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化け物と呼ばれ続けた貞美、呪いで殺した貴方と愛を知る旅に出ます!  作者: ポルチーニアツオ
3章 巨大樹の共和国

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揺らす一撃

 今回も読んでいただきありがとうございます!


 楽しんで読んでいただけたら嬉しいです!!


 ヨルはまだセレネの弓を握ったまま、小さく息を整えていると、ライデルはどこか嬉しそうな声で笑いかけてくる。


 【よし!もう話は終わりだ!じゃあ早速一発撃ってみろ!】


 突然の言葉にヨルは思わず苦笑する。


 「こんなフラフラで、いきなりかよ」


 そう呟くと、ヨルはガルドへ視線を向ける。


 「なぁ、ガルド、弓の中のライデルが早速撃ってみろって言うんだが、どこで撃てばいい?」


 ガルドは少し驚いたように目を細める。


 「その弓の中の者はライデル、というのだな」


 ヨルが頷くと、ガルドはヨルの顔色を見ながら静かに口を開く。


 「そんなフラフラのお前で本当に大丈夫なのか?」


 ヨルは苦笑しながら肩を竦める。


 「俺もそう思う、けどな」


 ライデルはすぐに口を挟む。


 【うるせぇな!何ビビってんだよ!一発くらい死なねぇから早く撃ってみろよ!】


 「いやいや、当の本人のお前が言うなよ」


 ガルドは思わず小さく笑う。


 「まぁそんなけ吠えれるならいい、ついて来い」


 武器庫奥の射場へ移ると、そこには巨大な的がいくつも並び、壁は何重もの石で補強されていた。


 ガルドはゆっくりと振り返る。


 「ここは弓を主に練習する場だ」


 「ここなら問題ないだろう」


 ライデルは待ちきれない様子で叫ぶ。 


 【よしヨル!まずは普通に引いてみろ!】


 ガルドに練習場用の矢の束を渡されると、的に対して決められた位置まで案内される。


 「最初ならここからだろう」


 線が引かれているが、その線の位置にヨルは違和感を覚えた。


 「なぁガルド、いくら何でもここは近すぎやしねぇか?」


 「お前は分かっとらんな、弓を引くというのはそんな簡単なものではないぞ」


 ヨルの目を真っ直ぐ見て言ってくるガルドに、少し怖気付くヨル。


 【まぁまぁヨル、わがまま言わずとりあえず打ってみろって!】


 「分かったよ...」


 不貞腐れながらも、深呼吸をして、ゆっくりと弓を構えるヨル。


 ギリギリと音を立てる弓、意外にも簡単に弦は引けた。


 「あれ?案外こんなもんなのか?」


 ライデルは笑う。


 【そこまでは普通なんだよ】


 ヨルはそのまま一旦指を離そうとするが、しかし。


 弦はまるで誰かに掴まれているかのように微動だにしない。


 「え?」


 もう一度力を込めて放すが、それでも放てない。

 

