66話
玄関で靴を履いた彼女さんと塁が向かい合う。
塁の後に立つ拓哉。
その後ろから蓮と隼人さんの間に立つ俺が見守る。
「見送ってくれてありがとう」
「うまくフォローできたらよかったんですけど」
「全然、私1人だったら腹立ちすぎて拓哉殺してっ」
「は?」
「あのさぁ、会話に入ってこないでくれる?」
「お前っ」
「別れた途端にお前呼び?最低」
「ぁあ?お前がっ」
「拓哉、もうやめとけって」
塁が振り返り拓哉を睨む。
「なんで美奈ばっかりかばうんだよ」
拓哉が小声で淋しそうに言った。
「拓哉の彼女やってましたけど愛された事ないので何も参考にはならないと思いますけど助言します」
「はい」
「拓哉にどれだけ愛されても受け取らない方がいいと思います、人に優しくできない、嫉妬深い、思いやりがないクズでバカで最低な男なので」
「そうですね、でも美奈さんには優しさがあったんじゃないかな?バカな男なので勘違いしちゃうんですよ、美奈さんにとってあれが1番なんだって」
「あれ?あれって何ですか?」
「でも違いますよね、そんな態度とられても簡単には嫌いになんかなれないですよね」
「…………それは…」
「不器用な男の優しさなので許してやってください」
「………そうですね…塁さんに免じて許します」
笑顔を見せた彼女。
チッ……
舌打ちをしながら横に向けた拓哉の顔がなんとなく嬉しそうに見えたのは気のせいか?
「では、みなさんお騒がせしました」
頭を下げる彼女。
「誰か送らせようか」
「じゃあ塁っ」
「は?それは無理」
「じゃあ必要ないでーすバーカ」
「夜道危ないし俺っ」
「マジでそろそろキレるよ俺」
送ろうと言いそうな塁を拓哉が止めた。
「迎えの車が待ってるので大丈夫です」
「そうなんですか?」
「拓哉の送らせるってのは車までの話なので」
心配性すぎるだろ。
「あーあ!何で拓哉じゃなくて塁さんと先に出会わなかったんだろ!先に出会ってたら絶対に塁さんの事好きになってたのに!」
「は?絶対そんなの許さん」
「拓哉の許可は必要ありません、あっまだ遅くないか!今から塁さん推しになろうかな!」
「俺も悪い男かもしれませんよ?」
「そんな顔するなんて塁さんも悪い男ですね」
拓哉が後ろからそっと塁の服を引っ張った。
「拓哉」
彼女に呼ばれて拓哉は手を離す。
「なんだよ」
「さっさとしないと塁さん誰かにっ」
「もう俺のだから大丈夫」
自慢げに彼女を見る拓哉。
「うざ、もう帰る」
「おう、ありがとな」
「じゃあね」
頭を深々と下げて彼女は玄関を出て行った。




