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化け物と呼ばれた少女は、殺した少女と愛を知るお話!!  作者: ポルチーニアツオ
3章 巨大樹の共和国

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私には何もない

 前回、ヨルはガルドとの修行を通して、自分が強くなる理由と向き合いました。


 そしてそれは今度優実の番。


 戦う力を持つヨルやノエル、貞美を見ながら、優実は自分だけが何も出来ないのではないかと悩み始めます。


 「私には何もない」


 そう思っていた優実でしたが、ノクス最強の女戦士シエラとの出会いが、少しずつその考えを変えていきます。


 『私には何もない』


 どうぞお楽しみください!

 まだ朝から間もないというのに、訓練場には絶え間なく怒号が響いていた。


 木刀のぶつかる音、武器を振るう音、そんな光景を見ながら優実は引きつった顔をしていた。


 「嫌だなぁ〜、帰りたい」


 隣を歩くノエルは無視する。


 「ねぇ聞いてる?」


 「聞いてるよ」


 「じゃあ帰ろうよ」


 「帰るわけないだろ」


 即答だった。


 優実が肩を落としている間にも、ノエルは訓練場の隅へ向かい、何やら倉庫を漁り始める。


 しばらくして戻ってきたノエルの手には、大きな防具が抱えられていた。


 優実はそれを見て固まる。


 「え、なにこれ」


 「防具だよ、防具」


 「それは分かるけど」


 優実は目の前の装備を指差した。


 その防具はどう見ても子供用だった。


 全身を覆う簡易防護具に、小さなミット、色褪せた塗装まで含めて、明らかに訓練用の子供向け装備である。


 「いやどう見ても子供用じゃん!!」


 「だって優実小さいし」


 「失礼すぎない!?」


 「大人用は重いしデカいからさ」


 「そういう問題じゃないから!」


 ノエルは面倒そうにため息を吐いた。


 「文句言う暇あるなら着ろ!」


 「横暴!!」


 そんなことを言いながらも、結局優実は防具を装着する。


 それでも少し大きく、そして恥ずかしい。


 間をおいて考えても、もの凄く恥ずかしい。


 「絶対似合ってないよ、これ」


 「めっちゃ似合ってるじゃん!!」


 「嘘つけ!」


 ノエルは少しふざけながら、グローブを装着すると、その瞬間に空気が少し変わる。


 無意識に優実は思わず背筋を伸ばした。


 レグルスとの戦いでは分からなかったが、今なら分かる。


 “ノエルは強い“


 それも、自分なんかとは比べ物にならないくらい。


 「じゃあ始めるぞ」


 「え?」


 優実の動揺している時間を待たず、次の瞬間にはノエルは飛び出した。


 ドンッ!!


