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55話

「…塁……無理しなくていいよ俺の前では」



トイレを過ぎた廊下の端で庭を見ながら2人で座る。



「なんか………もう…ね…………」



塁の目からは今にも涙がこぼれ落ちそうだった。



「あのさぁ……2人って気持ちっ」

「知ってる」

「……だよね」

「さっき風呂で途中まで確かめ合ったけど拓哉には彼女いるし、こんな身近に拓哉の事思ってる人がいたとか知らなかったし、俺じゃなくていいじゃん」

「………塁……」

「俺と同じくらい拓哉の事思ってて俺より強くて傍で拓哉守れて、この気持ちは誰にも負けないって思ってたけど違ったみたいだし……俺もう拓哉の事っ」

「なに勝手な事言ってんの」



振り返ると拓哉が腕組みをして立っている。



「別に何もっ」

「なに勝手な事言ってんのって言ったんだけど」



ゆっくり歩き始めた拓哉。


見えてきた顔は怒りに満ちている。



「拓哉が怒れる立場じゃないだろ」



塁を守るために声をかけた。



「俺を嫌いになるって?」



塁の傍まで来ると立膝をついて座った。



「別に俺じゃなくてっ」

「だったらお前以外全部捨てる」

「は?何言っ」

「隼人は兄弟みたいに育ったって言ったろ、俺の気持ち全部知ってるから、俺がお前の事ずっと好きだった事、お前を傷つけたくなくて彼女作った事、だから俺が消えろって言ったらあいつは喜んで消える」

「違うよ、隼人さんは拓哉の事好きっ」

「あいつは塁に嫉妬させたくてわざと変な言い方したり俺らの間に入ったりしてただけだから」

「……そんな事わかんなっ」

「俺も可愛い塁見たくてわざと皿渡したりした」

「はあ?」

「それは謝る、ごめん」

「そんな事今さっ」

「遅くない、何も遅くない、俺は塁が好きだ、風呂でも言ったしさっきも言ったけど俺はずっと塁の事が好きだ、だから誰にも渡さないしどこにも行かせない」

「勝手な事っ」

「勝手で何が悪いんだよ、やっと手に入れた1番欲しかったもの簡単に手放すわけないだろ」

「俺はもうっ」

「じゃあ今すぐ監禁する」

「何言っ」

「本気だけど」



沈黙が流れる。



「風呂の時わかんなかった?あれだけじゃわかんなかった?どんだけ好きかわかんなかった?」

「それはっ」

「じゃあ今すぐわからせてやるよ」



拓哉が塁の後頭部に手を回してキスをした。


………………………チュッ…………


…チュッ……クチュ…チュピ…………クチュ………


触れるだけのキスからお互いの唇を食べ始めたと思ったら時々舌が絡んでいるのが見える。


こっこここれがふふ深いキッキキキス!?


拓哉が塁を押し倒した。



「拓哉、待っ」

「待てない」

「拓哉には彼女っ」

「別れた、当たり前だろ、塁が手に入るのに彼女なんかいらないから、お前が欲しい」

「別れた?でも隼人さんも本当に拓哉の事好きっ」

「隼人のタイプじゃないから俺」

「………本当に?」

「イケメンで優しい王子様が自分を迎えに来てくれるって昔からずっっっと言ってるし、俺はイケメンじゃないらしいし、優しくもないらしいし、全然王子様じゃないらしいよ」

「ふっ確かに」

「何笑ってんだよ」

「でも俺には王子様に見えるけどな」

「塁だけでいんだよ俺は」

「なんか拓哉可愛い」

「は?マジで襲うぞ」

「ごめんごめん」

「それに蓮に恋したって言ってた」

「尚かなり警戒してたね」

「隼人綺麗だからなぁ、恋を知らない人が恋を知ったらどうなるんだろな、グイグイアピールすんのかな」

「尚に伝えないとね」

「大丈夫全部聞いてましたから」

「「はっ!!」」



2人が化け物でも見たような顔で俺を見ている。


ええ、最初から居ましたよ俺。

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