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感情が禁じられた世界で、私を殺した怪異となんだかんだで旅してます!  作者: ポルチーニアツオ
3章 巨大樹の共和国

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漂着者

 異世界から現れた三人。


 感情を観る者達は、

 その心の奥に何を見るのか。


 そして、

 感情すら観測できない少女を前にした時、

 ノクス共和国は何を選ぶのか。


 第三章第五話

 『漂着者』


 よろしくお願いします!

 巨大な扉が、重々しい音を立てながらゆっくり開いていくと、優実たちを包む空気が変わっていく。


 扉の先に広がっていたのは、白く輝く巨大な空間だった。


 円形に広がる白い床、その中央には巨大な円卓が置かれていて、国そのものを見下ろすように、五人の男女が静かに座っていた。


 空気が重くのしかかる。


 誰も声を出していないのに、そこにいるだけで圧迫感があった。


 優実は入ってすぐ、無意識に足を止めると、ガルドが前へ出た。


 「外部漂着者三名を連行しました」


 低い声が静かに響く。


 「左から獣人族ヨル、優実、貞美」


 その名前が空間へ落ちた瞬間、五人の視線が一斉に三人へ向くと、ぞわりと背筋が震える。


 「前へ出ろ」


 低く鋭い声で話す声の主は、円卓の一番右側へ座る大柄な男。


 短く刈り上げた灰色の髪に、鋭すぎる眼光、傷だらけの身体は鎧越しでも分かるほど大きい。


 「ありがとうございます、第二調律官、ラグナ=ヴェイン様」


 ガルドは静かに紹介を続ける。


 「第一調律官、シエラ=ルーミナス様」


 円卓中央に座る銀髪の綺麗な女性。


 長い銀色の髪は月光みたいに淡く、透き通るような青い瞳は感情を見透かすみたいに静かだった。


 細い身体なのに、そこにいるだけで空気が張り詰めている。


 「第三調律官、エルミナ=フェルディア様」


 一番左には柔らかな栗色の髪を持つ女性が座っていた。


 どこか優しそうな顔立ちをしているが、その目には深い疲れが滲んでいる。


 「第四調律官、クロード=レイス様」


 シエラの右手に座り軽く笑みを浮かべた男。

 黒髪を無造作に流し、どこか掴みどころがなく、笑っているのに、その目だけは全く笑っていなかった。


 「第五調律官、ヴェルグ=オルディス様」


 最後に紹介されたのは、シエラの左手に座る一人の老人だった。


 白髪混じりの長い髪を後ろで束ね、深い皺が刻まれていて、その場で最も重い空気を纏っていたのは間違いなくその男だった。


 ガルドが調律官の名前を呼び終えた後、静かに三人をまるで奥底まで覗き込むように見つめている。

 

