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感情が禁じられた世界で、私を殺した怪異となんだかんだで旅してます!  作者: ポルチーニアツオ
3章 巨大樹の共和国

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ノクス調律院

 感情を否定する国家がある。


 なら、感情を受け入れる国はどうなのか?


 優しさと笑顔に溢れていたはずの理想郷。

 けれど、その国は静かに壊れ始めていた。


 そして優実達は、

 ついにその国の中心へ足を踏み入れていく!


 第三章第四話

 『ノクス調律院』


 よろしくお願いします!

 朝日が差し込む部屋の中、布団の上では、エナを包むように抱きしめながら眠る貞美の姿があった。


 リアナは少し目を丸くして見ていると、その後ろからガルドも部屋を覗き込む。


 無言だが、どこか二人の空気は柔らかかった。

 

 その時、優実もゆっくり目を覚ます。


 「ふぁ〜あ」


 起きるや否や、今日も貞美が起きていないのかと横に目をやると、視界に入った光景に、優実は少しだけ目を見開いた。


 貞美が、エナを優しく抱いて眠っている。

 その顔は、昨夜までより少しだけ穏やかに見えた。


 「はぁ〜やっぱりここにいたのね」


 リアナは安心したように息を吐く。


 その声でエナも小さく目を擦りながら起き上がった。


 「んぅ……あ、おはよ〜」


 まだ半分寝ぼけた声で笑うと、その動きで、貞美もゆっくりと目を開けた。


 ぼんやりした視線が部屋を見回す。


 優実、ヨル、リアナ、ガルド。


 そして、すぐ隣にいる笑顔のエナ。


 少しだけ沈黙が流れる。

 貞美は視線を逸らすように小さく呟いた。


 「みんなごめん」


 その言葉に、優実とヨルが少しだけ目を丸くする。


 貞美なりに迷惑をかけた、それは理解していた。


 そして少し間を置いてから、もう一度小さく口を開くと、みんなを見た後エナを見て


 「ありがとう」


 そう一言小声で言うと、エナはキョトンとしていた。


 「?」


 何を言われたのかよく分かっていない顔だけど、嬉しそうだった。


 「お姉ちゃん起きた!」


 満面の笑みでそう言うと貞美に飛びかかる。

 貞美は少しだけ困ったように目を逸らしながらもう逃げることはしない。


 「貞美ぃ...あんたがこのまま起きないじゃないのかってめっちゃ心配したんだからぁ」


 「これでみんなとりあえずは無事だな」


 涙目になる優実と、ホッとした様子のヨル。

 そんな三人の様子見ていたリアナは、小さく笑って


 「はいはい、感動の再会はそのくらいにして」


 そう言いながら、リアナはカーテンを開けると、窓から朝の光が部屋へ広がる。


 その時、ガルドが静かに口を開く。


 「皆起きた様だな、すぐ出る準備をしろ、今日は調律院へ行く」


 「調律院?」


 優実が聞き返すと、ガルドは腕を組みながら続けた。


 「お前達がいるこの国は、万年大樹エルドレア様に守られた国、ノクス共和国だ!そしてその中心が『ノクス調律院』、今日はそこで、お前達の今後を決めてもらう」


 「って言うと...」


 優実は困った顔で聞き返す。


 「いわばお前達は突然門の前に現れたお尋ね者だ、故にこの国での生活をする資格があるか、敵ではないのか、判断をとらせてもらう」


 優実達は、まだ何も分からないと言った顔で見合わせる。


 するとガルドはそんな三人の様子を見て、短く吐き捨てた。


 「いいから黙ってついて来い」


 「もう少し優しく言えないの?」


 すぐリアナが呆れたように口を挟むと、ガルドは返事をしない。


 その横でエナだけが元気よく笑った。


 「いってらっしゃい!」


 その声に、貞美は少しだけエナを見つめる。

 昨夜、自分を呼んでくれた声、その小さな存在を見つめると、胸の奥がまた少しだけ温かくなった。


 急足で、準備してもらった着替えに着替え、ガルドに連れられ、四人は街へ出る。


