63話 全てが始まり出す
パーティー終了から数時間後。
ハルネは札幌の街中に聳え立つ、タワーマンションの上階に位置する自室へと帰宅していた。
警察からの事情聴取や、その場にいた関係者への謝罪などの影響で帰宅時間は一時過ぎとなっており、ハルネの顔には疲労困憊の色が見えた。
流石の不死者といえど疲労には抗えない。
ハルネは深くソファに腰を掛けると、大きく溜息を吐いてゆっくりと目を閉じた。
「全く……この街には厄介者しか居ないな」
目頭を押さえながらハルネは、今日出会った人間達を思い出していた。
────あの弥生会という組織のリーダーをやっている男には要注意だな。
明らかに洞爺には目をつけられたと自覚があるハルネは、今後どうしたものかと思案する。
潰そうと思えば、すぐに消せる────と言う訳でも無さそうなのが現実である。
ハルネも常人よりかは長生きをして、色々なものを見てきた。
だからこそハルネは相手の危険度やカリスマ性ぐらいは言葉を数回交わせば理解ができる。
故に、恐らく弥生会はすぐに潰せるような相手では無いという事も。
ハルネは弥生会について頭を悩ませていたが、その件に関しては今思案してもどうしようもない為、一旦頭の隅に追いやった。
他にも考慮すべき存在は多数あるのだから。
追分元市長の現在。
沙羅 篶成とその妹の危険性。
浦河乖穢の存在。
自身に異様に目を付けてくる警官の存在。
自身の研究結果によって生まれた多重人格者。
この前に見かけた、老兵の男。
「計画を実行するまでには随分と時間がかかりそうだなぁ……」
ハルネはもう一度深い溜息を吐いた。
しかしその口は不気味な笑みを含んでいた。
疲労困憊だと言うのに、確かにハルネは笑ったのだ。
「そろそろ……彼等にも動いてもらおうかな」
ハルネの計画は下拵えが終わったに過ぎない。
ここからさらに準備を進めてハルネの計画はようやくスタート地点に立つのだ。
その為には────邪魔な人間達は要らない。
ハルネにとって、一人の少女以外は大気中に漂う塵芥と対して変わらないのだから。
「もうそろそろだよニーナ」
ハルネは相変わらず口元に笑みを浮かべながら、言葉を紡ぐ。眼下に広がる札幌の街並みを、まるで血に飢えた獣のような目で睨みながら────
「必ず僕が君を────この穢れた土地から解放するから」
× ×




