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89話

「じゃあ手順に従って開始して!」



先生の合図で調理を開始する。



「滝本玉ねぎ切れる?」



前の席の奴が俺に聞いてきた。



「俺料理苦手だから無理」

「えー滝本も?」

「だったら私切りますからどいてください」



同じ班の前田さんが場を仕切る。


俺は玉ねぎの皮を剥きながら蓮を観察する。



「黒澤くんその指だと危ないって!指は猫にしてやるって先生言ってたでしょ!怖い怖い!そんな切り方だとツルって滑っちゃうから!ちょっと不器用すぎ!怖いからもう私やるから皮剥いて!」



同じ班の女に怒られてる蓮が可愛くて思わず笑う。



「何笑ってんだよ」



口パクで俺に抗議する蓮。



「バーカ」



口パクで返す俺。


たったこれだけでも幸せを感じる。



「玉ねぎ炒めるくらいできるでしょ」

「そのくらいだったら」



前田さんに言われてフライパンで玉ねぎを炒める。



「滝本くんって本当に料理できない?」

「…なんで?」

「料理できない人って普通あんな感じでしょ」



前田さんの視線の先には蓮。


フライパンから若干煙が出てる!しかも焦げ臭い!



「…ぷっ」

「ちゃんと教えてあげたらいんじゃない?」

「えっなに?」

「滝本君料理できるでしょ?仲良いなら料理くらい教えてあげなよ、黒澤君があまりに不器用だから周りの女子の母性本能くすぐりまくってるよ」

「へっ?」



蓮以外に目を向けてみると女子もだけど男子まで母性本能をくすぐられまくっていた。



「まぁ不器用な人ってなんか可愛いもんね」



その言葉で知ってしまった前田さんの気持ち。



「前田さんも……なんでもない」

「何?言いかけてやめるとか気になるから」

「勘違いだったらっ」

「勘違いだから」

「……えっ」

「尚、火傷した」

「はあ!?どこ!!」

「指」

「お前料理できねぇんだからやんなよ」

「料理覚えたくて」

「言っただろお前は料理しなくていいって」

「でも尚ばっかりっ」

「お前がやると火傷したり仕事が増え痛っ!」



なぜか前田さんに肘打ちされた。


ビックリしている蓮。



「滝本君ちょっといい?」



前田さんと少し移動する。



「言葉とかもっと気をつけて」

「…は?なに?」

「やっとくっついたんじゃないの?そんな冷たい事ばっかり言ってたらすぐに捨てられちゃうよ?」

「………えっ!はあ!?」

「とにかくもっと相手を思って優しくね」



前田さんは俺を置いて元居た場所に戻った。


暗い表情の蓮と戸惑う俺の目が合う。

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