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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
第八章
206/209

時間制限

 父さんが造り出した疑似魔人との戦いは……俺がいない方が良い戦いへとなった。


 瘴気に対して強い対抗力を持つ、ラファエル様とルキフェル様の聖刻を持つ、フォイちゃん、ルーベルト、ブラックチョコレート。この三人が前衛となり魔人と戦い、物理攻撃での遠距離攻撃が可能なカスケード、カマボコ。そしてルキフェル様の銃弾を放てるカンパネラ姉さんが援護射撃。

 

 これだけでも十分戦える布陣が揃う中、聖刻も魔法も使えず、まともな戦闘経験すらない俺など足手まとい以外の何物でもなく、魔人から一番遠い闘技場の壁際に立つだけでも邪魔だった。

 特に悪いのが、聖刻を使えば魔人はそれを狙って真っ先に狙って来て皆のリズムを崩す。

 やる気と自信には満ち溢れていただけに、まるで呼ばれてもいないのに勝手に来てしまった友達ん家という空気は、魔人の恐ろしさばかりを際立たせていた。


 そんな恐ろしいバトルは、現在未だ動きのとろい魔人との睨み合いが続いていた――


“どうしたらいい? カスケード?”

“焦るなフォイ。こっちには時間は十分ある”

“隊長の仲間、助けに行かないといけないんでしょう?”

“それは気にしなくていい。大将の仲間は俺たちよりも強い。この魔人擬きを逃がす方が迷惑になる”

“分かった”


 あの特攻隊長のフォイちゃんでさえ脅威を感じているようで、未だにぼ~っとしている魔人に対して、周りを飛び回って威嚇する事くらいしか出来ていない。

 特にフォイちゃんは俺たちの中では一番幼く、実戦経験もほぼ無い。俺でさえどうしたら良いのか分からないのに、攻めあぐねるのは仕方がなかった。


“しかしこのままという訳にはいきません。私が切り込みます。援護を”

“待てルーベルト。それなら俺たちに任せろ。ただ、その攻撃で魔人がどう動くのかは予測できない。いつでも対処できるように準備してくれ”

“分かりました”

“大将、フォイ、ブラックチョコレート。準備は良いか?”

“いつでもどうぞ”

“良いよ”

“あっ! ……あ、うん。良いぜ!”

 

 現在俺は最前線。すっかり蚊帳の外にいると思っていても、超危険地帯。特に俺は狙われている立場。

 カスケードが呼んでくれなければ、突然の事態に屁をこいてぶっ倒れてもおかしくなかった。


“よし。行くぞ”


 俺たちの準備が終わると、カスケードはより集中力を高め、発砲した。


 発砲は短い三連射。アサルトライフルだからもっと撃つのかと思ったが、逆に三発しか撃たない姿からは、プロを感じさせた。

 その上、命中率は六十パーセントくらいしか無いと言っていたのに、全て魔人の頭部にヒット。

 今のカスケードは輝いていた。


 そんな輝き放つカスケードの銃弾を頭部に受けた魔人は、やっぱりカスケード如きの輝きでは相手にならず、さっきはあんなに吹っ飛んだのに、傷を負うどころか倒れる事も無く静かに佇むだけだった。


「おいカスケード! 銃を変えたのか⁉ 全然効いてねぇぞ!」

「そうじゃない。既に“学習”されたんだ」

「がくしゅう?」


 何を言っているのか全く意味不明だった。そこへファウナが補足を入れる。


“魔人は、負傷に対して学習し、素早く対処してきます。アレは初めから人型をしているというだけで、学習を止めたわけではありません”


 そう言えば、魔人は最初は感染した生き物の姿をしているが、最終的には人間のような姿になる。っとアニー先生が言っていた。それはそこへ至るまでに試行錯誤を繰り返し、結果的に最も汎用性が高いからだと言っていた……気がする。

 

“ですから、ダメージを与えるだけの攻撃を繰り返すと、全て無効にされる可能性もあります。それは聖刻、魔法もそうです。無闇な攻撃は魔人を強くするだけです。攻撃は全てに必殺を心掛けて下さい”

“分かった”


 この情報は俺には復習となったが、フォイちゃんには大きな収穫となった。


 ファウナの声に一番に返事をしたフォイちゃんは、今までの警戒態勢ではなく殺戮モードに切り替わったようで、聖刻が一気に高まった。


 フォイちゃんがもし人間で三年一組にいたのなら、圧倒的な理解能力で俺よりも成績優秀だっただろう。

 そしてこの闘志。俺だけが何もできず、何故このチームに俺がいるのか謎だった。


 そんな俺にも役割はあるようで、ここで出番がやってくる。


“それにしても、何故奴はあんなにものんびりしているんだ? 知能が無いのか?”

“それは分かりません。失敗作なのか、不完全なのか……リーパーはどう思いますか?”

“え? 俺?”

“魔人は本来生物に寄生します。しかしアレは作られた”物“。原因があるとすれば、やはりあの体にあると思います。魂を感じ取れるリーパーなら、何か分かるのではないのかと”


 魔人についてはファウナの方が詳しい。そのファウナが俺に訊くくらいだから、アレは魔人とは違う存在なのだろう。

 大体あの魔人の体は父さんが造り出した物。


 疑似的な魔人は作り出すことは出来ても、所詮人間が天界の存在を作り出すなんて不可能な話だった。


“多分魂が無いせいだと思う”

“魂?”

