34話~空side~
最近、輝くんは具合が悪いみたいだった。
だから、灯には言ったけど、いつ呼吸困難になってもおかしくない…
そして、恐れていた事態はおきた。
輝くんの部屋からの、ナースコールが要請された。
「灯、どうしたの?輝くん?」僕が輝くんの病室に急ぐと、天井を見つめたまま停止している輝くんの姿があった。
他の人から見たら、普通の光景に見えるかもしれない。
でも、俺らは分かった。
輝くんが無言で苦しんでいることを…
「輝の様子が変なんだよ。多分息出来て無い…輝、輝…」灯はずっとうろたえていた。
「灯、まず落ち着け。輝くんをICUに運ぶ。まずはそれからだ」
「うん…」僕は、持って来たストレッチャーに輝くんを乗せて、ICUに運んだ。
治療を重ねた結果、やっと輝くんの容態は安定してきて、ICUの中で、すやすやと眠っていた。
でも、3日たっても輝くんの目は覚めなかった…
急患が入って、俺は輝くんの様子は見に行けなかったけど、灯はずっとICUの前から離れなかったらしい…
時間が空いたので、ICUの前に行くと、灯がガラス張りのICUを見つめていた。
俺には気づいていないみたい…
「ひ~か、輝が起きてくれないと寂しいな。もういいかげん起きてよ…」
輝くんに向ける顔は笑顔だったけど、その笑顔のまま手を固く握り締め、自分の太ももを強く強く殴り続けていた。
俺は灯の元に駆け寄り、その手を包み込んだ。
「えっ…?空?」
「大事にしよう?自分の体…痛いでしょ?」
「でも、こうでもしないと自分がどうにかなりそうで…だって輝が…」
「輝くんは大丈夫。俺が保証する」
「だって一週間…」
「大丈夫。輝くんも灯がずっと居るから恥ずかしいんじゃない?起きるのが」
「もう一週間たっちゃうよ…嫌だ。嫌。嫌…」そう言いながら灯は泣き崩れた。
『一週間』それは、目を覚ます可能性のあるタイムリミット。
一週間が過ぎると、その可能性は、限り無く0に近くなる…
灯も俺も、それを一番恐れている。
一週間が過ぎてしまうことを…
「灯、疲れただろ?少し向こうに行こうか」
「嫌だ。僕はずっとここにいる。輝が目を覚ますまでここにいる…」
「灯。倒れちゃうよ…輝くんだって心配する」
「うるさい。もうどっか行って…行けって!」そう言いながら灯は泣いていた。
泣きながら手を握り締め、その手を床にたたきつけていた。
僕は灯の手を押さえながら、背中をさすり続けることしかしてあげられ無かった。
(早く目を覚ましてよ。灯が壊れちゃう…)
灯が涙を拭い、立ち上がった。
そして、そのまま輝くんに向かってあの優しい笑顔を見せた。
何分たっただろうか。
あるいは何時間たっただろうか。
「空!輝が目を覚ました」
「えっ?本当!」そう言いながらICUを覗くと、虚ろな瞳を見せている輝くんの姿があった。
「灯、ちょっと輝くんに話しかけてくるからここで待ってて」
「うん。輝…良かった」そう言って灯は一筋の涙を流した。
「おはよう、お寝坊さん♪」俺がそう言って輝くんの視界に入ると、輝くんはびっくりしたように目をパチクリさせた。
「もう少ししたらいつもの病室に戻れるからな。ここでちょっと待っててね」
ICUの中から灯を見ると、優しい笑顔を見せていた。
ー灯が輝くんにずっと見せていたものはこれだったんだねー
1日様子を見て、輝くんは一般病室に戻れることになった。




