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500兆円事件〜時効まで、あと10年〜  作者: 名無し


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悪霧

【時効まで、あと4年】


美弥は大学3年生になった。

そして、五十嵐と風見が釈放された。


「おかえりなさい。」


第二の家で美弥は笑顔で2人を出迎えた。


「げっ、クソガキもいたか‥」

ーーそう、風見は男の子を出産していたのだった。

美弥は2人が逮捕された当時は同情して子の誕生をめでたく思っていたが、美弥は元々は小さい子供が大嫌いだった。

なぜなら、美弥には子供は何考えているかわからないから。


「可愛いだろ!俺たちの子。」


「名前は何にしたの?」


「心と書いてしんだよ。祖母が決めてくれた。」


「いいんじゃないですか。」


美弥は大事なことを言うのを思い出した。


「それで、心に私の正体を言わないでくださいね。子供は正直ですから、バラされてもおかしくありません。」


「呼び捨て!?」


「わかった。言わないでおく。」


「絶対ですよ。一つ言いますが、私は心の世話を一切しませんから、私に預けたりするのはやめてくださいね。」


「いいや、美弥には心の面倒を見てもらう機会は増える。俺は【時効clear】のマネージャーとして働くことになった。風見もいずれはアルバイトをすることになる。」


「大学で忙しいので無理ですね。」


本当はそれが原因ではない。

美弥はいくら風見と五十嵐からのお願いでも、子供の世話だけはやりたくなかった。


「風見だって疲れるんだよ。」


「では、1時間3000円で面倒をみましょう。」


「お前、金なら有り余っているだろ!」


こうして、美弥は五十嵐と風見と無事再会することができた。

ちなみに、この後すぐ2人は結婚し、風見日向は五十嵐日向となった。


五十嵐は刑務所内で時効clearのファンになっていた。

美弥とのラップバトルも聞いていた。

五十嵐は時効clearの主張や歌にかなり助けられていた。

ーー生きるためとはいえ、窃盗をしてはいけなかった。

でも、蝉丸と梅林は五十嵐のことを泥棒ではなく人間として見てくれた。


ーー奏太は他の女をたくさん好きになったと思いきや、美弥を彼女にすることをまだ諦めていなかった。

最近、奏太が連絡なしで家に来る回数が増えてきた。


「美弥、そろそろ結婚する?式場探してみるね〜」


「奏太と結婚したい女は大学に山ほどいるじゃん。」


そう、実際に奏太は金白学園大学で一番モテると言っても過言ではない。

文系女子でさえわざわざ奏太に会いに行っている。


「どうしても美弥がいいんだよ〜」


(中3の9月、あいつと読書感想文を読み合わなければ‥)


「そうだ、今週末に美弥の車で2人でドライブに行こうぜ!」


そう、美弥は車の免許を取っていた。

大学生活に必要ないが、逃走用に必要な時がくるかもしれないと思っていた。


「今週末は用事があるから無理だけど、気が向いたら乗せてあげてもいいよ。」


「最高ー!」


その日、奏太は高テンションで帰っていった。


美弥の車は8人が乗れる大型の黒い車。

高級車を買うと奏太らに怪しまれると思い、割と安い車にした。

美弥は500兆円を全て同じ場所に置かずに自分のマンション、第二の家、銀行、地方の空き家などに分けて置いていた。


ある日、金を置いていた空き家の1つが見つかる危険性が高まったと判断したため、回収して一旦自分のマンションに保管しようと考えた。深夜に自分の車で回収に向かった帰りのことだった。

車で人通りのない道を走っていると、師走が亡くなった場所である例の街灯を通った。もう、師走が亡くなって3年が経つ。


(師走は成仏したかな。夢が叶ったことを伝えてあげよう。)


少し手を合わせていこうと思い、街灯から30メートルほど離れた場所に車を止めた。

もう、血痕は残っていず、枯れた彼岸花だけが置いてあった。


人通りがなく、誰も来ないと思い、車の鍵をかけなかった。

手を合わせ終わり、自分の車に戻ろうとした瞬間、2人の人間が美弥の車に近づいていたのに気づいた。


「誰‥?」


美弥は警戒して、すぐに近づくようにはしなかった。


そして、すぐに2人はドアを開けて乗り込んだ。


「待って!」


その声も届かず、車は走り出した。


(まずい‥あの車には500億円が乗ってる!)


美弥は走り出した。

しかし、かなりの長距離を走ったため、だんだんと追いつけなくなった。

そしてついに、車を見失ってしまった。

かなり呼吸が乱れている。美弥は手を地面についた。


(たったの500億円なくなるのはまだ仕方ないが、私がCherryだとバレるのはなんとしても避けなければ。)


現金で500億円も持っていたら、さすがに怪しまれてしまう。

すぐに美弥は立ち上がり、歩き出した。幸い、一本道が続いていたため、数十分歩くと、ついに自分の車が見えた。

美弥は物陰に隠れた。

怪しげな古びた倉庫のような所に、すでに3人が待機していたようで、5人がかりで金を運んでいた。顔はよく見えない。


(こいつら、何者!?)


500億円全てを運び終えると、車から少し離れた所で何か会話していた。会話の内容はよく聞こえなかった。


(5対1だから、戦ったら確実に私が負ける‥。今は、証拠となってしまう車を取り返すことが最優先だ!)


美弥はすきをみて車に近づき、素早く乗り込んでエンジンをかけた。エンジンの音に5人は気づいたようだったが、お金を全て回収して車には興味がなかったからか、車を取り返そうとはしなかった。


暗くて5人の顔をはっきりと見ることはできなかったが、服に【悪霧】という文字が書いてあるのだけは分かった。


(悪霧って、あの最初の模倣犯!?逮捕されたはずなのに。どうして。)


そう思っているうちに、自分の家に着いた。


(あのとき悪霧が大量殺人に失敗したから、私を恨んでいるのか。私の正体を知っているから後をつけてきたのか。)


しかし、数週間経っても警察が家に来ることも、このことがニュースになることもなかったため、ただお金を取られただけだと美弥は思った。


だが、このとき美弥はまだ知らなかった。これが日本を揺るがす出来事につながるとは。


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