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500兆円事件〜時効まで、あと10年〜  作者: 近衛あみ


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5/10

ハッカーVS殺人鬼

次の日、美弥は奏太に

「おはよう」

と言ってみた。

「おはよう!彼女からの初めての挨拶!さいこー!」

「いや、彼女じゃないんだけど、妄想は頭の中だけにしとけよ。」

それをろくに聞かずに浮かれてどっかに行ってしまった。


美弥は結成した【探偵チーム光】の存在を忘れていた。

「美弥〜!、優香〜!4人で今日の放課後に警視庁に聞き込みに行こうぜ!」

「行く行く♪」

優香はすぐさまそう言った。

美弥は警視庁がどこまでの情報を知っているかどうかを知りたかったので、ちょうど良い機会と思った。

「父から昨日、たくさん情報を聞いたから警視庁に行く前にカフェとかでその情報を共有するよ。」

恵都はそう言った。

カフェで恵都が共有した情報には、特に美弥が恐る必要のあるものは無かった。

警視庁の聞き込みに対応してくれたのは、28歳の湯瀬俊だった。美弥はかなり童顔刑事に見えた。

「湯瀬です。どうぞよろしく。」

湯瀬の目先が美弥の方にいった。

「君、もしかして数年前に100万円を拾って届けてくれた子?」

「はい!そうです。」

「あっやっぱりそうだよね!久しぶり!あのとき落とし主はすごく君に感謝してしたよ。」

「そうなんですね。良かったです。」

もちろん美弥は湯瀬刑事のことを覚えていなかった。美弥は小さい頃からお団子をしているという特徴は変わらないとはいえ、湯瀬は記憶力が異常にすぐれていると思った。警察だったら年に何百人もの人と接しているのに。

「みんな、お茶かコーヒーどっちがいい?」

美弥以外はコーヒーを選択した。

「実はね、まだ有力と言える情報は掴めていないんだ。でも、我々が気になったのはアプリ名のAsヒ素と、Cherry。犯人はヒ素とさくらんぼに関係しているという可能性を考えたよ。」

「でも、犯人がヒントになってしまうことを公表しますか?」

恵都が言う。

「でも、映画やドラマの世界を参考にして考えると、ヒ素とCherryは何か意味があるんじゃないかな?」

優香が反論する。

「俺は優香と湯瀬さんと同じ考え。俺の推理では、犯人は盗んだ金でヒ素を購入し、さくらんぼ農園にばら撒くんだ!」

(こんな馬鹿が本当に金白学園高校受かったのか!?)

「それはない。」

湯瀬、優香、恵都、美弥の4人が口をそろえてそう言った。

「で、今後さくらんぼ農園と化学物質を扱う会社に聞き込みに行く予定なんだ。怪しい客がいなかったかを。」

「俺らも一緒に行ってもいいですか?」

「もちろん。じゃあ早速今週末に行こう。僕と恵都くんと奏太くんはさくらんぼ農園へ、美弥さんと優香さんは化学物質の会社に行くことにしよう。」

2時間くらい話をした。もう、空は暗くなっていた。そして警察署を出るときに、優香が指名手配犯のポスターを見つけた。

「この人めっちゃイケメンなんだけど。」

優香が指をさした先には、半年前に強盗殺人を犯して逃走中の21歳の五十嵐そら。

「この人、けっこう可愛いかも。」

奏太が指をさした先には半年前に強盗殺人を犯して逃走した21歳の風見日向。

「おいおい、お前ら犯罪者を好きになっちゃうのかよ。」

恵都はそう言った。

ポスターの話題で3人が盛り上がっている最中、美弥は少し離れて1人で床に座り込んでいた。実は、美弥はけっこう前から腹痛を我慢していた。消費期限切れのパンを食べたせいか、昨日からお腹の調子が悪かった。湯瀬との話が終わってすぐにトイレに行く予定だったが、あいにくトイレは空いていなかった。空くのを待っている最中、立っているのも苦痛だったので座り込んでいた。トイレが空いたのを確認すると、美弥は

「トイレに寄って帰るから、3人で先に帰ってて!」

と言い捨ててトイレに駆け込んだ。

15分くらい経ってトイレから出てくると、ちょうど奏太から電話がきた。

「情報の整理や計画を立てたいから、北葛公園に来て!すぐ解散するから。」

美弥の返事も聞かずに電話は切られてしまった。

テストも近くないし、大事な予定もなかったので、北葛公園に向かった。


先に3人が公園に着いた。ベンチで話す予定だったが、ベンチには先客が居た。仕方なく、花壇に座って話をし始めた。ベンチには若い男女が座っていた。カップルと思ったが、全然いちゃついていない。奏太が気になってよく見てみると、お金を計算している。

優香と恵都も気になって2人の会話に耳を傾けた。

「五十嵐‥‥‥あの家‥‥金が‥‥」

「風見、‥‥殺‥‥な‥‥」

完璧に聞き取ることはできなかったが、唯一「五十嵐」と「風見」だけは聞き取れた。

(五十嵐と風見、?聞き覚えがあるぞ! あっ!さっきのポスター!)

