41話
最終話です。
「灯、まだ仕事上がれない?」
「あぁ…」
「じゃあ先に輝くんの所行っとくな」そう言って俺は輝くんの元に向かった。
(あっやべー。携帯病院!!)
俺は灯の家を目前に、病院に戻った。
「ん?空どうした?」
「携帯…じゃあ待ってるからな」そう言いながら俺はもう一度輝くんの元に急いだ。
(ヘルパーさんも帰っちゃったよな…早く行ってあげないと)
「輝くん、遅くなってごめんな…お兄ちゃんはまだ仕事。俺で我慢してね」そう言いながら輝くんの部屋に向かった。
「輝…くん?」俺は部屋の異様な雰囲気を感じた。
「おい輝くん!?」俺はそう言いながら輝くんの体を触った。
冷たかった…
俺はそのままベッドに体を預け、床に座り込んだ。
しばらくして、灯が帰ってきた。
「ひ~か、ただいま。遅くなってごめんな、道が混んでたんだよ…ヘルパーさんも空も帰っちゃったよな?」そう言いながらこの部屋に入ってきた。
「ん?空…?こんな所で座り込んでどうした?具合悪い?」
「違う…だって…」俺はそれ以上言えず、下を向いた。
「何だよ…なーひか。ただいま」そう言いながら灯は輝くんの頭をなでた。
そこで灯も気づいた…
「ひか?ひかどうしたんだよ。おいひか?」
輝くんの体が有り得ないほど冷たいことを…
「ひか、こんな冗談は止めろよ…寝てるだけだろ?」灯はそう言いながら、輝くんの体を強く強く揺すっている。
灯は分かってるんだ。
だって灯は輝くんを一切傷つけないから…
強く揺すったりしないから…
「ひか、起きろよ…目を開けてよ…」灯は無駄だって分かっているのに、輝くんの体を揺すって、話しかけ続けている。
泣き出しそうになりながら…
「灯…無理だよ。だってもう輝くんは…」そう言って俺は灯を抱きしめた。
強く強く抱きしめた…
「空…嘘だ。何で輝は1人で逝っちゃったんだよ…せめて僕が…」灯はそう言って泣いた。
たびたび嗚咽を漏らしながら、声をあげて泣いていた。
何で携帯忘れたんだろう…
何で道が混んでたんだろう…
そうじゃ無かったら…輝くんの最後を看取れたのに…
「ひかごめんな。1人で辛かったよな…苦しいときに居なくてごめん…謝っても許してくれないよね…」
灯は涙をこぼしながら、輝くんの頭をなで続けた。
それから、輝くんの葬儀が行われた…
参列者は病院関係者など、少数だった。
でもそれでいい。
輝くんのことを想ってくれる人たちだけでいいんだ。
『輝くんをいじめた親戚の人なんて来なくていい…』灯はそう言っていた。
灯はお線香をあげる人たちに機械的に頭を下げていたが、俺が来ると、少し表情をつけて返してくれた。
灯は輝くんを失った悲しみから、お酒を浴びるように飲むようになった。
俺がいくら止めても駄目だった…
灯は飲んでは吐いて、空き缶を部屋にぶちまけていた。
「灯…もう止めなよ…お酒飲めないだろ?」
「うるせぇ!!じゃあどうすればいいんだよ」そう言って声を荒げた灯を、俺はそっと抱きしめた。
「灯…」
「もう嫌だ。母さんも父さんも輝も向こうに居るんだよ?だったら僕だって…」そう言った灯の頬を俺は叩いた。
「空…?」
「そんなこと言っていいと思ってるのか?輝くんはあんなに生きようとしたのに…」
「空…僕は1人で生きられる自信が無い…もう輝の所に行きたいよ」
「ばか…灯は1人じゃない。俺も居るし、いずれいい人だって現れる…灯は輝くんの『意志』まで殺すのか?生きることを簡単に諦めるのか?」
灯はボロボロと涙をこぼした。そして、
「ひか…ごめん。本当にごめん」そう言った。
<4年後>
お墓の前に、桜の花と向日葵を持った男性が佇んでいた。
「今日はね、母さんと父さん、そしてひかに報告があって来ました」
「僕に息子が産まれたよ。名前は『紫苑』。母さん達にとっては初孫だろ?そしてひかの甥っ子。
ほら紫苑、遥おいで」
「フギャー」
「灯さん、紫苑泣き出しちゃった…」その男性は『紫苑』と呼ばれる男の子を抱いてあやした。
「紫苑く~ん、どうしたの?」
「キャッキヤッ…」
あっ笑った。
「じゃあまた来るな。ひか…大好きだよ//」
-Fin-




