↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/64

00047PHTJB「堕ちた女(一)」

 教室を出ようとして、驚いた。


 そこに津秋が立って、いたんだ。

 てっきり、もう家に帰ったのだと思っていた。

 俺が出てくるのを待っていたのか。状況的には、そうとしか考えられない。


 津秋は俺の目を見つめている。

 唇がぷるんとしていて、

 気のせいか、目元も潤んでいるように見えた。


 こうした光沢のあるみずみずしさが、俺はたまらなく好きだった。

 津秋のことが好きなのも、時折こういう艶(なま)めかしい色気を見せてくるからだ。


「何? どうかしたの」

 と、俺は聞いてみた。


 以前ほどは、緊張しない。

 全くしないわけではないけれど、

 ……影世でやることやってしまったからだろうか。

 一度経験してしまって、耐性がついたのかもしれない。


「あのさ、こんな時に言うのもアレなんだけどさ」

 と、津秋。ためらいがちに、俺の顔をうかがいながら続けて言う。

「連絡先、交換しとかない?」


「へっ?」


「い、いや、その。大月のこともあるしさ。

 一応連絡取れるようにしておいた方が良いでしょ?」


「良いけど――」

 それって、……どういうことだ?


 俺がスマホを取り出すと、ゆっくりと津秋が近づいてきた。

 空気に津秋の匂いが乗ってきて、

 そうしたらなんだか急にドキドキしてきた。

 緊張しないなんて、さっきのは嘘だった。

 こんなに近くに来られたら、やはり緊張してしまう。


 すぐ隣まで来て、スマホを操作する津秋。

 体を動かしたら簡単に触れられるところにいる。


 今まで冗談でぶつかってくることはあっても、

 こんな感じじゃなかった。

 今日はやたらとチラチラ見てきてたし、

 もしかして……影世の影響なんだろうか。

 影世であんなことしたから、

 現世でも俺のことが気になって仕方なくなってる?


 いやまさか、

 いや、けど、……と思って、

「なあ、津秋」

 と俺は切り出す。


 今まで呼び捨てで呼ぶどころか、

 本人を名前で読んだこともあまりない。

 津秋が俺の目を見つめる。

 一瞬、その目に吸い寄せられそうな気がした。


「デッサンの件だけど、俺は、いつでも良いよ。

 津秋は、……いつが良い?」


「あ。あぁ、覚えててくれてたんだ、あれ」


「そりゃあ、もちろん。一応、約束だったからな」

 大月を殺す二日前、津秋からもちかけてきた約束だ。

 忘れるはずがない。


 津秋は少し考えてから言った。

「またメールで連絡するってことでも、……いい?

 大月のこともあるしさ」


「ごめん、そうだったな」


 連絡先が送れたかどうかと確認してくる津秋に、

 俺はスマホの画面を見てから、届いてる、とうなずいて答えた。


「後でまたメールするよ」

 と、津秋はスマホを持つ手を上げ立ち去ろうとする。


「おう」

 と、俺も同じ仕草で応じた。


 津秋の後ろ姿を見送りながら俺は考える。


 影世のことは現世に強い影響を与える。

 それって、影世でオトせば現世でもオチるということなんだろうか。

 だから津秋は……、

 なら、もし女の子たちを手当たり次第やれば……?

 ……いや、そもそも津秋はほとんど抵抗しなかった。


 どういうことだろう。

 はっきりしない。

 これもジョーカーに聞いてみよう。


 屋上は使えないから……と、

 俺は学校を出て、

 琥太朗の家の方角に急いで向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。