 外へ出た瞬間、優実は思わず息を呑んだ。


 広い石畳の道、無数の店、行き交う人々には、耳の尖ったエルフ、獣の耳を持つ獣人、小柄な種族、見たことのない種族達が当たり前みたいに肩を並べて歩いている。


 市場からは笑い声が聞こえ、焼きたてのパンの匂いが漂ってくる。


 少し前に見てきた村とは、まるで別世界の様な、作られていない温かさがそこにはあった。


 「すごー」


 ここにはちゃんと、人が生きている。


 だがその感動は最初の数分だけで終わりを迎え、徐々に歩けば歩くほど、違和感へ気づく。


 包帯を巻いた者達が多く、顔色の悪い者もいれば、ひどい咳をしながら、座り込んでいる者もいた。

 

 少し歩いた先に大きな建物がありその前には、人を含め他種族が溢れていた。

 入り口まで長い列が続き、苦しそうな声がそこら中から聞こえてくる。


 「ガルドさんあそこは何なの?」


 優実の問いに少し悩んで間を置いてから、ガルドが返す。


 「この国最大の病院だ」


 「でも外まですごい人だかりですけど」


 「色々あるんだ、気にするな」


 病院の前で並ぶ者達の中には、腕や首元が木みたいに変色している者も多数いた。


 優実はその光景を見ながら、小さく呟く。


 「木の人みたいな種族の人もいるんだ」


 優実の発言に、ガルドが少し眉を寄せる。


 「違う」


 低い声で続ける。


 「あれも病気だ」


 その声は短かくも、奥には重い疲れが滲んでいた。


 ヨルは周囲を見ながら、小さく目を細める。


 「おかしいぞ」


 ガルドは振り返らず、歩き続ける。


 「この国は、こんな感じじゃなかったはずだぞ、もっと豊かで、病も少ないって聞いてた」


 ヨルもまた続ける。


 「この国で生きた者は、生涯を大樹の恩寵のまま命を全うする伝説の地とまで聞いていた」


 少しだけ沈黙が流れた後、優実がヨルに聞き返す。


 「ヨルは知ってるの?このノクス共和国って所の事」


 「いや、俺も昔の友達から聞いたことがあっただけの、幻の地だとまだ思っていたんだが、その時の逸話として聞いたことがあるだけなんだ」


 二人の会話を聞いた後、ガルドが前を向いたまま小さく呟いた。


 「それもまた...昔の話だ」


 それだけしか返さなかった。


 さらに歩いていくと、街の一角が封鎖されている場所が見えてきた。

 そこをよく見てみると、巨大な真っ黒のまるで腐っている様な根の周囲で、防護服のようなものを着た人間達が、黒い根へ薬液をかけながら焼却処理を行っている。


 その木の根を焼いた、臭いが三人の鼻を刺した。

 

 優実は思わずその光景に足を止めると、ガルドは短く言う。


 「見るな」


 それ以上の説明はしなかった。


 やがて四人の前に、巨大な白亜の建物が姿を現す。


 《ノクス調律院》


 巨大な建物の入口には、石壁へ無数の文字が刻まれていた。


 『感情を否定するな』


 『悲しみを隠すな』


 『怒りを恐れるな』


 『心を持つ限り、我々は強き者である』


 その言葉から目が離せず、優実は思わず立ち止まる。


 アーカディアとは、真逆の物だった。


 「何をしている、早く来い」


 ガルドは一言言って、そのまま奥へ進むと、やがて一枚の巨大な扉の前で立ち止まった。


 扉の大きさと分厚さに比例する様に、重い空気が流れている。


 ガルドはそんな大きな扉を両手で押して開きながら言った。


 「ここから先が、ノクス共和国の中心だ」


 次の瞬間、巨大な扉へ両手をかけ、重々しい音を立てながら押し開く。

今回も読んでいただきありがとうございます!!

優実達が次に来たのはエルドレアが守る、ノクス共和国。

ただし伝説で聞いていたものとは違い、ノクスもまた問題を抱えた国。

その国で優実達はどう生きていくのか、今後の展開を期待して読んでいただけたら嬉しいです!


高評価、感想、ブックマーク等々お待ちしております!

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