65話
コンコンコン…
「隼人です、美奈さんがお付きになりました」
「行く」
誰も何も言わずドアを見つめる。
「よし、行こう」
拓哉の声を聞いてみんなが立ち上がり部屋を出る。
「こちらにどうぞ」
玄関に近い部屋に通された。
「拓哉!」
蓮の背中で見えないけど可愛らしい声が聞こえた。
先頭から順番に座っていって俺は彼女の真横。
………気まずい。
「今お茶をっ」
「必要ない、すぐ帰ってもらうから」
拓哉の冷たい声で今にも泣きそうな横顔。
「それで?会って話したい事は?」
「私…………やっぱりっ」
「あれだけ言われてまだわかんないかな、美奈の事1度も好きって思った事ないんだって、好きな人の恋人でいたい気持ち美奈だったらわかるでしょ」
「わかるよ……わかるから拓哉の傍にっ」
「好きでもない奴がずっと恋人面して傍にいたら嫌だろ、キモいだろ、迷惑だろ」
「拓哉、言い過ぎだろ」
塁が拓哉を止めた。
下を向いたままの彼女さん。
「隼人さん、ハンカチか何かお持ちですか?」
塁が隼人さんに話しかけた。
「そんなの貸す必要ない」
拓哉が隼人さんを見る。
「承知いたしました、塁さん、すみません」
「はぁ…拓哉、もっと優しくっ」
「なんで、優しくする意味ないだろ」
塁は立ち上がり棚がある方に歩いて行く。
「どこ行くんだよ」
「ティッシュ取るだけだろ」
棚の上にあったティッシュを手に取り戻って来た。
「これ使って」
「あっありがっ」
「俺だけにしてその優しさ」
拓哉の言葉を聞いて彼女さんが勢いよく拓哉を見た。
「なんだよ」
「……もしかしっ」
「だったら?なに」
ビックリした表情のまま彼女さんは塁に視線を移す。
「ティッシュどうぞ」
塁がティッシュを彼女さんに差し出す。
「ありがとうございます」
「拓哉、傷つけたんだしもっと優しくしろよ」
「優しくする必要ないじゃん」
「わかってた事なんです一緒に居る時もずっと誰かを思ってる顔してたから…それでも彼女でいたかった……でもダメですね…拓哉があなたを好きな理由、私じゃ敵わない理由がわかった気がします」
拓哉は黙って2人を見ている。
「もうわかったろ」
「うん、もう解放してあげる」
「隼人、玄関まて送っ」
「見送ってくれるなら彼がいい」
拓哉の彼女さんは塁を指名した。
「…….は?無理」
「拓哉の意見は聞いてない、こっちは別れてあげたんだからそっちも1つくらい私の言う事聞きなさいよねバカ」
彼女が豹変した。
「絶対無理」
「拓哉、送るだけだから」
塁が拓哉を説得する。
「無理」
「そんな小さい男だと相手されないんじゃない?」
「は?今何っ」
「私帰るから見送ってください」
塁の腕を掴んで歩き出す彼女さん。
拓哉も立ち上がり玄関に向かう。
その後を蓮と俺と隼人さんが追った。




