83話
そのまま俺の腕を引いて歩きだす。
「バイバイ言わなくてっ」
「大丈夫でしょ」
「でもっ」
「早く話したいから」
しばらく歩いたところで手は解放された。
「俺ん家でいい?」
「うっうん」
「誰も取って食ったりしないから」
「別に誰もそんな心配してねぇから」
「そっか」
いつもどんな話してるっけ?
緊張し過ぎていつもがわからなくなった俺。
「ねぇ!あの人カッコいい!」
通り過ぎた女が隣の女に蓮を見ながら小声で話す。
真っ白の頭でも嫉妬は覚えているらしい。
「殴っていい?」
「は?なんで?」
「顔ボコボコにしたい」
「意味わからん過ぎて怖いって」
「ムカつく」
「なに?マジで意味わからんって」
好きな男がイケメンすぎてしんどい。
蓮の家に着くまでずっと情緒不安定だった俺。
ガチャガチャ……
「昨日ぶりお邪魔しまーす」
蓮より先に玄関に入り靴を脱ぐ。
「尚」
「ん?なに?」
「さっきから何怒ってんだよ」
「……べつにっ」
ドンッ……
壁に押し倒された俺。
「言わないとわかんないから」
「……大したことじゃっ」
「尚にとっては大したことなんだろ?」
「…別に……何でもない」
言えない。
通りすがりの女が蓮を見てカッコいいって言っただけで嫉妬してずっと怒ってるなんて恥ずかしくて言えない。
自分でも十分痛い奴だってわかってる。
だから本人には余計言えない。
「喧嘩したくないんだけど」
「これは喧嘩ってゆうかっ」
「尚が嫌な気持ちになるような事はしたくない」
蓮が真剣な顔で俺を見つめる。
「俺が尚に何かしたんだったら次はしないようにしたいんだよ」
俺は自分を守る事しか考えてなくて本当に情けない。
「……違う」
「ん?…違う?」
「蓮が何かやったとかじゃなくて……俺が…………嫉妬してるだけ」
「…………嫉妬?」
「だから嫉妬しただけなんだって」
「……えっ………誰に?いつ?」
きっと今過去を振り返っているであろう顔の蓮。
「思い出してもわかんないよ絶対」
「いつ?拓哉か塁?」
「違う」
「……あの店員か」
「違う…けど思い出したあれもだ」
「あれはタイミングがっ」
「わかってる…だから今度から外でウインク禁止」
蓮が少し笑った。
「何が面白いんだよ」
「面白くて笑ったんじゃないから」
「じゃあっ」
「他は?何に嫉妬したわけ?」
こんな時でも蓮がかっこよくてドキドキしている俺。




