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私優実は、自分を殺した呪いの存在『貞美』となんでか異世界にて旅に出てます!!  作者: ポルチーニアツオ
3章 巨大樹の共和国

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オーク三兄弟

 『オーク三兄弟』です!


 ヨルの修行編が終わり、今回から優実とノエルの修行編がスタートします。


 新たな師匠として現れたのは、シエラが信頼を寄せる三人のオーク兄弟。


 見た目は怖いのに、どこか個性豊かな三兄弟との出会いをぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです!


お楽しみください!

 優実とノエルの修行二日目の朝。


 優実とノエルは昨日シエラに言われた通り、朝一番からノクス調律国の訓練所へ向かっていた。


 朝日が差し込み、広い訓練場では兵士たちがすでに木剣を振り、槍を構え、それぞれの鍛錬を始めている。


 その光景を横目に歩きながら、優実は大きなため息をついた。


 「今日も正座だったら私、本気で逃げるからね」


 下向きに話す優実をみて、ノエルは思わず吹き出す。


 「昨日ちゃんと最後まで座れなかったもんね優実」


 「だって足の感覚なくなったんだもん! あれ修行じゃなくて拷問でしょ!」


 そんな会話をしていると、言われていた訓練所についた。


 そこは昨日とは違い。壁は高く聳え立ち、天井は吹き抜けになっていて、何より物凄く広かった。


 「なんかここデカくない??」


 「シエラさんに昨日言われたのはここなんですが」


 優実同様に少し困惑しているノエル。


 「僕もここの場所は知ってますが、普通の兵士でもここで訓練することなんてよっぽどないはずなんですけど」


 辺りをよく見ていると、大きな壁には数々の壁画が彫られていた。


 それをノエルと黙って歩きながら見る優実。


 そこで一つ目に留まる。


 「ねぇ、ノエル」


 立ち止まる二人、その前には一際大きく、戦士のような勇者のような絵が彫られていた。


 「なんかこの人の絵だけすごい特別な感じがする」


 優実のポロっと溢れた言葉にノエルがご満悦に返す。


 「いい所に目が行くね優実」


 「これはノアレムナント様」


 「俺たちの住むこのエルドレアの国を作ってくれた最初の漂着者であり、始祖の勇者とまで言われてる人なんだ」


 「漂着者ってなんか私達も言われた気がする…」


 「ガルドさんから聞いたよ、優実達も漂着者なんだもんね」


 「何なの?その漂着者って」


 優実の質問が続いた。


 「俺もよくは知らないけど、ただ漂着者が現れる時はここエルドレアの変化が起きる時って聞いた」


 「何それ!意味わかんな!」


 優実の能天気な返事に少し笑うノエル。


 「それは俺のセリフだよ、漂着者がこの家に来るって聞いてどんなのが来るかと思ったら……さ?」


 「何だって言いたいのよ!」


 そんな会話をしていると


 「待たせたなお前達」


 入口からシエラがゆっくり歩いて来る。


 優実はすぐに気付き、大きく手を振る。


 「シエラさん!」


 シエラは二人の前まで来ると、小さく息を吐いた。


 「二人とも遅れてすまない、少し準備があってな」


 優実は待ってましたと言わんばかりに身を乗り出す。


 「今日から何するんですか!? 正座はもう嫌ですよ!」


 シエラは真顔のまま答えた。


 「ちなみに言うと、昨日の正座は半分おふざけだ」


 一瞬、空気が止まる。


 「…………え?」


 二人の脳裏におふざけだというシエラの言葉が、何度も響く。


 「ふざけてたんですかぁぁぁ!?」


 大きな声を出した後、優実はその場へ崩れ落ちる。


 「返してください……私の昨日」


 ノエルは笑いをこらえきれず、お腹を抱えて笑っていた。


 シエラも小さく口元を緩める。


