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化け物と呼ばれた少女は、殺した少女と愛を知るお話!!  作者: ポルチーニアツオ
1章 起動

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残響

第4話「残響」。


ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。


この回は、ただの戦いではなく“その奥にあるもの”を描きたくて書きました。

壊れてしまった感情と、それに触れてしまった優実の選択。


少しでも何か心に残るものがあれば嬉しいです。

そしてここから物語は、新しい世界へと動き出します。

 「終わった?」


 優実の声が、静まり返った空間に落ちる。


 地面に倒れている“それ”はもう動かない、さっきまで暴れていたのが嘘みたいに、ただ転がっているだけの塊になっていた。


 「ほんとに?」


 自分で言っておきながら、優実は一歩も近づけない。


 その時だった、


 ――ドクン。


 空気を強く脈打つ音が、そこに響く。


 倒れていた体が、まだ何かの無念を残したかの様に、ゆっくりと持ち上がる。


 胸の奥から黒いものが溢れ出し、内側から押し上げるように膨れ上がっていく。


 「何これ、嘘でしょ」


 次の瞬間


 「ァァァァァッ!!」


 叫びと同時に地面を強く叩きつけると、大きなヒビが入り、衝撃が走る。


 “それ“の叫び声は、優実の視界を揺らし、耳を塞ぐ。


 強すぎるその声は、優実の脳に意図せず何かを流しこむ。


 “なに、これ?“


 ハッと気づいた時には景色が変わっていた。


 「レイン」


 女性の優しい声で名前を呼ぶ声が聞こえ前をよく見ると、

 綺麗な女性に手を引かれている男が見える。


 その男は右手で手を引かれていて、左手には少女が手を伸ばしながら、一生懸命に手を握ったいた。


 暖かいはずの景色なのに、どこか歪んでいる。


 その時、少女が何かを落とすところが見えると、場面が変わる。


 「なんでそんなこと!」


 レインの怒りの言葉が少女に向けられている途中で、言葉が止まる。


 そんなレインと少女のやり取りを、囲うように見ている無数の人たち、その無数の人達は誰も責めず、誰も怒らない、ただ同じ顔で笑って見守っている。


 「何よこいつら、気持ち悪い」


 レインだけが浮いているのだけがみて伝わる。


 また場面が切り替わる。


 月明かり光る夜の池に、水面を見つめる様にレイン一人が座っていて、水面をずっと見ているがその顔に笑顔はない。


 目が沈んでいる。


 「なんでだ」

 

 レインの戸惑いや、怒り、悲しみの混じった声が漏れる。


 そんなレインの後ろからまたあの少女が現れる。


 「パパ!何してるの!帰ろ!」


 そう言って少女はレインの手を握り、走り出す。

 

 娘に引かれる自信の手を、見つめるレイン。


 けれど次の瞬間その手は離され、別の誰かへ渡される。


 また場面が変わる。


 「待ってくれ」


 体を動かそうとしても動けないし、逃げられないのが分かる。


 ジリジリと音を立てる炎の音が耳に響く。


 縛られたまま見上げると、レインの娘が笑ってレインを見つめている。


 その時優実は、レインの記憶に入り込んでいた事に気づく。

 

