00036RJ「純一のMP」
ジョーカーは俺の左腕に腕輪をつけた。
それは現世に戻ろうかというときのことだった。
「これは?」
「西欧の御守だよ。
レザーバングルと言ってな。革製だ」
革に金属の装飾があしらってある。
刺繍も丁寧で、形も格好良い。センスがあった。
「ありがとう」
俺が左腕を見せて礼を言うと、ジョーカーは「前祝いだ」、と言い、
「それに」、と付け加える。
「それは単なるバングルではない。
以前、MP<メイルポイント>について話したろう。
MPは影世で具現化能力を使用する際に使う力の源泉だ。
そのバングルを使うと自分のMPが今いくらか、
それがわかるようになる」
「使い方は?」
「バングルに触れて、そう念じるだけで良い。
掛け声もいらないが、言いたいならステータスオープン、とかな。何でも良い」
試しに俺は左腕のバングルを掴んだ。
「ステータス、来い!」
その言葉とともに、
半透明の四角い画面がバングルの上に浮かび上がった。
小さい……。
声を張り上げた割に、表示は小さかった。
そこにはMPの数字しか書かれていない。
――1500だ。
俺のMPは1500だった。
これは大きいのか、小さいのか。
俺はジョーカーの顔色をうかがった。
と言っても、狐の仮面をつけているのだから、
表情は読めないのだが。
ジョーカーは言う。
「参考までに他のやつらのMPも教えておこう。
津秋は、1050。
崎本、950。
川辺、1250。
そして大月が、……1300だ」
ますますわからない。
俺が一番高いのはわかったが、
世間一般に照らして、俺は凄いの? 凄くないの?
そこが最も知りたいところだった。
そんな俺の心を読んだのか、ジョーカーは言った。
「1500は数万人に一人いるか、いないかだよ。
一般人にとってのMPの限界値近傍と言っていい。
著名人でまず思いつくのは、合衆国大統領。
現在の大統領のMPは、1570だ。
彼の側近も軒並み高い。
1500超えは、学者や、画家、実業家に革命家、スポーツ選手に、
それから警察官にも、あらゆる分野にいるのだが、
いるにはいても、
それぞれの分野で突出した人間であることが多い。
世界を動かす側の人間。支配者クラスの数字だと思って良い」
「そ、そんなに凄いのか……。
俺も1500だけど、これは影世で訓練したから?」
「それもあるが、
俺が最初に確認したときには既に1400代だった。
その若さで1400に乗っていた人間は、
俺が知る限り一人もいない」
俺は生唾を飲み込んだ。
「ジョーカーは?
ジョーカーのMPはいくつなんだ?」
「バングルを俺の方に傾けて、
自分にしたのと同じように俺のMPを表示させようとしてみな」
言われた通りにバングルに手を当ててジョーカーのMPを表示させようとした。
先ほどと同じように四角い画面が浮かぶ。
しかしMPの数字は載っていなかった。
横棒になっている。
「本来はそうすれば目の前のやつのMPも見れる。
純一もそうだが俺達は特別な存在だから、調べられないんだろう」
「俺は1500ってわかったけど?」
「自分のならわかる。俺は3700だよ」
さ、3700…………か。
思ってたよりずっと大きいな。
先にずっと居たんだから、そりゃそうか。
だが、そんなに遠くはない。
頑張れば超えられるかもしれない。
「大月の1300も、川辺の1250も、一般に希少価値は高い。
油断するなよ。
MPが強さに直結するわけではないが、
ほとんどの場合で、MPが高いほど扱いが厄介な相手になる」
「わかってる。……それは?」
ジョーカーが黒衣から細い鎖のようなものを取り出していた。
「これはキーメイルチェイン。あるいは単にメイルチェイン。
捕まえたキーメイルを保管するのに使うものだ。
普通のキーホルダーと変わらない。
キャッチすると、キーメイルは鍵の形に姿を変えるから、
それをこの鎖、メイルチェインに繋げておくと良い。
これも渡しておこう」
「ありがとう。色々すまないな」




