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化け物と呼ばれた少女は、殺した少女と愛を知るお話!!  作者: ポルチーニアツオ
1章 起動

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侵蝕

壊れた“それ”との初めての戦い。

優実の力、そして貞美の本質が少しずつ明らかになります。


ぜひ楽しんで読んでください!

 歪んでいる。


 目の前の“それ”は人の形をしているはずなのに、どこかが決定的におかしかった。

 輪郭が揺れ、立っているのに地に足がついていないようで、顔があるのにどこを見ているのか分からない。


 胸の奥が、ざわつく優実。


 「何なのよあれ」


 優実の声はかすれていた。


 “それ”はゆっくりと首を傾けると、ぎこちない動きで優実の方を向く。

 その瞬間、背筋に冷たいものが走った。

 見られているんじゃない、引き寄せられている。


 次の瞬間、地面を抉るような勢いで“それ”が飛び出した。


 速い、理解が追いつく前に目の前まで迫る。


 「やばっ」


 逃げなきゃいけないのに足が動かず、体が強張って言うことを聞かない。


 その横を黒い影がするりとすり抜けた。


 「下がってて」


 低く静かな声、貞美だった。


 その一言と同時に空気がわずかに歪み、“それ”の動きが一瞬だけズレ、噛み合っていた距離が狂う。


 貞美は前に出ると迷いなく“それ”を見据えた。


 「邪魔」


 ぽつりと落ちた言葉と同時に、睨みつけながら、左腕をを“それ“に向けて上げると、周りを囲む空間がひび割れるように揺れ、“それ”は悶え始める。


 だが次の瞬間。


 「アアァァッ!!」


 叫びとも呻きともつかない音を上げて暴れ出す、抑えきれない何かが内側から溢れているようだった。


 貞美は視線を逸らさずに呟く。


 「もう壊れてる」


 その言葉と同時に、“それ”が再び優実へ向かい全速力で走ってくる。

 迷いがなく、まるで優実の何かに引き寄せられるように一心不乱に走ってくる。


 “こっちを、狙ってる“


 理由は分からない、ただ優実には確信があった。

 考えている間に、“それ“がもう向かってきていた。


 避けようとして、間に合わない。


 その瞬間、目の前まで来ていた“それ“に無意識に手が伸び、指先が触れた。


 触れた瞬間に、優実の頭の奥に、何かが一気に流れ込んでくる。


 暗い景色、揺れる炎、その奥にいくつもの人影が見える。

 ひとり、ふたりじゃない、大勢の人間がそこに立っていて、誰もが穏やかな顔で、まるで何事もないかのように笑っている中で、それは焼かれている。

 逃げ場もなく縛り付けられたまま、ただ燃えていく。


 「なんで」


 低い声が、心の奥で響く。


 「なんで、お前達はわからないんだ」


 優しくされるほど、苦しくなり、笑われるほど、否定をされる。


 その中で一人だけ、その男は取り残されている。


 怖い。


 苦しい。


 助けて。


 それは優実の声じゃない、目の前の“それ”の、奥底に残った声。


 「この人!」


 優実の視界が揺れる中で、見えてきたのは、その男の胸の奥に、ひび割れた“核”が見えた。

 黒く濁り、溢れ出し、今にも砕け散りそうなそれが、確かにそこにあった。


 「そこ!」


 攻撃を仕掛ける貞美に対して思わず叫ぶ、優実の声に呼応して、“それ”の動きが止まる。


 ほんの一瞬、完全な隙が生まれると、貞美の目が細くなる。


 それに対して右手を挙げて構えを取る貞美。


 透き通るような綺麗な髪がするりと落ちると、隠れていた左目が露わになる。


 空気が、冷たく、重く、底へ沈むように変わる。


 長い黒髪がゆっくりと伸びていき、足元へ、地面へと影のように広がっていく。


 優実は息を呑んだ。


 さっきまでと、明らかに違い、見覚えのある貞美の容姿に変わる。


 「クル」


 貞美の小さな声、それだけで空間が軋む。


 “それ”の体がびくりと震えた。

 理解しているわけじゃない、それでもその音に抗えないように反応している。


 貞美がゆっくりと、距離を詰める。


 「こっち、見て」


 その声は逃げ道を奪い、視線が引き寄せられ、逸らせない、閉じられない。


 ただ、見せられる。


 「もう...来てるよ」


 囁きが落ちた瞬間、世界が崩れ、足元が沈み、光が消え、音が遠ざかる。


 底のない闇の中、ぽつりと“井戸“だけがそこにある。


 現れた井戸に“それ”の体がゆっくりと引きずられていく。


 抗おうとする動きすら、もう意味を持たず、気づいた時には半分沈む。


 優実はただ横からその光景を見ることしかできなかった。


 “あと少しで、完全に落ちる“


 そう思った時、その直前で動きが止まった。


 貞美の肩がわずかに揺れると、井戸の形が徐々に崩れる。


 貞美の作り出した空間が不安定に揺れ、井戸がどんどん崩れ始める。


 「まだ...まだ足りない」


 低く掠れた声と共に、世界が元に戻った。


 “それ”は地面に叩きつけられたまま、そのまま動かなくなる。


 だが、優実にはしっかり見えていた。

 “それ“の胸の奥で、ひび割れた“核”が、かすかに脈打っているのが。


 “まだ、終わっていない“


 「これってさ」


 優実の声が震える。


 「人、だったんじゃないの?」


 貞美は何も返さず、ただ静かに髪を戻すと、元の綺麗な容姿に戻り、何もなかったかのように目を伏せていた。

第3話「侵蝕」を読んでいただき、本当にありがとうございます。


ここまで読んでくださった方、一人一人に感謝しています。

少しでも「続きが気になる」と思っていただけたら嬉しいです。


これから物語はさらに深く、そして大きく動いていきますので、ぜひ見届けていただけると嬉しいです。


もしよろしければ、評価・ブックマーク・感想などで応援していただけるととても励みになります!


これからもよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
かなりの異形だなぁ。 井戸も出て来て完全にホラーテイストで戦闘へ突入していきましたが、どんな決着になるのかとハラハラしました。 (・∀・) 一旦は退いてくれた? まだ世界がどうなっているのか分からな…
井戸出たーー! と、つい興奮してしまいました。
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