表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
500兆円事件〜時効まで、あと10年〜  作者: 近衛あみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/15

右目

【時効まで、あと7年10ヶ月】

高校2年生の10月だ。高校生活の半分が終わってしまった。さらに、500兆円事件の懸賞金は10億円になった。このことを受けたのか、以前逮捕された模倣犯が仮面を被った美弥の姿を公開してしまった。小型カメラで撮影されていたらしい。でも、美弥は撮影されることを想定して仮面を被ったのだから、何も驚かなかった。

あっという間に仮面の姿が世界中に広まった。

ただ、一つだけ疑問に思ったことがある。それは、美弥のファンがかなりの数いたからだ。ネットニュースでその理由を調べると、巧妙な手口で国民の金を奪う頭脳犯というのがかっこいいと思ったらしい。

再び世界では500兆円事件についての話題で溢れた。

そして、また美弥に冤罪の危機が迫った。

関東を中心に、美弥と似た仮面を被った人間に刃物で刺し殺されるという事件が多数発生していた。

美弥のファンの人たちはこの犯行は模倣犯と信じていたが、やはり一部の人は500兆円事件の犯人の犯行と思っていた。

美弥の仮面は自分で彫刻刀で掘って作ったものだった。表情を今の自分の心情にしたため、笑みが少しもなかった。しかし、唯一模倣犯のミスとしては仮面の表情が少し笑っているところだった。

この自体は自分で何とすることは出来ないと思った。自分でその模倣犯を捕まえると自分も取り調べを受けることになるからだ。したがって、警察が模倣犯を捕まえるしか方法はない。

その頃、学校では

「美弥ー、殺人鬼から守るために俺がボディガードをしてあげようか?」

「結構。」

「そんなこと言うなよ〜、俺は美弥を心配しているんだから。」

「指名手配犯と立ち会った時に分かったでしょ?あんたより私の方が強いし。」

奏太は少し悔しそうな顔をしていた。


その後も模倣犯による被害が増えていき、美弥はついに湯瀬刑事のもとへ行った。

「湯瀬さん、犯人の手がかりは無いんですか?」

「それがね、防犯カメラの映像が途中で切られてしまって、全く進展が無いんだ。」

「殺害される年齢層は?性別は?」

「完全にバラバラ。無差別殺人だと思う。」

(冗談じゃないよ‥万が一自分が捕まったら、時効どころではなく死刑になってしまうよ。)

「でもね、それは500兆円事件の犯人の犯行ではないと思うんだ。」

「ですよね。」

美弥には少し希望の光が見えた。

「以前の模倣犯から預かった映像では身長が160cmほどだったけど、殺人鬼の方は170cmはあるように見える。」


その情報がテレビで流されてからは、模倣犯と信じる人が多くなってきた。

恐ろしいことに、ついにこの町でも被害が出てしまった。

町の小中学校は休校になったが、進学校である金白学園高校では休校にならなかった。

数日後の休日、美弥は欲しい参考書を買うために夕方に隣町に出かけた。参考書を手に入れ、夜は暗くなっていた。美弥の家は駅からほど遠い人通りの少ない住宅街にあった。その時ふと、嫌な予感がした。人の叫び声と足音が聞こえた気がしたからだ。最初は空耳かと思ったが、それは空耳ではなかったらしい。

美弥から少し距離がある街灯の明かりの下に、刃物を持った男と怯えて座っている女性の姿が。さすがの美弥でも、生身の自分が刃物を持った男には勝てないと思い、逃げようとしたところ、男と目が合ってしまった。

①警察に通報する

②すぐに逃げる

この2つの選択肢が頭に浮かんだ。

【①の場合】

通報しても犯人が捕まるか分からない。自分が取り調べを受けて何がバレるか分からない。

どっちにしろ助かる確率 10%


【②の場合】

仮に逃げ切れたとしても、顔を覚えられてしまったらいつ襲ってくるか分からない。

助かる確率 50%

(いや待てよ、私は足に自信があるから、顔を覚えられていなかったら助かる確率が上がる!)

幸い、街灯があるにしてもかなり暗かったため、犯人が自分の顔を認識できていないと思い、今のうちに顔を隠してから逃げようと思った。しかし、問題はどうやって顔を隠すか。マスクや帽子は持っていなかった。

(これしかない‥!)

