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感情が禁じられた世界で、私を殺した怪異となんだかんだで旅してます!  作者: ポルチーニアツオ
2章 静寂の楽園

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異物

第6話です。


今回は「違和感」をメインにした回になります。


少しずつですが、この世界の“おかしさ”と、

そこにある空気感を感じてもらえたら嬉しいです。


そして新しいキャラも登場します。

優実との掛け合いも楽しんでもらえたらと思います。


ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 

 村の中に足を踏み入れてから、しばらく優実は落ち着かないまま歩き続けていた。


 「……ねえ」


 小さく隣に声をかける。


 「なんかさ、やっぱり変だよねここ」


 返事はないと分かっていても聞いてしまう。貞美は前を見たまま歩き、ほんのわずかに視線だけが揺れて周囲をなぞるように動いた。それだけでなぜか少し安心する。


 (あ、この人も何か感じてるんだ)


 優実は息を吐き、もう一度周りを見る。


 村の人たちは相変わらず穏やかで、誰も怒らず焦らず困らず、その“同じ状態”がずっと続いている。


 「……いや、やっぱ変だって」


 その時だった、少し先で子供が転ぶのが見える。


 「あっ」


 思わず声が込み上げる、でもそれと同時に違和感が優実を襲う。


 膝を打ったはずなのに、その子は泣かないままゆっくり起き上がり、口元だけで笑い、目はそのまま――何事もなかったように。


 近くの大人も同じ顔で手を差し伸べ、同じ角度で笑い、そのまま子供も同じように歩き出していく。


 「……え」


 優実の足が止まる。


 「痛くないの……?」


 届くはずもない距離に向けて呟くが、返るのはやっぱり笑顔だけ。


 笑っている、みんな同じように、同じ形で。


 「……ねえ」


 少しだけ声が真剣になる。


 「ここ、本当に大丈夫なとこ……?」


 隣の貞美を見るが何も言わない。ただその瞳だけがわずかに鋭くなり、それを見て優実は息を飲む。


 (やっぱり……何かある)


 その瞬間、背中にぞわりとした感覚が襲う。


 “見られている“


 振り返るが誰もいない。それでも確かに“いた”。


 (気のせい……じゃないよね)


 優実は無意識に貞美の少し後ろへ寄る。視線が一瞬だけ向けられるが拒まれはせず、それだけで少し安心する。


 「……なんか、やだなここ」


 空気は綺麗なのに息苦しく、音はあるはずなのに妙に静かで、世界が少しズレているように感じる。


 しばらく無言で貞美の背中に隠れるように歩いたあと優実は立ち止まり、振り返る。


 「……ねえ、さっきからさ、見られてる気しない?」


 風が揺れる。その中に“何か”が混じっている気がした。


 「……ああ」


 背後から震え気味の声が落ちる。


 優実が振り向くより先に、その声は続いた。


 「いるぞ」


 低い声。今初めて聞く声だった。


 「――えっ!?」


 振り向いた瞬間、そこにいた。


 黒い影が、当たり前みたいに立っている。気配も音もなかったのに。


 「……あんたら、他の村から来たでしょ」


 その声の主が、静かに言う。


 優実の思考が止まる。


 「え、ちょ、え!?いつからいたの!?」


 慌てて距離を取る。


 「ずっといた」


 間を置かず返ってくる。


 「絶対嘘でしょ今の!」


 即座にツッコむ。


 「……気づかなかったお前が悪い」


 「いやそれ無理でしょ!?」


 息を荒くしながら、優実はその黒い存在を見つめる。


 ――ふと、口をついた。


 「あんたさ……他の種族?のよりやけに黒くない?」


 「失礼な」


 ぴしりとした声が返る。


 「私は誇り高き黒い戦士の一族だぞ!」


 わずかに胸を張るような仕草。


 「いやそこ誇るとこ!?」


 ほんの一瞬、空気が緩むと、黒い奴の口元が、ほんのわずかにだけ微笑んだ。


 「……で何なのあんた、まさかまた襲われるなんて...」


 「やっと気づいたか」


「え!?」


 咄嗟にその発言を聞いて身構えてしまう。


 黒い奴はそんな優実を置いて、ゆっくりと周囲を見渡し、


 「ここ、おかしいって」


 静かに言い切った。


 (あ、そっち...ってあんたもだよ!!)


 「だってさ、さっきから変なんだよ。あの人たちも、あなたも獣人っていうか……人じゃないのに普通にいてさ、でもみんな同じ顔で笑ってて」


 言葉が追いつかないまま続ける。


 「なのに、なんか怖くて……」


 黒い奴は少しだけ優実を見る。


 「見えてる側だな」


 「え?」


 意味は分からないが、否定もできない。


 「……まあいい」


 視線を外すそれに対して


 「ちょ、待ってって!」


 優実が慌てて声をかける。


 「なんなのここ!?なんで皆んなあんな感じなの!?」


 矢継ぎ早に問いかけるが、


 「……そのうち分かる」


 淡々と返される。


 「いや分かんないから聞いてるんだけど!?」


 思わずツッコむと、


 「……面白いな、お前、久々に楽しい会話をした気がするよ」


 今度ははっきりと、わずかに口元が動いた。


 「は?」


 「普通は気づかない」


 そう言って黒い奴は貞美へ視線を向けると、一瞬だけ空気が変わる。


 「……そっちも、か」


 小さく呟く。


 貞美は何も答えず、その視線を静かに受け止めていた。


 優実には分からない何かがそこにある。


 けれど、それは自分だけじゃない、それだけは分かった。


 「……ねえ、教えてよ。ここ、なんなの?」


 まっすぐその黒い奴を見る。


 風が静かに流れ、少しの沈黙のあと、


 「……ヨルだ」


 短く名乗った。


 「……ヨル?」


 「名前」


 それだけ言ってから、少しだけ視線を逸らす。


 「それで」


 優実たちを見て、静かに続けた。


 「お前ら、この後何か予定でもあるのか?」


 「……え?」


 予想していなかった言葉に、優実は言葉を詰まらせる。


 どうするか?そんなこと、考えるも何もわからないしかなかった。


 「……確かに」


 ぽつりと漏れる。


 「どうしよ……」


 さっきまでの違和感とは別の意味で、立ち止まる優実を見ると、ヨルは少しだけ周囲を見渡し、


 「……ここで話すのはやめとけ、あまりに目立つ」


 小さく呟く。


 その言葉に、優実は思わず周りを見ると、やはり同じように笑う村人たち。


 「……じゃあ、どこで」


 「来い!」


 それだけ言って、ヨルは踵を返す。


 音もなく、自然に人の流れから外れていく。


 優実は一瞬迷い、隣を見てもやはり、貞美は何も言わない。


 けれど同時に止めもしない。


 「……行くしかないか」


 小さく呟き、優実はその背中を追って歩き出すと、後を少し離れて貞美も歩き出す。


 この村の“違和感”の先へ。

今回も読んでいただきありがとうございます!!

新キャラのヨル!これからヨルがどんな物語のスパイスになるかは続きを読んで楽しんでいただけたら嬉しいです!!


高評価、ブックマーク、感想等々お待ちしております!!


今回も改めて読んでいただきありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
謎は次回へお預けですな。 汚れのない作り物めいた街と、人形じみた同じ笑顔の住人たち。 何となく即席で作られた街のような印象があります。 誰が作ったのか、どうして作ったのか、色んな謎があって良いですね〜…
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