 「何だこれ?全然打てる気配がねぇぞ」


 ライデルに問いかけるが、だんまりを決め込むライデル。


 そのままヨルは何度も何度も引いてみるが、指を離そうとしても弦はびくともしない。


 それに集中しているせいか、何だか頭がフラフラしてくる。


 「どうなってんだ!!このポンコツ弓!」


 ヨルの大きな声が漏れると、ライデルは腹を抱えて笑い出す。


 【はははは!!】


 「何笑ってんだよ、非力で悪かったな!」


 少し強めに返すヨル。


 【実はさ、それ...】


 【俺が止めてる】


 ヨルは思わず叫ぶ。


 「お前が犯人かよ!」


 ライデルは笑いながら言う。


 【悪いが俺は普通の弓じゃねぇんだ、筋力だけじゃ俺は撃てねぇよ】


 「何だよそれ、ならどうやって打つんだ?」


 【俺はなこの弓ごと、魂も引くんだ】


 ヨルは首を傾げる。


 「魂?またそれか」


 【俺がヨルの魂を喰らいこの弓で生きるように、打つ時もまた、魂を喰うって事だ】


 フラフラのヨルはため息混じりに返す。


 「ならどうやって吸わせればいいんだ?」


 【とりあえず、もう一回引いてみろ】


 ライデルの言われたまま、ヨルはもう一度弓を引く。


 すると今度は胸の奥から何かを吸い上げられるような違和感が身体中を駆け巡る。


 息が少しずつ苦しくなり、足が震え始めるヨルに、ガルドはすぐ気付き声を掛ける。


 「無理はするなよ」

 

 ヨルは歯を食いしばる。


 「まだ……!」


 ライデルは静かに言う。


 【貸せ】


 「貸す?」


 【お前の体が無意識に抵抗している】


 「そういうもんなのか?」


 【防衛本能みたいなもんだ】


 「なら俺はどうすればいい?」


 【一度深呼吸をして肩の力を抜け、後は俺に任せる様に体を委ねてみるんだ】


 「よく分かんないが、やってみるしかねぇか...」


 【大丈夫だ、俺を信じろ】


 その言葉にヨルは黙って、言われた通り深呼吸をする。


 目の前の朽ちた弓を見て、肩の力を抜く。


 まだ出会ったばかり、何者かも分からない、それでも。


 「分かった」


 その一言と共に弓を強く握り締めると、次の瞬間、枝がゆっくりと緑色を取り戻し始める。


 朽ちていた木肌に命が宿るように光が走り出すと同時に、ヨルの意識が薄れていく。


 【今だ!!】


 ライデルの強い言葉が響く。


 【撃てぇぇぇぇ!!】


 ヨルは全身の力を振り絞り、弦から指を離した。


 次の瞬間――。


 ドゴォォォォォンッ!!!


 轟音と共に放たれた一矢は、空気を裂きながら一直線に飛び出すと、的を易々と貫き、その奥の分厚い石壁すら粉々に砕きながら突き抜けた。


 その衝撃は練習場だけでは収まらず


 ゴゴゴゴゴゴ……!!


 建物全体が大きく揺れ、壁が軋み、天井から砂埃が舞い落ちる。


 棚に並ぶ無数の武器が激しく音を立て、一斉に揺れ始める。


 その光景を目の当たりにしたガルドは、思わず目を見開き、言葉を失った。


 それはまるで巨大な魔獣が建物へ体当たりでもしたかのような衝撃だった。


 一方、ヨルはふらりと一歩踏み出す。


 「やべ、何だこの感覚...」


 ライデルは苦笑する。


 【悪い悪い】


 【久々だったから、ちょっと張り切りすぎたら、吸い過ぎたみてぇだ】


 ヨルは苦笑しながら言い返す。


 「ちょっとじゃ……ねぇ……。」


 【ゴメン⭐︎】


 ふざけたライデルの言葉を最後に、意識が遠のき、前のめりに倒れるヨル。


 そんな倒れるヨルを、ガルドはすぐに受け止める。


 静かな武器庫、ライデルも少しだけ申し訳なさそうに黙る。


 ガルドは眠るヨルを見つめ、小さく笑う。


 「なかなか手間のかかる奴に選ばれたんだな」


 そう呟くと、ガルドはヨルを背負い、弓をその腕に抱えさせる。


 「だいぶ早いが、今日はもう終わりだな」


 そう言って歩き出そうとした、その時、気絶しているはずのヨルが、無意識のうちに弓をぎゅっと抱き寄せた。


 ガルドはその姿を見て、静かに目を細める。


 「……そうか」


 そのまま静かに武器庫を後にする。


 今回も読んで頂きありがとうございます!!


 ヨルとライデルその二人の放つ一矢は代償共に、強烈なものでした。


 こんな二人のこれからと共に、次回からは優実の修行編です!


 この後も楽しく読んでいただけたら嬉しいです!


 高評価、感想等々是非お待ちしております!

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