美弥は自分の仮面を取り出して付け、荷物を投げ出して走り出した。風見と五十嵐のいる第二の家までここから1㎞くらいある。しかし、200mくらい走ったとこで自分のミスに気づいた。

(まずい‥スマホも投げ出してしまっていた。)

あのスマホが警察のもとへいくと、自分が犯人とバレてしまう。犯人が遠くから自分を追っていると思い、回り道をして再びさっきの場所に戻った。

「なっ‥!?」

自分を追いかけていると思っていた犯人が美弥のスマホを持って街灯の下に立っていた。

「お前、何のつもりでやっているんだ?本物のCherryは私だ。」

その言葉を無視して男は

「これ返してほしい?」

そう言いながら、男は自分の仮面を外した。40歳くらいの男だった。

「早く‥返してください。」

思わず敬語になってしまった。

「一つだけ条件がある。」

「何、?」

「仮面の下を見せていただきたい。」

「断る。」

美弥は落ちているガラスを街灯に当て、その光を男の目の方にやった。男は目を抑えて美弥のスマホを落とした。それを素早く拾うと、男から離れた。

「一つだけ聞きたい。お前は何のためにこのようなことをした?罪を擦りつけて自分が無罪になるためか?」

「あなたを、Cherryをおびき寄せるためです。犯行を繰り返していると、あなたが気を悪くして現れると思いました。」

「何!?懸賞金目当てなのか!?」

「いいえ。それと、申し遅れました。私、画家の師走浩二と申します。夢は私の作品が美術館で飾られることです。普段はモデルさんを描いているのですが、最近の子は同じ様な顔で、美術館は私の作品をあまり受け入れてくれませんでした。そこで、Cherryの存在を知り、もしもCherryの素顔を描いたら世界中の美術館で展示してもらえると思ったんです。」

「信じられない。そんな自分勝手な理由で大勢の人を殺していたなんて。」

「私は、癌でもう長くは生きられない。だから、死ぬまでにどうしても夢を叶えたかった。だから、お願いします。仮面の下を見せてください。」

男はかすれた声でそう言った。

「あなたが逮捕された後に私の顔の特徴が知れ渡ったら困るので‥」

この時、男は血混じりの咳をしていた。声がかすれているのは悲しいからなのか、病気だからなのか、美弥にはわからなかった。

そして、男は包丁を自分の胸に突き刺した。

「何やってるの!?」

美弥は倒れこんだ男の元へ駆け寄った。

「これが私の思いの強さです。このままだと、おそらく1時間以内に私は出血死するので、顔を全ては書き終わらないです。死ぬ前にどうしても描きたいんです。どうか、仮面を外してください。」

「‥」

確かに、この出血量だとそう長くは意識が持たないはずだし、この状態で描いたとしても幼稚園児が描いたような絵しか完成しないと思った。さらに、病気なのもあって命は助からないと思い、ついに美弥は仮面を外してしまった。

すぐに男は鉛筆と紙を手に取り、片手で胸を抑えながら震える手で描き始めた。この時、美弥はどんな顔をしていたか覚えていない。

意識が無くなるまでの約20分間で美弥の右目だけが描き終えた。

右目だけだが、その出来は凄かった。絵の右目だけでは美弥と特定することは難しいが、かなり美弥の右目と似ていた。

美弥は警察に通報せずにその場を去って行った。夜が明けた次の日に通行人の通報で遺体が発見された。師走の自宅から遺書が見つかり、殺人は500兆円事件の犯人の犯行ではないことが伝わった。

すぐにその右目の絵は世界中に広まり、東京の有名美術館で展示されることになった。

美弥は自分のせいで大勢の犠牲者を出してしまったと思い、かなり複雑な気持ちになった。犠牲者全員の遺体発見現場と師走のそばに花を供えた。


次の日、美弥は右目に眼帯をして学校に行った。

「美弥ちゃんどうしたの?」

「ものもらいになっちゃって。」

「そうなんだ、お大事にね。」

(幼稚園児レベルの出来になるという読みが外れた。意識がもうろうとしていた中であの出来だったなんて‥)

それから1週間は眼帯を外せなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