルコミュニケーションに切り替えた。


“最初に撃った弾は硫酸が込められていた。だから酸で脆くなった部分以外には効かない”

“……そうなのか?”

“あぁ。だが安心してくれ、カマボコならまだまだ薬品弾を作れる”

“……そ、そうか”

“だからもう少しだけ俺たちに任せてくれ”

“分かった”


 流石ウリエル様の聖刻者。硫酸が込められた銃弾を作れるとは驚きだった。っていうか、カマボコヤバすぎ。

 カマボコが一体どんな知識を持っているのかは不明だが、まさか薬品に詳しいとは……奴は絶対犯罪者だった。


 そんな犯罪者は、本当にまだまだ劇薬を作れるようで、マガジンを作り出すとカスケードに渡し、自分もマガジンを入れ替えて再び射撃体勢に入った。


 魔人はまだ傷が癒えずに倒れたまま。にも関わらずに淡々と二人は鋭い目つきで狙いを定める。


 その姿は狂気じみており、与えられた任務を機械のようにこなす殺し屋だった。


 そんな頼もしい二人の攻撃は、魔人にかなりの傷を負わせ、特に体から切り離された部位の修復に多大な瘴気を必要とする損傷を与えたが、それでもバリア内の魂の数は雀の涙ほどしか減らず、瘴気が減っているような感じも無い。


 カマボコが、後どれほど効果がある弾を作り出せるのかは分からない。

 カスケードはもう少し任せろとは言っていたが、後千回くらいは殺さないといけないだけに、今のうちに俺たちも何か考える必要があった。


 しかしどうやら魔人は傷の修復も覚えるようで、先ほどよりも短い時間で傷を治し、立ち上がった。そこをまたカスケードたちが狙う。


 攻撃は先ほどと同じアサルトライフルでの狙撃。そしてさらに固くなったのか、魔人に対しての効果も先ほどと同じ。いや、今度はさらに固く、重さまで増やしたようで、銃弾は弾かれ、一ミリも魔人の体を動かす事さえできない。まるで体が鋼鉄の塊になったかのようだった。


 攻撃を与えるたびに強くなる魔人。おまけに致命傷を与えても不死身のように復活する。体に埋め込まれた瘴気の結晶も既に体に吸収され、コアという弱点さえない。


 脅威の能力は難攻不落という言葉が相応しいくらいで、所詮俺たち程度の聖刻者では太刀打ちできなかった。

 それを、希望を示すかのようにカスケードたちは超える。


 今度もさっきと同じ銃での連射で、さっきと同じく魔人の体から白い煙が上がる。魔人もまだ体制が整っていないようで動かない。

 しかし白い煙が燻るように濃く上がると、突然変化が現れた。

 

 今度はどんな弾を使用したのかは分からないが、特に濃く煙が上がっていた右腕が突然チーズが溶けるように崩れ落ちた。するとそれを皮切りに、左腕も落ち、胸も溶け、最後には真っ白な煙で魔人が包まれ倒れた。


「なっ、なんだ今度はっ⁉」


 明かに硫酸とは違う。溶けているというよりも内部が燃えているという感じの崩れ方。それも魔人が倒れても煙を上げ続けており、死して尚損傷を与え続ける性質には、悪魔的な怖れを感じた。


“白リン弾だ”

“白リン弾?”

“戦争でも禁止されている非人道的な弾だ。触れてもヤバいが、あの煙は絶対に吸うな。煙だけで死ぬぞ、大将”

“マジかっ⁉”


 どうやらカマボコは、もう人間じゃないらしい。あの戦争でも禁止されている武器を作り出すとは、奴はただの動く殺戮兵器だった。


 それでもあの魔人相手だからこそ役に立つようで、ここでカスケードは確証を得たようだった。


“どうやら奴は、一つ覚えの馬鹿らしい”

“どういう事だよ?”

“叩かれれば硬化。押されれば重さという感じで、一つの事に対しては直ぐに対処できるようだが、二つ以上の事を同時にされると、片方にしか対応できないようだ”

“つまりそれって……殴りと斬撃を同時にすれば、どっちかは効くって事か?”