3人は同時にそう気づいた。

「おい、あの2人‥」

「まさか‥」

「俺ら、探偵チーム光が犯人を捕まえるチャンスだぜ。見た感じ武器は持ってなさそうだし、2対3だからきっと大丈夫だ。」

「お、おい北野!相手は殺人犯かもしれないんだぞ!」

恵都が止める間もなく奏太が立ち上がり、2人の方へ向かう。奏太は昔から、危険を顧みずに行動する癖があった。2人との距離が5mを切ると、男女はこちらの存在に気づいてすぐにベンチから立ち上がって逃げ出した。

「おい、ちょっと待て!」

奏太は2人を追いかける。慌てて恵都と優香も奏太について走り出した。

男女が逃げた先は、公園の隣の大型駐車場。そこの3階まで上がり、男女は停めてある黒い車に向かって走っていた。偶然、3階には一台しか車は駐車されていなかった。

車まで残り30mくらいになった所でやっと、奏太は女性の方に追いついた。そして奏太は女性の腕を掴んだ。女性が声を出さずに抵抗したので、そのまま押し倒して馬乗りになった。

「風見!」

男は女の上に乗っている奏太を思い切り突き飛ばした。奏太は激しく壁に背中を打ちつけた。幸い、かなり痛いで済んだ。

それでも奏太は諦めずに男女を捕まえようとした。先に女が車に乗り込んでいて、奏太を突き飛ばしてすぐに男も車に乗り込もうとしたが、奏太はすぐに起き上がったので、男が車に入る直前に腕を掴んだ。

「てめぇしつこいんだよ!」

男は縄を取り出し、奏太の体に巻きつけた。奏太は抵抗したが、男の方が体格が強かったので、ひたすら暴れることしか出来なかった。腕と足を縛られ、ガムテープで口を塞がれた。そして、車に押し込まれた。

「奏太くん!」

「北野!!」

優香と恵都が必死に奏太を助け出そうとするが、女が優香を、男が恵都を縛り、2人を無理矢理車に乗せた。そして、車は3人を乗せて駐車場を去った。

数十分後、車は人気のない廃校にたどり着いた。男女は奏太達を降ろし、台車で3人を体育倉庫まで運んだ。

「五十嵐、こいつらをどうする?」

「倉庫に捨ててすぐに逃げよう。鍵は壊れてるから、どうにかして倉庫から出られなくしよう。数日で餓死してくれるはずだ。」

その会話を聞いていた3人は涙目になっていた。

それでも奏太はガムテープの下で何か言っている。男がガムテープを剥がすと、

「この人殺し!早く俺らを解放しろ!」

(アホか!挑発したら今すぐに殺されるかもしれないだろ!)

その瞬間男女の顔は険しくなったが、どこも痛めつけられることはなかった。

「五十嵐、この女の子2万円も持ってる!」

「そうそう、俺たちの逃亡の邪魔をしたお礼に金を頂くんだった。」

五十嵐は恵都と奏太のポケットをあさり、現金を全て奪った。

五十嵐と風見は30分くらいかけて3人をかなり頑丈に縛り、動けないことを確認して倉庫を出ていこうとしたその瞬間!

「3人を離して。」

冷静な声がした。そこにいる5人は声のした方向をいっせいに見た。美弥だ。

「お前は誰だ?」

「その3人の、、、えっと、クラスメイト。」

美弥はそこでどうしても友達と言うことが出来なかった。

「位置情報を追跡して、レンタル自転車でここにたどり着いた。」

そう、美弥は公園に着いて3人がいないとわかった時、3人から美弥への嫌がらせと思っていた。そして、探偵チームを抜けることを伝えに行くために位置情報を調べた。

「自首したら?殺人って時効がないし、死ぬまで逃げ続けるのはかなり困難だと思うよ。」

このとき美弥は、自分も犯罪者ということを忘れていた。

「こいつも一緒に縛ろう。」

風見が縄を持って美弥に近づいていくと、美弥は勢いをつけて走りだし、風見に両足蹴りをした。

「自首するって言うならあなたは蹴られなかったのに。」

風見が倒れかかると、今度は五十嵐が

「風見、下がってろ。」

五十嵐が美弥の方に向かってきた。美弥は近くの長い鉄パイプを取って構え、戦闘準備を整えた。そして、五十嵐に向かって猪突猛進した。

五十嵐は慌てて近くにあった掃除用のモップを手に取り、美弥の鉄パイプに対抗した。

最初に美弥が鉄パイプで五十嵐の頭を狙う。五十嵐は驚異の反射神経でモップで鉄パイプをはじく。弾いたときの爆音の直後、美弥はカッターを床に落とし、足で奏太に届けた。

「私は大丈夫だから、ここから先に逃げて、警察を呼んで!」

カッターで奏太が一番に縄を解き、その後に優香と恵都も縄を解けた。

その後も美弥優勢で戦闘が進んでいた。

「美弥、すぐに助けを呼ぶから!」

そう言いながら3人は倉庫を出て行った。


1時間近く経って、倉庫に3人と警察が来た。しかし倉庫には誰もいない。3人は、美弥が殺されてどこかに運ばれたのかと思い、涙が溢れそうになった。しかし、すぐに美弥が校門の外から走って来た。

「ごめん、犯人を追いかけていたけど逃げられちゃった。」

美弥はかなり息を切らしていた。

「良かった!美弥ちゃん無事だった!」

優香はこのとき初めて美弥を下の名前で呼んだ。

奏太と恵都も安心していた。

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