“あぁ。体は確かに生き物だ。それも限りなく人間に近い。だけど、分かりやすく言えばロボットのパイロットがいないような状態だ”

“つまり意識が無いという事か?”

“ちょっと違う。体を構成するのは生物だから、そこには魂はある。だけど……なんて言うか……あれだ。意思決定する奴が居ない状態だ。居ないから皆何して良いか分かんないみたいな……あの……まぁ、そんな感じ”


 何と言うか……まぁ、そんな感じ。理解出来ていても、言葉にするというのは非常に難しかった。

 それでも伝わるのがカスケード。


“なるほどな。右に行きたい奴、左に行きたい奴。我の強い奴が大勢いて、まるで俺たちみたいな感じという訳か”

“ん、まぁ……そんな感じ”

 

 俺たちは俺たちで、嫌な事はしたくないという点で統率されているから、ちょっと違う。だけど今はカスケードが納得すればそれで良かった。


“大将。奴に統率する者が出来る可能性はどれくらいだ?”

“え? それは分かんねぇ。大体俺ですら人間は作り出せない。その理由がそのパイロットだから”

“そうか……”

“でも多分、今の奴を見ていると、それを探してる。だから今はあんなにとろいんだと思う”


 生命の神秘は、アズ様の聖刻を持っていても理解できない。だけど生命は進化する。


 父さんはゼロからあの人形を作ったわけじゃない。地中にいる生命を無理矢理集めてあの形を作った。いわば微生物の集まり。

 どれほど時間が掛かるかは分からないが、あの瘴気が加われば、そのうち理性を持ち出すのはまず間違いない。

 

 そうなればさらに厄介な事になると思っていると、どうやらカスケードには違ったらしい。


“ならもう少し待とう”

“待つ? 何で?”

“意思がなければ、読みが利かない。今分かっているのは、大将の聖刻に反応するだけだ。これでは大将を囮にして戦うしかない”


 それは非常に困る。だけどフォイちゃんもルーベルトも攻めあぐねるのはそれが原因だと分かると、納得だった。


“よし。じゃあ、もう少し待とう。皆! あいつが動くまで何もするな!”

“…………”


 無言の圧力。どうやら彼らは、例え俺が犠牲になって魔人をパワーアップさせても一向に構わないタイプの集まりらしい。


“しかし逆に言えばチャンス。動けないのであれば、今が全員で最大火力の攻撃をするタイミングでもあります。陛下以外”


 ルーベルト⁉ 


 ルーベルトは良い奴。だけど急に出てきた辛辣さには、深い傷を負わされた。


“やる価値はあるが、かなりのリスクを負うぞ?”

“それぞれが持つ最大火力です。もしそれでも倒しきれないのなら、初めから私たちには勝ち目がなかったという事です。ギャンブルはお好きですよね?”

“あぁ。今は火力のあるルキフェル様の聖刻者が三人もいる。悪くない話だ”


 ルーベルト、カンパネラの姉さん、ブラックチョコレート。戦闘特化の三名のルキフェル様の聖刻者。この三人が全力で無防備な疑似魔人への攻撃が可能なら、やる価値は十分あった。


 だけど、未だ何をして来るか分からない魔人には近づけてはいない。倒しきれずに適応されるリスクもあるが、それ以上にカウンターを貰って戦闘不能になる恐れもあった。

 

 まぁだけど、そんなリスクをカンパネラの姉さんが恐れるわけがなかった。


“私の攻撃に巻き込まれても、それはそいつの責任だ。それでも構わないのならやろう”


 流石姉さん。度胸と覚悟はピカ一。上着を脱ぐと迷わず観客席から飛び降りた。


“姉さん”

“こう見えても私は黄泉返りだ。あまり使いたくは無いのだが、拳が最も力を出せる”


 やはり黄泉返りの武器は、圧倒的なパワー。おそらくこの中では一番火力が高い。だがそれ以上に、上着を脱いだ姉さんの黒シャツでは隠し切れない大きな胸はパワーがあり、何という事か、生まれて初めてあの大きな胸に顔を突っ込んでみたいと思ってしまった。


“作戦はどうする?”

“援護が必要なら、こちらで合わせる”

“必要無い。その代わり、追撃を頼む。あの怪物だ。必ず私の攻撃にも耐える”

“それは大丈夫だ。後続にも同等の力を持った聖刻者が控えている”

“十分だ”


 拳をポキポキと鳴らす姉さん。その姿は逞しさとボインが合わさり、女性が持つ魅力的な格好良さがあった。


“全力でたたき込む。私が倒れても手は止めるな”


 ファイティングポーズを取った姉さんは、一気に解放したかのように聖刻を高めた。


“それと、私が死ぬことがあれば、後は任せたぞモチロン・マックス”


 おそらく姉さんは、反撃も回避される事も無視して、命を賭けて全力で打つつもり。にも関わらず、全てを俺に託す。

 そこまでの覚悟を見せつけられてしまうと、この全力の勝負には、例え何があっても俺も参加すると心に決めた。


 この覚悟は俺だけじゃなく全員にも伝わったようで、姉さんが呼吸を整え始めると、呼応するように俺以外の全員が聖刻を高め始めた。


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