 「半分だけな」


 「半分でも十分ひどいですぅぅ!」


 優実が涙目で抗議すると、シエラはくすりと笑った。


 しばらく笑い声が響いたあと、シエラの表情が少しだけ変わる。


 優実もその変化に気付き、姿勢を正した。


 「シエラさん?」


 シエラは二人を見つめる。


 「お前たち二人には申し訳ない、修行は私が見てやると言った」


 少し間を置いて続ける。


 「だが、私も少し忙しくなってしまってな」


 優実は首を傾げた。


 「忙しい?」


 それと同時に前夜のノエルの言葉を思い出す。


 “あの人は忙しい“


 ノエルも少し不安そうにシエラを見る。


 「しばらく修行を直接見ることができそうにない」


 その言葉に優実の表情が少し曇る。


 「えぇ〜」


 昨日助けてもらい、修行まで見てもらえると思っていた相手だったシエラなだけに、少しだけ寂しさが胸をよぎる。


 そんな二人を見て、シエラは静かに言った。


 「だが安心しろ」


 「エルドレア最強のシエラさんだ」


 「お前たちを放っておくつもりはない」


 「いらない前書き…」


 漏らす優実に肩を小突くノエル。


 そう言って、シエラは二人の後ろへ視線を向けた。


 次の瞬間だった。


 ドシン。


 ドシン。


 ドシン。


 地面を震わせるような重い足音が、大きな訓練場全体へと響き渡る。


 優実とノエルはゆっくり振り返る。


 そこには二メートルを超える巨大な体格をした三人のオークが並んで立っていた。


 朝日を背にしたその姿は圧倒的で、まるで大きな壁が歩いてきたようだった。


 優実は思わず一歩後ろへ下がる。


 「で、でで、でかっ……!」


 オーク達の顔を見渡して一言。


 「顔こわっ!!」


 ノエルも少し後ろに下がる。


 「もしかして…この人?達と修行するの?」


 優実とノエルが少しだけ静かになるが、気にする様子もなく、シエラは一歩前へ出た。


 「紹介しよう」


 少し間を置く。


 「私専用の騎士兼肉壁、オーク三兄弟だ」


 三人は軽く頭を下げ、シエラは真顔のまま続けた。


 「名前は、バカ、ボケ、ザコだ」


 名前を聞いた途端、一瞬時間が止まる。


 優実とノエルは顔を見合わせ、静かな空気がその場を包んだ


 「え?」


 数秒の沈黙の後、一番左に立っていたオークが、小さくため息をついた。


 「だから違います、シエラさん」


 見た目からは、想像のつかない穏やかな声だった。


 怒っているというより、困っているような優しい口調で答えた左のオークは


 「この三兄弟の長男で、名前はバルガスです」


 と続けた。


 その言葉を聞いて、シエラは思い出したように頷く。


 「あーそうだったな、悪かった悪かった」


 まるで反省していないどころか、少しニヤついた返事だった。


 そんなシエラを見て、バルガスは額へ手を当てる。


 「毎回これでは困りますよ」


 やれやれとした表情を見て、優実はノエルへ小声で話す。


 「なんかこのバルガスさん、見た目より怖くなさそうだね」


 ノエルもこくこく頷く。


 「確かに」


 シエラはニヤニヤしながら言う。


 「覚えやすいからいいだろ」


 バルガスは少しだけ声を強めた。


 「覚えやすさの問題ではありません!」


 「まぁそう怒るな」


 どうやら昔から何度も繰り返してきた恒例のやり取りらしく、その姿に優実は思わず笑ってしまう。


 「仲いいんだね、みんな」


 その横から大きな影がぬっと前へ出てくるや、満面の笑みで優実とノエルにその大きな手を振る。


 「おりはまんながのボルドだ!」


 優実はぱっと表情を明るくする。


 「なんかすごい優しそう!」


 ボルドは嬉しそうに目を輝かせ、にっこり笑った。


 「ほんどにか!」


 勢いよく優実へ手を差し出す。


 「よろしく!」


 満面の笑みのボルドの差し出す大きな掌に優実も笑顔で手を伸ばす。


 「よろし…」


 ミシッ!!