 強い衝撃音が響き、気付けば優実は地面へ転がると、音に遅れて痛みが広がってきた。


 「いったぁぁぁ!?」


 涙目で叫ぶが、ノエルは平然としていた。


 「分かったから、早く構えて」


 「あんた普通の女の子になに求めてんの!?」


 「知らん」


 「知らんじゃないよ!!」


 そうは言えど訓練は続いた。


 何度も。


 何度も。


 何度も。


 殴られ、避け、転んだ後、また吹き飛ばされる。


 その繰り返しのはずだったが、途中からノエルは違和感を覚え始めていた。


 本来なら当たっている、いや当たるはずの攻撃を優実は咄嗟に避けているが、本人はその違和感に気付いていない


 避けた後に転んでいるから気づいてないが、だが確かに避けている。


 「今俺の動きが見えたのか?」


 ノエルが問いかける。


 「何が?」


 優実がポカンと返す。


 「俺の拳、見えていたのか?」


 「全然、何にも分かるわけないでしょ!」


 即答の優実に対して、ノエルは少しだけ眉をひそめる。


 「そうか」


 だがそれ以上は言わなかった。


 ◇◇◇


 しばらくすると


 「休憩」


 ノエルがそう言った瞬間、優実は横のベンチへ倒れ込んだ。


 「もう無理ぃぃ、死ぬぅ」


 「大袈裟だな」


 「大袈裟じゃないよ!」


 水を受け取りながら優実が抗議するが、対するノエルは息一つ乱れていない。


 そんな余裕そうなノエルを見て、優実は少しだけ悔しくなった。


 「なんでそんなあんたは強いの?」


 「鍛えたから」


 「雑すぎ!」


 思わず突っ込む優実に、ノエルは少しだけ口元を緩めた。


 優実がぽつりと呟く。


 「いいなぁ」


 「何が?」


 優実は少しだけ視線を落とした。


 「戦えるの」


 優実は悔しそうに続ける。


 「ヨルもそう、ノエルもそう、きっと貞美だってそう、みんな戦えるのに、私だけ何もない」


 ノエルは優実の話を黙って聞いていた。


 「私さ、普通なんだよ、ごく普通の高校生だったの、朝起きて学校行って、友達と遊んで、その後ゲームして、眠くなったら寝て、そんな毎日だったの」


 少し笑うが、その笑顔は少し寂しかった。


 「空も飛べないし、魔法もないし、勿論熊とも戦ったことないしさぁ」


 ノエルが少し吹き出す。


 「熊は普通戦わないよ」


 「でしょ!?」


 少しだけ笑い合うが、その後、ノエルは少し考えるように小さく呟く。


 「別に良いことばっかじゃない」


 ノエルの言葉はそれだけだった、だがどこか重かったその言葉の意味を、優実は分からなかった。


 「何だ今日は騒がしいな」


 突然聞こえた声にびっくりした二人が振り向く。


 そこには白い服を纏った女性が立っていた。


 「あ!」


 優実の顔が明るくなる。


 「昨日会ったシエラさん!」


 その瞬間、ノエルが大慌てで優実の頭を叩く


 「優実!シエラさんになんて口の利き方してんだ!」


 「えぇ!?」


 優実が驚く。


 「昨日会ったんだもん!」


 シエラは少し笑った。


 「構わんさ」


 そしてノエルを見る。


 「久しぶりだな、ガルドのところの坊や」


 ノエルは少し嫌そうに答えた。


 「あの...ノエルです」


 「そうだったな」


 シエラは小さく笑い、どこか見覚えのある光景に優実もニヤつく。


 その時、シエラの視線が優実へ向いた。


 一瞬だけ、本当に一瞬だけだが、その目は止まるが何も言わない。


 「どれ、久々にどれだけ強くなったか、少し見せてみろ」


 シエラがノエルにそう言うと、ノエルは無言で立ち上がり、優実も慌てて席を立つ。


 「こっちに来い」


 少しだけその場から離れて、シエラはノエルに手を構える。


 「相手がシエラさんなので、本気で行かさせてもらいますよ」


 そう言ってノエルは深くお辞儀をする。


 「よろしくお願いします」


 ノエルは言い終えた途端に、全速力で飛び出す。


 戦いが始まった。


 ノエルの動きはさっきまで以上に早く、鋭く、重く、迷いなく踏み込む。


 だがその攻撃は全く届かない。


 シエラは全て流す、受けるのではなく、動きを読み、避けては、届きそうな攻撃は流す。


 次の瞬間、シエラの指がノエルの首元へ触れていた。


 「ここ」


 ノエルの動きがピタリと止まる。


 「今のでお前は死んでいる」


 優実が固まる。


 「え?」


 再び動き、瞬時に攻撃を仕掛けるノエル。


 しかし今度は脇腹にシエラの手刀が添えられていた。


 「ここ」


 「これで内臓が潰れている」


 「いや、怖っ!?」


 優実は思わず叫んだ。


 だが、その目はいつの間にか戦いへ釘付けになっていた。


 綺麗な戦い方だった。


 強い、なのに壊さない、まるで踊るような美しい戦い方だった。


 そして、ノエルが踏み込んだ瞬間にシエラが呟く。


 「まだ痛むのか」


 ノエルの動きが止まった。


 「何がです」


 「背中だ」


 沈黙が空間を支配する。


 「お前は無意識に庇っている、だから右への踏み込みが甘い」


 ノエルは答えない。


 それでも闘い続ける。


 ◇◇◇


 一通りの稽古を終えた二人を見て、優実は思わず呟いた。


 「綺麗...」


 シエラが見る。


 「私が綺麗なことは知っている」


 「シエラさんもそうなんですけど、戦い方の方です」


 「真顔で返すな」


 優実の素直な返答にシエラが少し笑いながから返す。


 「どうしてそんな動けるんですか?」


 シエラは静かに答える。


 「見ているからだ」


 「何を?」


 「感情の流れをだ」


 優実は目を瞬かせた。


 シエラは続ける。


 「怒り、恐怖、迷い、全て感情が流れを生み、それが動きに変わる」


 そして、シエラは優実を見る。


 「お前も毎日やっているさ」


 「え?」


 「相手の感情を読むことだ」


 優実は首を傾げる。


 「いいや、だが違うな」


 「お前はもっと見えているはず、いや見えるはずだ」


 優実が固まる。


 「普通の共鳴ではない」


 少しだけ沈黙を置いて、シエラは小さく呟いた。


 「なるほど、そういうことか」


 「何がですか?」


 意味が分からずポカンとする優実、そんな彼女を見ながら、シエラは僅かに笑った。


 「面白いじゃないか」

 今回も読んでいただきありがとうございます!!


 ごく普通の女の子だったはずの優実にも、何やらそうでは無さそうな所をシエラは見抜く。

 そしてノエルの羽の違和感もどこか匂うところではあります!

 次回も優実回の続きになりますので、是非この続きを楽しんで読んでくださいね!!


 高評価、感想、ブックマーク等々お待ちしております!

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