 「だいじょうぶだよ」


 レインの娘は笑顔で、炎が灯る木を持って近づいてくる。


 近づく火は優実の肌を本当に焼く様に、近づくにつれて、熱さが伝わる。


 目覚めようと必死に抗うが、何も変わらない。


 少女は笑顔のままレインの体に火を近づける。


 なんの躊躇いもなく、寧ろ父を、レインを救う様に火を付けた。


 「やめてくれ、頼む、そんな事やめてくれ!!!」


 「ダメ!!ダメェ!!」


 レインと優実の心の声が響いた。


 ――


 その時視界が戻ると、目の前にいるのは“レインだったもの”。


 レインの体から燃え盛る様に炎がが滲み出し、火に包まれた右腕を優実に向ける。


 「なんでぇ!なんでぇだぁぁぁ!」


 火に包まれながらも、レインは叫びながら優実に向けた右腕を、振り下ろす。


 振り下ろした右腕から、柱状の炎が飛んでくる。


 「危なっ!」


 優実は咄嗟に避けるが、避けたその炎は、地面を焼きながら広がっていき、何も物など無いはずの辺りをどんどんと燃やしていく。


 逃げなきゃ、そう思うのに震える足が言う事を聞かない。


 「来る」


 その時、隣から突然聞こえる貞美の低い声。


 次の瞬間には、貞美の体から放たれた影が炎の間に割り込むと、炎の軌道は影を避ける様に歪む。


 「遅い」


 貞美が影で炎に対抗をするが、炎は消えず優実の方に飛んでくる。


 炎は優実の腕の横を僅かにかすると、腕をじわじわと焼いた。


 「痛い」


 痛みに悶える優実。


 「なんでだよ!」


 それでも叫び続けるレイン。


 その言葉に呼応するように、炎はさらに膨れ上がる。


 “怖い“


 震える手、


 “だけど、それでも“


 火傷を負った右腕を強く握りしめて、痛みを堪える。


 「まだ...終わってない」


 自分でもなぜだか分からないが、その時“ある事を閃いた優実。


 その作戦しかないと思った途端、一歩ずつ炎に包まれるレインの体へ、真っ直ぐ歩き出す。


 「何してる!」


 そんな様子を見て、貞美は慌てた声で優実に話す。


 そんな声が聞こえるわけもなく、止まることなく近づく。


 黒く澱んだ光に包まれたレインに必死に手を伸ばす。


 近づくにつれて、全身が炎に包まれ、身体中を焼かれる思いの中で、レインの中の何かを手探りで探す。


 “あと少し、あと少し“


 その思いで、ひたすらに探したその時、


 “掴んだ!“


 焼ける熱さに、悍ましい感情の波に、悲鳴を上げ、暴れ回るレインだが、それでも核をつかみ離さない優実。


 その瞬間、優実が先程見ていたレインの記憶が、今度はレインにも逆流する。


 見せられていたものが“思い出”に変わる。


 炎が揺らぎ、動きが少し止まると、その奥で、


 「なんであの時」


 レインの崩れかけの声が漏れる。


 「なんで…なんで……」


 怒りが、痛みに変わっていく。


 「もういい」


 静かな声と共に、貞美が前に出る。


 「……クル」


 俯きながら呟いた瞬間、空間は歪み、辺りは薄暗くなり、レインの横に井戸が現れる。


 今度ははっきりと、そこにある。


 レインの体が引きずられていく。


 抵抗もなく、諦めているわけでもなく、ただ、沈んでいく。


 炎が消える。


 消えていくレインの歪んでいた形が一瞬だけ戻る。


 手を伸ばしている。


 届かないと分かっているのに、それでも掴もうとしている。


 「……ありがとう」


 かすかな声が聞こえると、井戸と共に消えた。


 静寂が落ちる。


 「終わった……」


 優実が呟く。


 ふと落ち着ちつくと頬に違和感、触れると濡れている。


 「……あれ……」


 涙だった。


 気づかないうちに流れていたそれを、ただ見つめる。


 少し離れた場所で、貞美がその様子を見ていた。


 ほんの一瞬だけ向けた視線はすぐに外れる。


 その時だった。


 ――バチンッと強い音と共に、足元の空間が裂ける。


 「え、ちょ、なにこれ!?」


 足場が消えて、落ちていく。


 いや、落ちている感覚がない。


 体が浮いていて、どこにも触れていない。


 「なにこれ……!?」


 横を見ると、貞美も流されている。


 髪が揺れているのに風はない。


 何もない空間を、どこかへ運ばれている。


 その先に光、小さかったそれがどんどん大きくなる。


 「――っ」


 光がすべてを覆い、目を細める。


 そして、次に目を開けた時には、見たことのない景色が広がっていた。


 遠くに並ぶ建物、見慣れない構造。


 静かで、それでいて確かに“人の気配”がある。


 「……なに、ここ……」


 知らないはずなのに、ここが“どこかへ繋がっている”と、直感だけが告げていた。

第4話まで読んでいただき、本当にありがとうございます。


この回は特に感情を込めて書いた回なので、何か心に残るものがあれば嬉しいです。


ここから物語はさらに広がっていきます。

まだまだここからが本番です。


もしよろしければ、評価・ブックマーク・感想などで応援していただけると本当に励みになります!


これからも全力で書いていきますので、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
レインと過去に何があったのか? とてもミステリアスな作りで、興味を牽引する力がある構成ですね〜。 (・∀・) レイン周りの続きが気になるところですけど、物語は一旦ゆっくりになるのかな? 次話で触れる…
xからきました。 めちゃくちゃ雰囲気あってよかったです。 最初のアプリのくだりでもう不穏なのに、死んだ後に貞美と再会する流れがかなり引き強いです。 怖さだけじゃなくて、怪異側にも何かありそうって見せ方…
怪異とのバディものという設定がまずめちゃくちゃ面白いと感じました。 単なる戦闘ではなく、“呪い”のようなもので敵を倒していくのでしょうか? だが相手は自分を呪い殺した相手。 そんな相手とどのような…
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