 「いったぁぁぁぁ!!」


 優実の悲鳴が訓練場中へ響き渡り、ボルドは慌てて手を離す。


 「あああ!! ごめん!!軽く握ったつもりだったのに!」


 優実は涙目で手を押さえる。


 「全然軽くじゃない!!」


 そんな優実を見て、ボルドは本気でオロオロし始めた。


 「いた、痛がったか?」


 ノエルは思わず吹き出し、バルガスはまた大きなため息をつく。


 「だから加減してくださいと昨日あんなに言いましたよね、ボルド」


 ボルドはしょんぼり肩を落とす。


 「難しい……」


 最後に、一番後ろに立っていたオークが静かに一歩前へ出た。


 少しだけ頭を下げる。


 「僕は…グランです」


 優実はその顔を見て


 「やっぱり顔こわ!」


 グランの表情が止まり、静かに視線を逸らした。


 そんなグランを見てボルドは慌てて笑う。


 「あー! まだ言われた!」


 バルガスは苦笑しながら優実へ向き直る。


 「優実さん、グランは昔から顔が怖いと言われ続けてきたんです」


 優実はハッとする。


 「えっ!? ご、ごめん!!」


 グランは少し困ったように笑った。


 「もう少しだけ、優しく言ってあげてください」


 その笑顔を見た優実は目を丸くする。


 「あれ?笑ったら全然怖くないじゃん!」


 その言葉を聞いて、グランは少し照れて顔を逸らす。


 「あ…ありがとうございます」


 ボルドはニヤニヤグランの肩を小突く。


 「照れるなよグラン!」


 グランはすぐに否定する。


 「照れてません!」


 バルガスも小さく笑っていた。


 そんな三兄弟の空気に、優実とノエルも自然と笑顔になっていた。


 その空気を見届けるように、シエラが一歩前へ出ると、笑い声が止まり、場の空気が引き締まる。


 「遊びはここまでだ」


 全員の視線がシエラへ集まる。


 「今日からお前たち二人の修行は、この三人が担当する」


 シエラは順番に三人を見る。


 「バルガス、修行全体の監督を任せる」


 バルガスは膝をつき


 「承知しました」


 執事の様にすらっと答えた。


 「ボルド、お前はノエルの修行を頼む」


 ボルドは元気よく拳を握る。


 「まがせてください!」


 「間違っても殺すなよ」


 ノエルは少し不安そうに笑う。


 最後にシエラはグランを見る。


 「グラン!」


 「分かっていると思うが、優実の担当だ」


 優実とグランの視線が初めて真っ直ぐ交わり、グランは優しく頭を下げた。


 「よろしくお願いします」


 優実も笑顔で頭を下げる。


 「よろしく!優しくしてね!」


 二人は静かに握手を交わすと、シエラはその姿を見届け、小さく頷いた。


 「なら私はここらでお暇するとしようか」


 優実は慌てて声を上げる。


 「シエラさん! また見に来てくださいね!」


 ノエルも続ける。


 「ありがとうございました!」


 シエラは振り返ることなく片手だけ軽く上げる。


 「お前たちに、あとは任せたぞ」


 そう言って歩き出すと、少し離れたところで、一瞬だけ足を止める。


 (頼んだぞ、三人とも)


 誰にも聞こえない、シエラの心の声に、訓練場では、バルガスがシエラの方を見ることもなく、小さく口を開いた。


 「お任せください、シエラさん」


 優実は首を傾げる。


 「え?」


 ノエルも不思議そうに辺りを見回した。


 「今、何て話したの?」


 バルガスは何事もなかったように優しく笑う。


 「いえ、何でもありません、さぁ修行を始めましょう!!」


 シエラは歩みを止めることなく、そのまま訓練場を後にした。


 優実はそのどこか急いでいるようにも見える背中を、不思議そうに見つめる。


 こうして優実とノエル、そしてオーク三兄弟との新たな修行が幕を開けた。


 今回も読んでいただきありがとうございます!!


 オーク三兄弟、各々の個性が光る三人と始めるこれからの修行の展開をぜひ楽しんで読んで頂ければ嬉しいです!


 高評価、感想、ブックマーク等々ぜひお待ちしております!

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