表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/41

35話

空に、

「もう人口呼吸器の準備進めた方がいいよ…」そう言われた。

僕は輝にもうこれ以上辛い思いをさせたくなかったから、

「分かった」そう言って輝の病室に向かった。


輝は相変わらず具合が悪そうで、早く楽にしてあげたかった…

「なぁ輝、もうあんな苦しい思いしたくないだろ?だから呼吸器つけようか…」僕の声は震えていたと思う。

あんなに輝に生きて欲しいって願ったのに、いざつけようってなったら、やっぱり躊躇してしまう。

だってつけたら輝から何もかも奪ってしまうんだよ?

話すこと、食べること、笑うこと…


何より、輝のプライドを…


でも、輝は必死に瞬きを繰り返して、僕に

「生きたい。だからつけて!ごめん…」そう言った。

「輝…大好き。これから何があっても、この気持ちは決して変わらないから」僕はそう言って、輝を抱きしめた。


何分この状態で居ただろうか…

空からの着信に気づかなくて、空がやって来た。

「灯、メール見てないの?」

「えっ?ごめん…」

「まーいいや。ごめんね、輝くん。ちょっと兄貴借りる」そう言いながら空は僕を病室の外に出した。

「空、どうしたの?輝のこと?」

「うん…ここじゃあれだな。食堂行こうか」そう言って空は食堂に向かった。


食堂はガラガラで、医者は僕らだけしか居なかった。

「空、何?」

「輝くんのことだけど、出来れば今週中にも呼吸器つけたほうが…」

「あぁ、そのつもり。輝もそれを望んでるから…」

「じゃあさ、灯。輝くんと話ししたくない?」

「えっ?…」何言ってるの?輝は…

「一時的だけどさ、筋肉を緩めてくれる薬あるんだ。本来こんな目的で使わないけど…」

「輝と話せるの?」

「うん。副作用酷いけど、1回ならそんなにおきないと思うからさ…」

「うん…でも」少しでも、輝を傷つけるようなことはしたくない…

だけど。だけど…


輝の声が聴きたい。


わがままだって分かってるけど、僕は輝の声が聴きたい…

「空、僕わがままになっても良いのかな?」

「灯…?」

「輝の声が聴きたい。少しでもいいから輝と話したい」

「分かった。準備するから病室で待ってな」

「うん。ありがとう…」


「輝、ただいまっ」僕がそう言いながら輝の頭をなでると、輝は

「……ん…」辛そうに目を開けた。

「ごめん、寝てた?」

「……」輝からは、当然のように返事はない。

「あのね、今週中には輝に呼吸器つけるんだ。だからさ、その前に少しお話ししない?」

僕がそう言うと、輝は潤んだ目を僕に向けた。

「一時的だけど、僕と話しが出来るって!」

「灯~輝くん。準備出来たよ」そう言って空が病室に入ってきた。

「本当に話せるの?」

「そうだよ。輝くん!でも…注射していい?」

「うん…」そう言って、輝は、目を閉じた。

そして、涙が輝の目から溢れた。

「ごめんね、一回で成功させるから」そう言って空は泣いている輝の腕を取って、針を刺した。

輝の腕はかなり細くて、一回で成功させることは難しいだろう…


だけど、空は約束した通り、一回で成功させた。


「空、ありがとう」

「本当は注射以外でしたかったんだけど無くてさ…輝くんごめんね」

「……」

「30分くらいしたら効果出てくると思うから」

「うん分かった」


30分たった。


「ひ~か、手動かせるようになったら、僕の手を握ってね」僕はそう言って輝の手をとった。

でも、その確認の必要は無かった。

輝が、にっこりと天使の笑顔を見せてくれたからだ…

「兄貴!僕…」そう言って輝は泣いた。

「輝…泣くなよ。せっかくきれいな顔なのに」そう言いながら僕も涙を流した。

空は、

「何かあったら呼べよ」そう言って病室を出て行った。


輝の話はゆっくりだった。

でも、しっかり僕に伝わった。


輝の笑顔は可愛かった。

僕を幸せにしてくれる。


だから、この世界に輝の全てを留めておきたかった…

無くなるなんて嫌だった…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