協力者、現れる
「驚かせてごめん、僕は君を逮捕してもらうために来たのではないよ。」
「え、?じゃあどうして?」
美弥は咄嗟にタメ口になってしまった。
「君が姉を殺した犯人でないことは分かっている。ただAsという名前に引っかかってて、何か意味があってヒ素という名前にしたんだろ?」
「話したら長くなるんですが、今から6年前、私が小学4年生だった頃‥」
美弥は涙をこらえて話し始めた。
美弥は小学生の頃にも、人間の友達がいなかった。でも、猫の友達はいた。自宅のマンションでは動物を飼うことができないので、美弥自身がその猫の友達に会いに行っていた。人気のない古びた倉庫に、1匹の野良猫が住みついていた。学校帰りに偶然見つけ、お腹を空かせていたようなので、毎日欠かさずに餌を与えに行っていた。初めは猫に警戒されていたが、だんだんとなついてくれるようになった。そして、チェリーと名付けた。美弥もチェリーが好きになった。その日の学校の出来事や悩みを話したり、親と喧嘩をしたら味方をしてくれているように思った。
しかし、5年生になってすぐの5月にいつものように餌を与えに行ってみると、倉庫の隅にチェリーがぐったりして横たわっていた。美弥は急いで駆け寄る。何回名前を呼んでも動かない。体が冷たくなっていた。もう、死んでいた。昨日まで元気だったのにどうして。美弥は涙が止まらなかった。
(殺されたのか、?)
公衆電話で警察に通報し警察は来てくれたが、人間が殺された訳でもないし、捜査はしないと言われてしまった。その後チェリーの遺骨をもらい自分で調べてみると、そこからヒ素が検出された。
翌年スマホを持ち、SNSを始めたので
「私の大事な友達である猫が何者かに毒殺されました。許せません。警察はまともに捜査してくれないし。この社会はおかしい」
と呟いた。すると、美弥に対して誹謗中傷がたくさんきた。
「猫ごときで騒ぎすぎ。」
「あんたもしかして猫の友達いないの?ウケるw」
「投稿者のお前が殺したんじゃないの?」
など。拡散されて、笑い者にされた。
美弥は国民に対しても怒りを感じた。大切なものを失った気持ちが分かっていない愚かな人々に仕返しがしたい。ただ、人を殺すことだけは絶対に出来なかった。
人を傷つけずに社会に復讐する方法を必死に考えた。
そして、考えた結果お金を奪うことに決めた。だって、命に比べたらお金なんて価値はないも同然だもの。
美弥は話し終えると頬に涙が流れていた。
「僕の姉が死んだときも、僕に誹謗中傷が来たよ。本当は今僕が警察を呼ばなければならないが、精神的にそれは出来ない。君は時効が成立するまでは警戒して暮らさなければならないが、それを乗り越えられてからは、是非普通の女性として幸せに生きていてほしい。」
「はい。」
美弥はかすれた声でそう言った。
「それともう1つ。猫を失って悲しいのは十分わかるが、君の味方になってくれる人間は絶対にいる。」
「いいえ、絶対にいません!この世の全員、私のことが嫌いなんですよ!」
「君は今、自分から壁を作っているからそう感じるだけだ。魚心あれば水心とあるように、相手を大切にすれば相手は自分を大切にしてくれる。だから、これからは友達を大切にすること。」
美弥は言い返すことが出来なかった。
「じゃあ、また明日。」
赤坂はそう言って出て行った。




