それぞれの一日
皆、それぞれ修行や出来事を終え、ようやく一日が終わりを迎えます。
何気ない食卓、何気ない会話。
でも、そんな時間だからこそ少しずつ縮まっていく距離があります。
今回はそんな、三人の「それぞれの一日」のお話です!
ぜひ楽しんで読んで頂ければ幸いです!
夕暮れ時、ノクスの街は家から溢れる温かい光に包まれ始めていた。
ガルドとの修行を終えたヨルは、大きく肩を回しながらリアナの家へ戻ってきた。
「いてて…初日からこれかよ」
腕も足も泥だらけ、服もあちこち破れ、全身が痛む。
「一本も取れなかったなぁ」
ヨルが今日のことを振り返り弱音を溢すと、隣を歩くガルドは鼻を鳴らした。
「一本取れるようなら、とっくに修行は終わりだ」
「それもそうだけどさぁ」
そんな話をしながら家へ近付くと、玄関先には見覚えのある二人が立っていた。
「ヨル!」
足をガクガク振るわせた優実が、こちらへ手を振り、その横ではノエルも壁へ寄りかかって待っていた。
「うわっ!? あんためちゃくちゃボロボロじゃん!」
ヨルも冷静に優実を上から下へと見るなり目を丸くする。
「いやいや、それお前が言うか!?」
優実も決して無事な訳がなく、足はまだ震え、歩き方もぎこちない。
「正座だよ!」
「は?」
「正座!」
「いや修行じゃねぇじゃん!」
ヨルが思わず吹き出すと、優実は頬を膨らませた。
「ちゃんと修行だから!」
横からノエルが呆れたようにため息を吐く。
「そこだけ聞くと誤解されますよ」
「じゃあノエルが代わりに説明して!」
「正座してました!」
「ちゃんとしなさいよ!」
三人のやり取りを聞いていたガルドは、小さく笑うこともなく荷物を玄関へ置いた。
「元気だなお前達」
その一言だけだったが、どこか玄関前の空気は穏やかだった。
「ただいま〜」
そんな時、聞き慣れたリアナの声が聞こえ、全員が振り返る。
そこには買い物袋に沢山の食料をパンパンにして歩くリアナと、その少し後ろを、貞美がゆっくり歩いていた。
背中には、小さく寝息を立てるエナ。
「すぅ……すぅ……」
三人の動きが同時に止まる。
「え?」 「え?」 「え?」
三人が同時に驚きの声を漏らす。
「貞美がおんぶ?」
ヨルも思わず聞き返す。
「エナ寝てるし」
ノエルまで驚きを隠せない。
貞美は少しだけモジモジして目を逸らす。
「気づいたら寝てた...」
その姿を見たヨルは、少しだけ口元を緩める。
「似合ってるじゃん」
貞美は一瞬だけ驚き、小さく首を傾げた。
「そ...そう?」
その一言だけで、優実も自然と笑顔になり、リアナも優しく笑った。
「今日はいっぱい遊んでもらっちゃったのよ〜」
「そうなんだ」
優実は眠っているエナの寝顔を覗き込む。
「ぐっすりだね」
「いっぱいはしゃいだからねぇ」
リアナは微笑みながら玄関を開ける。
「さぁ、みんな入って入って!今日は腕によりをかけて作るからね〜」
その言葉にヨルのお腹が盛大に鳴った。
グゥゥゥ……
一瞬静まり返ったあと、優実が吹き出す。
「ヨル、お腹正直すぎ!」
「しょうがねぇだろ!修行で腹減ったんだから!」
「私も何だけどね〜」
笑い声が家の中へ広がっていき、皆が荷物を置くと、リアナは早速台所へ向かった。
「みんな座って待っててね〜」
するとヨルが立ち上がる。
「俺も何かやりましょうか?」
リアナは嬉しそうに振り返った。
「ありがとう。でも今日はゆっくりしてなさい」
「でも…」
「いっぱい修行してきたんでしょ?」
「それはそうだけど」
そこへ優実も立ち上がる。
「じゃあじゃあ私も手伝います!」
「お前!ずるいやつめ!」
「優実ちゃんも今日はお客さんなんだから、無理しなくていいのよ」
「えぇ〜!」
優実が肩を落とす横を、貞美が静かに通り過ぎた。
何も言わず、食器を手に取り、皆の座るテーブルに並べ始め、その姿を見たリアナは驚いたように目を丸くした。
「ありがとう、貞美ちゃん」
貞美は小さく頷く。
「うん」
しばらくして料理が並び始めると、温かな湯気といい匂いが部屋いっぱいに広がる。
「できたわよ〜!」
リアナの掛け声に全員が席へ集まり、眠そうに目を擦るエナも起き上がる。
「ごはん?」
「そう、ご飯よ」
「やったー!!ママのご飯だ!」
エナは嬉しそうに席へ座ると、両手を合わせた。
「いただきまーす!」
優実も慌てて続く。
「いただきます!」
ヨルも。
「いただきます」
ノエルも静かに頭を下げ、貞美だけが少し止まり、皆の姿を静かに見渡していると、リアナが優しく微笑んだ。
「貞美ちゃん?」
その声に貞美は小さく手を合わせる。
「……いただきます」
静かなその一言と共に、ようやく全員の食卓が始まった。
料理を口へ運んだ優実の目が、一気に輝く。
「美味しい!」
ヨルも頷く。
「めちゃくちゃ美味い!」
エナは胸を張った。
「お母さんのご飯、世界一なんだから!」
リアナは少し照れながら笑う。
「そんなに褒めても何も出ないわよ〜」
温かな笑い声が食卓を包み、各々が料理を楽しみながら、今日一日の出来事を話し始めた。
その中で、ヨルはふと昼間から気になっていたことを思い出す。
「シエラさんって、そんな強いんだな」
その言葉にノエルは静かに頷いた。
「強いなんてもんじゃありませんよ」
ノエルの言葉に、ヨルも不思議そうに返す。
「でもパッとみた感じは細いし、小柄だし、人間だし、普通に綺麗な女性って感じにしか見えないんだけどな」
ヨルが続ける。
「ならガルドよりも強いのか?」
少しため息気味を吐きながら、ノエルが返す。
「それはもちろんガルドさんも強いです、ただ……シエラさんは別格です」
その言葉にヨルは少し驚く。
「へぇ〜」
「あの人の強さは異次元のレベルです」
「この国でも随一なのは当たり前ですし、アーカディアの連中でさえシエラさんとやり合えるのはかなり数少ないと思います」
今日一日ガルドに叩きのめされ続けたヨルだからこそ、そのガルドより上がいるという事実に素直に驚いていた。
ガルドは湯飲みを手に取り、一口飲む。
「あの人は...特別だ」
短い一言だったが、それだけでし
ヨルは少し考えたあと、もう一つ気になっていたことを口にする。
「ならさ、なんでアーカディアはここを攻めてこねぇんだ?」
今回も読んでいただきありがとうございます!
読んでくれた皆様に少しでもほっこりした気持ちが伝われば嬉しいです!!
そして最後に出てきたアーカディアの謎、そこまでも含めて続きを楽しんで読んで頂ければ嬉しいです!
改めて今回は読んでいただきありがとうございました!
高評価、感想、ブックマーク等々お待ちしております!




