ヒ素!?
【時効まで残り8年6ヶ月】
2月14日、バレンタインの日に限って期末テストがあった。
「美弥〜チョコレート欲しいよー。」
「スーパーに行けば。山ほどあるよ。」
「いやいや、美弥の手作りチョコが欲しいんだよ。」
「あんた、その手に山ほどもらったチョコがあるんだから、十分でしょ。」
奏太は優香を含めたたくさんの女子からチョコレートをもらっていた。
しかし、奏太よりも少し多くチョコレートをもらっている男子がいた。
金白学園中学から上がってきた杉本那由太だ。杉本はイケメンで女子からモテ、毎回テストで学年一位を取っているエリートだ。
女子からモテるという点で、奏太に恨まれている。
そんな杉本は、テストが始まる前までに20人くらいの女子からもらったチョコレートを全部食べた。
「それではテストを初めてください。」
赤坂の声と同時に一斉に生徒がペンを握った。
最初は美弥の得意な数学だった。テスト勉強を真面目にやったかいがあり、かなり早く解けた。数学のテストが終わる10分前、廊下から苦しそうな声が聞こえた。
「うっ‥助け‥」
そして、バタンという音も聞こえてきた。赤坂先生が急いで廊下に出ると、
「杉本!?大丈夫か!?」
美弥たちには見えなかったが、杉本が意識を失って倒れていたらしい。
すぐに救急車を呼んだ。
まもなく数学のテストが終わり、次の国語のテストは予定より大幅に遅れることになった。
「杉本くん、大丈夫かな?」
「彼が倒れるのは初めてだよ。」
「もしかして、毒を食わされたのか!?」
「確かに、たくさんの女の子からチョコレートをもらっていたから、その中の誰かが毒を仕込んだ可能性があるね。」
「よし、探偵チーム【光】がこの難事件を解決しよう!」
「ちょっと待って、それは500兆円事件専用じゃないの!?」
美弥がそう言った。
「事件全般を専門としているぜ!」
(まだ時間あるから、勉強したかったのに‥さっさと解決させよう。)
救急車が来る前に、探偵チームの4人で保健室の先生に事情を聞きに行った。
「杉本は、持病は持っていましたか?アレルギーとか。」
「持っていないよ。」
「昨日までの様子はどうでした?」
「今日の朝まで元気だった。テスト中に急に吐き気を催して、それからめまいや動悸もしたらしい。」
美弥は黙って教室の自分の席に戻り、パソコンを開いた。
何かに気づいた。吐き気、めまい、動悸。ヒ素を摂取した症状に似ている。
この学校の女子で毒の購入履歴が無いかを調べた。AIを使って急いで調べたが、毒の購入履歴や殺害計画などは見つからなかった。
ヒ素はそう簡単には手に入らない。
もし本当にヒ素なら――
この学校のどこかに、あの日チェリーを殺した人物がいるのかもしれない。
先生たちが一応警察を呼んでいたらしく、湯瀬刑事が到着した。
「なんで、湯瀬ちゃん1人しか来ないの?」
「大勢の警官が500兆円事件の捜査に行ってしまって、僕1人しか来れなかったんだ。」
美弥は複雑な気持ちになった。
「とりあえず、状況を最初から教えてもらえる?」
優香が状況を話し終えると、湯瀬は少し考えてから
「確かに、チョコレートに何か入っていた可能性があるね。例えば‥ヒ素とか?」
(さすが警察だ!症状を聞いただけで推測ができるなんて!)
「杉本くんにチョコレートを渡した女子を全員ここへ連れて来て。」
4人で他クラスを回り、チョコレートを渡した23人の女子を連れてきた。
「毒なんか入れていません!」
「私は彼が好きだったんですから、殺す訳ないですよ!」
皆、否定をしていた。
「あなた、いつもテストで学年2位だったよね?杉本くんがいなくなると、あなたが学年1位になる。」
「私じゃありませんよ!確かに、1位の杉本を少し恨んではいたけど、だからといって殺したりなんかしません!」
美弥はCherryを殺した犯人がいることを期待して、真面目に捜査に協力していた。
国語のテストが始まらないまま、16時を過ぎていた。捜査は今日は打ち切りになり、全員家に帰った。
その頃、第二の家で風見が大きなチョコレートケーキを作っていた。
「ハッピーバレンタイン!」
「このチョコレートケーキは食べていいんですか?」
「もちろん!五十嵐と美弥に作ったんだけど、五十嵐が高熱を出しちゃって食欲がないみたい。」
「じゃあ、私が全部食べていいんですね。」
風見の返事を聞かずに、フォークをケーキに入れていた。今日は頭を使ったので、甘いものがたくさん食べたかった。この大きなケーキも今日は1人で食べきれそうだった。
「美弥、それは危険だよ!」
「大丈夫ですよ、五十嵐さんが怒ったとしたら、市販のケーキを買ってきてあげますから。」
「そーゆー意味の危険じゃないの!一気にチョコレートを食べたら、倒れちゃうかもしれないよ!」
「毒なんて入ってないんですから、倒れませんよ。」
美弥は食べ進みながら喋っていた。
「知らないの?チョコレートに入っているカフェインを一気に大量に摂取すると、動悸やめまいがしたり、倒れてしまうんだよ!」
「えぇ!?」
美弥はフォークを止めた。そして、今日の出来事を全て話した。
「それは、おそらくカフェインが原因だよ。23人からもらったチョコレートを一気に全部食べたなら、倒れるのも仕方ない。」
次の日、湯瀬刑事にそのことを話してみた。そして、病院にもそれが伝わり調べると、やはりカフェインの大量摂取が原因だったらしい。幸い、杉本の命に別状はなかったらしい。
またもや風見の活躍だ。
その次の日、美弥は奏太に
「これ、あげる。」
「やったー!美弥からのバレンタインさいこー!」
中身を見ると、マシュマロだった。嫌いというマシュマロの意味を知らずに奏太は喜んでいた‥