 優実は思わず目を逸らした、その時。


 シエラが静かに机の上へ置かれたラクリマへ触れると、淡い光が空間へ広がった。


 「これより、異端者三名の入国審査を執り行う」


 透き通る様な声が広がると、空気がさらに重くなる。


 「ノクス共和国への滞在許可を与えるに値するか、厳正なる判断をこの場にて下す」


 その瞬間、ラクリマの光が強く脈打つと、ラクリマ越しに三人の何かを見られている感覚が襲う。


 シエラの青い瞳が、静かに優実を見つめる。


 その瞬間に優実の周囲へ淡い灰色の光が浮かび上がる。


 「恐怖、迷い、不安」


 シエラが優実に対して告げる。

 感情が色となり、優実を表す様に空間へ滲んでいく。


 「うっ!?」


 優実は思わず後ずさると、次にシエラの視線がヨルへ向く。


 ヨルには赤黒い色が浮かび上がりだす。


 「怒り、後悔、焦燥」


 シエラはまた淡々と読み上げると


 「何だお前達、随分と疲弊しているな」


 シエラの読み上げを聞いてラグナが笑いながら話す。


 ヨルは眉をひそめた。


 そして最後に、シエラの視線が貞美に向くと、少しシエラが止まる。


 少しの沈黙の後、シエラの表情が初めて僅かに揺れた。


 「やはり」


 小さく呟くと、ラグナが眉を寄せた。


 「どうした」


 シエラは貞美を見たまま答える。


 「あの時感じた違和感は間違いではなかった」


 静かな声だが、その場の空気を凍らせるには十分だった。


 「貞美と言ったか?お前だけ、感情が観測できない」


 一瞬、空気が止まるが、すかさずヨルがすぐに前へ出た。


 「貞美の何が悪いって言うんだ!」


 「黙れ!!」


 ラグナの声が重く、空気そのものが押し潰してくるように響く。


 ヨルは歯を食いしばり耐えることしかできない。

 シエラは視線を逸らさないまま続けた。


 「質問を変える、貴様ら、どこから来た」


 その質問に優実は言葉に詰まらせる。

 直近で起きた出来事の数々を、どう説明すればいいのか分からないが、誤魔化せる空気ではない。


 「それは…ここじゃない場所にいました」


 その瞬間、調律官達の目が変わり、ヨルも続ける。


 「俺達三人はアーカディアに追われていた」


 ラグナが低く問う。


 「アーカディアの誰にだ」


 ヨルは真っ直ぐ答えた。


 「レグルス、それとルミエル」


 ヨルの発言に空気が凍りつく。


 エルミナは、小さく息を呑み、クロードの笑みが少し深くなる。

 ラグナはまるで信じられないものを見るように目を細め口を開く。


 「ありえん、奴らに遭遇して生き残れるはずがない」


 その言葉へ、優実が小さく口を開く。


 「実は前の日に」


 全員の視線が優実へ向いた。


 「私、レグルスと話したんです」


 シエラが目を細める。


 「話した?それはどう言うことだ」


 優実は静かに続けた。


 「少し話した後に、守るために壊すのは正しいのかって、聞かれました」


 月明かりの下、水辺で一人立っていたレグルスの姿が頭を過る。


 「だからよく分からないけど最初はあんまり、悪い人には見えなかったんです」


 優実が頷きながら答える。


 「そんな前日少し話したぐらいで、奴らがお前達を逃したと?」


 ラグナが驚きを隠せない顔で質問を続けるが、優実は答えられず、沈黙が流れる。


 その時だった。


 「……壊れてた」


 突然ぽつりと貞美が呟くと、全員の視線が集まる。


 貞美は静かに続けた。


 「あの人はきっと、壊れてた」


 クロードが小さく笑った。


 「へぇ……レグルスがねぇ」


 ラグナは険しい顔を崩さず、強い顔で言葉を放つ。


 「やはり漂着者など危険因子だ!共和国へ入れるべきではない!!」


 だが、その言葉へエルミナが静かに反論した。


 「……ですが、今のノクスには、あまりにも都合が良すぎると思いませんか?」


 エルミナは小さく目を伏せる。


 「これもエルドレア様の天命かと、かの者達が、そうは思いませんか?」


 空気が揺れる中、ヴェルグだけは、ずっと貞美を見ていた。

 まるで、その奥にある何かを見極めるように。


 やがて、ヴェルグが静かに口を開く。


 「漂着者三名、監視下での滞在を許可する」


 低い声が響き、優実達が小さく息を呑む。


 「外壁警備隊副隊長ガルド=フェルン、監視責任者を命じる」


 「了解しました」


 ガルドが短く返すと、優実達は顔を見合わせた。


 “なぜか分かっていないが、助かった“


 だが、それは同時に、《監視対象》になったということでもあった。


 「失礼します」


 ガルドの言葉に続き、三人も続くと、ガルドに連れられ、三人は部屋を後にする。


 重い扉が閉まるその直前にシエラの声が響いた。


 「ガルド」


 ガルドだけが足を止めると、シエラは静かに貞美を見つめながら言った。


 「黒髪の少女、貞美と言ったかな?奴を特に注視しておきなさい」


 ガルドが低く返す。


 「危険でしょうか?」


 少しだけ沈黙が流れた後、シエラは小さく息を吐く。


 「分からない、だからこそ怖い」


 そう言うと、扉はバタンと締まった。

 青い瞳は、まだ閉じた扉を見つめていた。


 シエラの青い瞳はまるで深淵を覗いているみたいだった。

今回も読んで頂きありがとうございます!


五人の調律官によって、滞在を許可された三人がこれからどうなるのか?

そしてシエラが睨むやはり貞美の正体が気になるところです!


是非続きも読んでください!!


高評価、ブックマーク、感想等々お待ちしております!

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