“違う”


 えっ⁉ 違うの⁉ 今そう言わなかった⁉


 どうやらカスケードは本気モードらしい。頭の良い人特有の、分かりやすいようで分からない事を言い始めた。お陰で俺は無駄に恥をかいた。


“どういう事だよ⁉”

“銃弾は同じように弾かれた。だが、薬品は変えただけで通用した。おそらく酸に対しての耐性は作ったのだろうが、全ての薬品に対しては対応できない”

“でも、次はもう白リン弾は効かないぞ?”

“そうだ。勿論硫酸も効かないだろう”

“え? ……どういう事?”


 多分カスケードはめっちゃ頭は良いのだろうが、会話は全然通じない。つまり、結局馬鹿。

 普段分け分からんくらいで丁度良い辺り、ある意味駄目なままで良かった。


 そんなカスケードだから、ここで本当に頭の良いカンパネラの姉さんが割って入った。


“つまり奴は、攻撃を与えれば与えるだけ固くなることが出来る。しかし、固くなればなるほど衝撃には弱くなる。ダイヤモンドと同じだモチロン・マックス”

“ダイヤモンドですか?”

“そうだ。ダイヤモンドは世界一固いと云われる鉱石だ。しかし硬すぎるが故、叩くと簡単に砕ける”

“そうなんですか⁉ じゃあ、キン肉マンの肉のカーテンは嘘ってことっすか⁉”

 

 あの名作、キン肉マンが使用する最強防御技。まさかあれが嘘だとは驚きっだった。そう思っていたのだが、やっぱりカマボコは凄かった。


“それは間違いだ。アレは鉄の強度だ”


 何で知ってんだよ⁉


 どうやらカマボコは、キン肉マンファンだったらしい。


“冗談はそれくらいで良い、モチロン・マックス。良く聞け。奴は様々な攻撃には直ぐに対応する。だが、それに対する弱点は考慮していない。そう言えば分かりやすいか?”

“なるほど……どういう事ですか?”

“…………”


 どういう事? ちょっと分かりやすくなったけど、良く分からなかった。


“固くなるなら、柔らかくなくては対応できない攻撃をする。柔らかくなるなら、拳で殴る。そしてチャンスがあれば聖刻で撃ち抜き、大幅に瘴気を削る。そうやって常に対応して出来る奴の弱点を狙うという事だ”

“なるほど! 分かりました!”

 

 さすが姉さん。分かりやすい。


“しかし姉さん。聖刻で瘴気を削るってどういうことですか? 奴は聖刻を吸収しますよ?”

“おそらく瘴気も聖刻も、互いが弱点だ。彼女は私たちの聖刻では純度が足りないとは言っていたが、ぶつけ合えば必ず相殺する方が大きくなるはずだ。特にルキフェル様の聖刻と瘴気は近い性質があり、ラファエル様の聖刻は有利に働くようだ。そうだろ英雄殿?”


 瘴気は、アズ様の聖刻と同じように魂に干渉できる力はあるが、何かが違う感じはずっとしていた。それは俺の思い込みのせいもあり深くは考えはしていなかった。しかし姉さんの言葉で、違いが分かった。

 おそらく魔人の瘴気は、魂に干渉できるだけ。干渉して強引に取り込む。そして魂を瘴気に変える。

 

 姉さんが瘴気はルキフェル様の聖刻に近く、ラファエル様の聖刻が弱点だと言ったのは、ルキフェル様の聖刻は服従、支配と言われる性質があり、ラファエル様の聖刻は浄化と言われるから。

 

 この事から、おそらく瘴気には侵食のような性質がある。


 その推測が正しかったかのように、ファウナが答える。


“素晴らしい考察です。しかし、六十点といったところです。確かにラファエル様の聖刻は、瘴気に対して非常に有利です。そして瘴気と聖刻が互いに弱点であることも事実です。ぶつけ合えば効果的に相殺が可能です。ですが、それは熟練の聖刻者での話。未熟な者がぶつけてもほとんど効果は無いでしょう”


 考察は正解。しかし方法は不正解。根本的に俺たちには力が足りなかった。


“じゃあどうすれば良いんだよファウナ? ファウナに任せるしかないのかよ?”

