00048CJDK「堕ちた女(二)」
琥太朗の家のすぐ近くに、その建物はあった。
人の気配はない。あれは間違いなく、廃墟だ。
雑草が生い茂っていて、けもの道を通って近づいていく。
虫が多いし、草が体にかかるしで、嫌な感じだ。
建物にも蔓が、からんでる。
放置されて何年も経つのか。
さびれていて、窓ガラスも全部割れている。
四階建ての雑居ビル、という感じだ。
俺はぐるりと建物の周囲を一周した。
途中に大きなタライがあって、
雨水がたまってる。
黒く濁ってて藻が生えていた。
建物の中は暗くてよく見えない。
しかし、タライ近くの非常階段を登れば、
中に入らなくても上に行けそうだ。
雑草を足で払いながら非常階段へ。
手すりを持って、すぐに離した。
赤いサビが手について、汚かった。
カンカンカン、と足音を立てて、二階、三階、四階へと登った。
屋上にはハシゴを使うのだが、ここのサビも、凄い。
誰も使ってないのは、間違いない。
手が汚れるのは諦めて、俺は屋上へと足を踏み入れた。
学校が見える。すぐ近くには、琥太朗の家。
その方角には赤い鳥居もあった。
高さは、ちょうど10メートルというところか。
高さが足りるか不安だ。
それに、下はコンクリートじゃない。
草木が生えている。地面だ。
学校とは、まるで勝手が違った。
俺はしばらく悩んだ。
飛び降りに失敗するのは、困る。
死ぬのも嫌だけど、
怪我して中途半端に生きるのは、もっと嫌だ。
しゃがんでみて、また立ち上がる。
何度か繰り返して、俺は自分の感覚を信じることにした。
ここは、良い場所だ。
木々に囲まれていて、人目につきづらい。目立たない。
学校の近くだから、
放課後すぐに飛び降りられる。
これはデカい。
他に良さそうな飛び降りスポットも見つからないんだ。
ここは10メートルあるはず。
怖いけど……
大丈夫、きっと大丈夫……。
出来るだけ下に障害物の少ないところを選び、
意を決して、俺は飛び降りた。
ピューッ。
地面にぶつかる。
ぐーんと、世界が上下に逆転した。
頭にガーンと鳴り響く。
暗い管を通って、一気に飛び上がった。
びっくりして、尻もちをついた。
学校から落ちるのと感じが違った。
けど、……影世だ。
洞窟の中。
見慣れた光景。
なんとか、こっちに来れたらしい。
良かったと、ほっとする。
心臓が止まるかと思った。
辺りを見渡して、
俺はジョーカーのもとへと急いだ。
話し合いの場所は、雲の上。
デュースに乗ってまた空を駆け上がった。
ジョーカーは、
「大丈夫か?」
と聞いてきてたけど、
俺には何のことかよくわからなかった。
そんなことより、聞きたいことがあるんだ。
聞いても良いかと聞くと、
「何だ?」とジョーカーは答え、
そして俺は、現世であったことを話し始めた。




