6 休息は、明日を生きる力となる
朝の日差しと小鳥の囀りに起こされ、目を覚ます。
いつもより遅い時間に目覚めた事と、自室にいる事に違和感を感じる。
おかしいな、昨日の事をまるで覚えていない。
少なくとも部屋に戻った記憶がないのだ、頭が回らない恵は疑問には思いつつも切り替える。
瑣末な事はさておき、今日も訓練場へと赴いた。
「勇者殿は毎日来られてますが、身体はしっかり休めていますか?」
「はい、毎日汗を流し湯船に浸かってぐっすり眠っています」
アルバートから身体は休めているのか?と聞かれたので、しっかりと休息は取っています、と答える。
私の言葉を聞き、首を横に振る。
「そう言う事ではなくてね…?一日中身体を休める事はしないのですか?」
「し…てませんね…。1日でも多く研鑽を積み力をつけないと!と思っていましたので」
確かにこの世界に転移してから、まともに身体を休めたのは初日くらいで、あとは毎日欠かさず訓練場に赴き、何かしらに励んでいた。
この所妙に身体が重いと感じていたのは疲れからくるものなのかもしれない。
新しい事を学び吸収する事に楽しさを見出していたため、失念していた。
「勇者殿!時に身体を休めなければ、いざという時に身体を壊す事になります、ですので今日は休暇とし、心身共に休まれる事、いいですか?」
「は、はい!」
必ず休むように!!とアルバートに釘を刺され、萎縮した返事しか返せなかった。
時は少し経ち、私は城内を散策する、転移してから訓練、実習、実戦の繰り返し毎日のだったため、休暇を渡されてもする事がないのだ。
心地の良い日差しに身体を温めてもらいながらも、散策を続けていると、庭園へと迷い込む。
迷子になりつつも久々に感じる花の美しさに晴れやかな気分で歩みを進める。
「あら、めぐみ様、ご機嫌麗しゅうございます」
と王女殿下がカーテシーを披露する
腑抜けた状態で想定外の出会いをしてしまい、少し恥ずかしさを感じたつも挨拶を返す。
「お心遣いありがとうございます、王女殿下。お陰様で恙無く過ごしております」
と同じくカーテシーを返す。
本日はお一人ではなく、初めて見る方と一緒のようでした。
お邪魔かと思い挨拶し離れようとしたところ、王女殿下からお茶会への参加を提案され、参加する事になり、ついで同席していた人物の紹介をいただく事となった。
「お初にお目にかかります、私は白鳴 恵と申します」とお辞儀をする。
すると続いて、王女殿下の隣に座っていた11〜2歳くらいの女の子と5〜6歳くらいの女の子、10歳くらいの男の子が順番に自己紹介を始める。
「お初にお目にかかります、この国の第二王女を務めます、イルミナ・エリュシオンです、お噂は予々。よろしくお願いします」
「はじめましゅて、うるめな・えりゅしおんですよろしくおねがいします!」
「僕からも挨拶を、初めまして、この国の第一王子を務める、カミシア・エリュシオンと申します、よろしくお願いします」
と、3人の王族の方々との初対面のあと、私を交えた四人でテーブルを囲み談笑した。
小一時間ほど経ち、公務のためにアルマナは離れてゆき、それに付き添う形でイルミナとカミシラも別れの挨拶を残し去っていった。
その場に何故か残ったウルメナは、恵の服を引っ張り庭園の奥を指さす。どうやら遊んでほしいみたいだ、やる事を見つけられずにいた恵は遊びに付き合う事に。
最初は庭園内での鬼ごっこのようなものから始まり、かくれんぼや探検ごっこなどウルメナが疲れて眠るまで遊びに付き添った。
沢山遊び、本来なら疲れているはずなのに、そのような様子は一切ない、むしろ蓄積された疲れが取れ心地よい気分ですらある。
眠ったウルメナ王女に膝枕をし、木陰で休んでいると、慌てた様子のアルマナ王女がこちらへと駆けてくる。
「めぐみ様!ウルを…ウルメナを、見かけませんでしたか!」
焦った様子のアルマナ王女に、口に人差し指を当て、自分の膝下を見るように促す。
「この子ったら…めぐみ様せっかくの休暇だと言うのに、遊びに付き合わせてしまって申し訳ありません…」
無事見つかった事への安心感と、それ以上に迷惑をかけた事にアルマナ王女はため息を吐いて謝罪を口にする。
「いいえ、私もいい息抜きになりました、第三王女殿下には感謝しています」
その後ちょっとした小話の後、ウルメナ王女を抱き上げ、城内へと帰った行くアルマナ王女を見届けてから散策を再開する。
迷路のような庭園を抜け、城門を潜り城下へと降りて来た恵は、活気あふれる街並みを見て回る事にした。
「すごく賑やか…」
とても世界が危機に瀕しているとは思えないほどの喧騒に驚きつつも歩みを進める。
露天市場で気になった食べ物を購入し広場のベンチに座り食べたり、手持ちの衣類が少ない事を思い出して、衣類の購入をしたり、迷子になっていた幼子を修道服を来た人に送り届け、孤児院まで赴いたり、と休暇を満喫し、夕刻城へと戻った。
城へ戻ると、アルマナ王女から呼び出され、少し緊張しつつも部屋を訪ねると、一緒に食事をしませんか?とのお誘いをいただく。
どうやらお昼の例も兼ねてとの事で、特に断る理由も断る勇気もなく、嬉しいお誘いだったため、了承の旨を伝え、二人でテーブルを囲んだ。
「めぐみ様、改めてお礼を申し上げます」
食事が始まってすぐ、王女殿下からお礼を述べられる。
「本日あの後城下へと赴かれていたみたいですが、どうでしたか?楽しめたでしょうか…」
異邦人の趣向に合っているのかが分からず、不安げな面立ちでこちらを見る。
少し不安げな面立ちをしながら伺いを立てる。
「はい、とても!」
「左様でございますか…」
私の言葉に安心した王女殿下は胸を撫で下ろしている。
その後は、妹君達話や元の世界での事などアルマナ王女との談笑は続き、終始穏やかな食事会で終わり迎えた。
アルマナ王女とは別れ、自室へと向かう最中、美月と出会う。
「………恵、ちゃんと休めてますか?」
どこか憂いの帯びた顔で、私に問いかけてくる。
「うん、今日は休暇でしたのでゆっくり休めました」
安心させるため、今日の事をしっかりと伝えた。
「そう…なんですね…、私の力が必要ならいつでも言ってくださいね…」
しっかり休んでますよ、その言葉を聞き安心したのか、美月の表情が少し明るくなったような気がした。
「ありがとう、美月。おやすみなさい」
「恵もおやすみなさい」
美月との雑談も済ませて自室へと戻ってきた恵は、今日あった出来事を思い出しながら、アルマナ王女から頂いた剣の手入れをし、終わってから浴場へと向かい汗と疲れを流す。
長いようで短い休暇はこうした過ぎていき、ベッドへと潜った恵は、明日からも頑張ると気持ちを新たに眠りへと落ちた。
壊獣との戦いまで残り20日