“貴方たちは魔人の倒し方を見つけましたよ?”

“地道に削れってか?”

“はい”

“いつまで掛かんだよ! 三年くらい掛かるぞ!”

“そこまでは掛からないでしょう?”

“掛かるよ!”


 三年は言い過ぎだが、実際奴を倒すにはかなりの時間と労力が掛かる。やっても良いが、終わる頃には世界は既に救われていたなんてことになっても、何か嫌だ。


 お婆ちゃんの余裕には、驚きだった。


“そう怒らないで下さいリーパー。もっと良く考えなさい。今までの攻撃の中で、最も魔人に手傷を負わせたのは誰ですか?”

“え? ……カスケードたち?”

“違います”


 えっ⁉ 違うのっ⁉


 本日何度目か分からない間違い。もう俺はダメだった。


“貴方たちは、先ほどから正解を言っていますよ?”

“えっ⁉ そうなの⁉”

“体にいくらダメージを与えても、意味はありません。貴方たちがしようとしている事は、なんですか?”

“え?”


 もう今日は本当に駄目だった。先生の言っている意味が全然分からん。つーか、もう正解をはっきりと教えて欲しい。一足す一をずっと三だと言っている俺たちは、ずっと三という答えを譲らないから。


“もう答えを教えろよファウナ! マリアたちだって助けに行かなきゃなんねぇんだから!”

“あんな偽物も倒せないのに、誰を助けられるのですか? それに、もう魔人は立ち上がっていますよ?”


「くそっ……」


 俺たちが訳の分からんなぞなぞをしていたせいで、もう魔人は復活している。そのうえ薬品に対してさらに強化され皮膚が黒味がかり、大分体制も整ってきているようで、眼球が意思を持ったかのような動きをしていた。


「そう焦る必要もありません。貴方たちはとても良いセンスをしています。もしここで貴方たちの力だけであの魔人を倒すことが出来たのなら、それは貴方たちが魔王を倒す資格を得たという事です。私たち英雄と呼ばれる世代は、このような訓練をせず、いきなり魔人と戦い勝っています。貴方たちは、こんなお婆ちゃんが嘆くような若人では無いはずです。それとも、まだ私たちがいないと世界も救えない世代なのでしょうか?」

「チッ!」


 流石ファウナ。舌打ちをしたのは俺だけだけど、皆舌打ちしたくなるような煽り文句。


 こいつには全員の目の色が変わった。

 

「いいぜ! やってやるよ! おい皆! もうごちゃごちゃ考えるな! もう“元”英雄なんて必要無いとこ見せてやろうぜ!」


 ファウナの嫌味ったらしい言葉で、今までの後ろ向きな雰囲気は一気に変わった。

 

 そうなると皆前のめりくらいの気持ちとなり、ここから全員の動きが変わり始めた。


 カスケードが、何故魔人の特性に気が付いたのかは分かりません。そして、カンパネラが何故あれで意味が分かったのかもわかりません。それはつまり、リーパーと同じで私も何も理解していないという事です。唯一分かったのは、キン肉マンの肉のカーテンが鉄の硬度という事と、カマボコがキン肉マンを好きだったという事です。

 要約すると、疑似魔人は叩かれると痛くないように石のように固くなります。しかし石のようになれば割れます。みたいな事です。調べたところ、ダイヤモンドは固すぎるため割れやすいようです。それは柔軟性が無く、衝撃を吸収してしまうかららしいです。本当かどうかは調べてみて下さい。


 正直、疑似魔人は考えなしに強くし過ぎて、倒し方が分かりませんでした。最悪ファウナがバーっと行って即殺して、ファウナ最強みたいになるかと思いました。

 意外とカスケードって凄い奴です。寧ろあのキャラなら敵でも良かった気がしました。

 

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