↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/64

00035PJDBTPK「空からの眺め」

 「そろそろ飯にしようか」と言うジョーカーに従い、

 外で一緒にご飯を食べることにした。



 ジョーカーが用意してくれたのは、

 今までで一番おいしそうな料理だった。


 食べ切れないほどのご馳走が並ぶ。

 狼のデュースも尻尾を振って喜んでいた。


 モッツァレラチーズがおいしい。

 初めて食べた。変わったチーズ。

 せっかくだからと、一緒にモッツァレラチーズゲームをする。


 勝ったのはデュースだった。

 デュースの変顔がたまらなくおかしい。

 あまりにおかしくて、俺の明日への緊張も吹き飛んだ。



「デュースは空も跳べる」

 と、ジョーカーは言った。

 これには驚いた。

 身なりはでかいし、変わった狼だとは思っていたが。

 空も跳ぶなんて、誰も思わない。



 デュースの背にジョーカーが乗り、俺もその後ろにつく。


 デュースは本当に跳んだ。

 空高く、高く、まるでジェットコースターのように、

 ふわーっと浮いて、

 次第にヒューンと落ちていく。

 雲の上まで届きそうなほどだった。


 今まで、のしのし歩くとこしか見たことなかったのに。

 最初は振り落とされないよう必死に捕まる。


 落ちるんじゃないかと冷や冷やしたが、

 ジョーカーがデュースから手を離していることに気がついた。

 手に何も持ってない。

 まるで落ちないとわかってるみたいだ。


 おそるおそる手を離しても、確かに安定感があった。


 時折チラチラと首を横に動かすデュース。

 俺の反応を楽しんでるかのようだった。



 途中からは雲の上もデュースは走った。

 雲の上をピョンピョン跳んで、雲の切れ目近くで足を止める。


 ぐるりと雲の中央あたりに回った。

 まさか雲の上にも乗れるなんて。

 どうなってるんだここは。


 ジョーカーがデュースから降りる。

 ジョーカーにならって、俺も雲の上に降りた。


 フワフワで足が沈む。

 下に落ちないか心配だった。

 よろけてジョーカーの手を借りる。



 景色を眺望した。

 上には薄い水色の空。

 切れ切れの雲がたくさんある。


 遠くの方には海が見えた。


 凄く綺麗だ。

 空の上なのに空気も澄み切ってる。


 雲の端に寄り、両膝をついた。

 下には緑の多い大地が広がる。

 

 山があった。

 家もたくさん見えた。

 人は点にしか見えない。


 雲の端からは少し離れ、

 しばらくじっと景色を眺めることにした。


 ジョーカーも隣に両膝をつく。

 動きがあったので、ふと見ると、

 ジョーカーは両腕を広げている。翼のように大きく両手を広げていた。


 こちらをチラりと見て、首を傾げてくる。

 お前もやってみろ、と言いたいんだと思った。


 なんだか気恥ずかしくて戸惑ってると、

 ジョーカーは近寄ってきて俺の両腕を掴んで広げた。


 微(かす)かにジョーカーの笑い声が聞こえる。

 俺の体を小突いてきた。


 両腕を広げると、本当に空を飛んでるような感じがした。

 深く、深く深呼吸して、世界の味を胸に受け止める。

 頭を下げて、目をつぶった。

 まるでこの世界が、自分のものになったかのような感覚だった。



「気に入ったか?」

 と、ジョーカーが聞いてくる。


「まぁな。学校往復してるだけだとさ。こんな景色なかなか見れないんだよ」

 俺のこの冗談に、ジョーカーは少し喜んだようだ。


「そうか。復讐が済んだら、毎日でも見せてやるよ」


 俺は胡坐をかいて座っていた。

 ジョーカーも遠くの空を眺めている。片膝を立てて座っていた。

 けど俺は、にわかに緊張してきていた。

 明日のことを思い出したからだ。


 そういえばジョーカー、やたら俺に復讐させようとする。

 それはどうしてだろう。


 ジョーカーが内心を語ることは少ない。

 思い切って聞いてみたところ、その返事に胸を打たれた。


「俺にはデュースしかいない。

 気の合う仲間が一人もいない。 

 ずっと寂しかったんだ」

 と、ジョーカーは言ったんだ。


 どこか自分に重なるところがあるような気がした。


 俺が復讐をして、人を殺していけば、

 俺はジョーカーと同じになる。

 殺人鬼の、仲間入りだ。


 ジョーカーはそれを望んでいるんだ。

 俺が同じ目線で話せる仲間になること。


 ……なんだか、可哀想だ。


 こんなに良いやつなのに、友達が犬一匹だなんて。


 津秋と話して浮かれたり、

 琥太朗と友達になって喜んでいた俺。

 けどジョーカーはずっと一人だった。


 いじめられても、

 なんとか今日まで生きてこられたのはジョーカーのおかげだ。

 でないと今の俺はない。


 俺の復讐は、ジョーカーのためでもあったんだ。

 以前は誰かが助けてくれるのを待っていた俺。


 ジョーカーを助けてやれるのは俺しかいない。

 今度は俺の番なんだ。


 俺自身のため、正義のため、津秋のため、

 そして、ジョーカーと、デュースのため。


 大月はきっと、俺に殺されるために生まれたんだろう。

 明日。

 絶対に、しくじらない。

 殺す。大月を殺す。


 あいつは、何が何でも殺さないといけなかったんだ。

 俺は強く拳を握った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。