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00034JD「計画(二)」

 土曜日。


 学校からピューッと飛び降り影世に行く。


 学校以外から飛ぶのはまだ怖い。

 慣れた場所から飛び降りることにしていた。


 今日は珍しい。

 デュースだけじゃなくて、ジョーカーも先に居た。


 俺は今日もイメージの具現化練習をする予定だったけど、

 ジョーカーに「今日は出来るだけ休め」、と言われる。


「じゃあ何をするんだ?」

 と、聞くと、

「そうだな……。大月を殺すときの心構えを幾つか、話しておこうか」


「心構え?」


「そうだ。

 衝動的な殺人や過失による殺害はともかくとして、これは計画殺人だからな」


「どう違うの?」


「どう、違うと思う」

 と、ジョーカーが言う。


 ジョーカーはこういう風に、すぐに答えを言ってくれないことがあった。

 うーん、と考え、思いつくままに答える。

「衝動殺人と過失による殺害は、事故みたいなものなんじゃないかな。

 突発的な事故。けど……計画殺人は違う」


「つまり?」


「計画殺人は、最初から殺そうとしてる。事故じゃない」


「そうだな。

 しかしそれだと、大きな障害が生まれる。それはわかるか?」


 うーん、何だろう。

 計画殺人の場合に生まれる障害。


 俺が悩んでいると、

 ジョーカーは助け舟を出してきた。

「殺そうと考えることと、実際に殺すことは違う」


「いくら事前に殺そうと考えてても、

 直前に躊躇(ちゅうちょ)して殺せなくなることもあるってこと?」


「そういうことだ。

 この影世では法もルールもないのだが。

 しかしそれがわかってても、おそらくは躊躇(ためら)いが生まれる。

 殺すことはいけないことなのではないかと」


「いけないことではない?」


 ジョーカーは頷く。


「大月は大罪人だ。

 殺さなければならない。

 殺さねば、大月は将来、より善良な人を苦しめ、沢山の人を殺すことになる」


 それは……。


「現世では誰も大月を処罰できない。

 大月は直接自分の手で人を殺すタイプではないからだ。

 そのため、真に処罰することができるのは、影世で自由に動けるお前しかいない」


 ジョーカーは、

 大月が人を追い詰めて自殺させるようなタイプの人間だと言いたいのだろう。


 影世は現世の本質をうつす。

 そういった間接殺人も、ここでは直接殺人となって見える。

 ジョーカーの言ってる大月の犯罪というのは恐らく、大部分が影世での話。

 一見して現世で問題なさそうでも、その本質が真っ暗なこともある。


「いいか、純一。

 お前は大月をできるだけ苦しめて殺そうと考えているようだが。

 別に俺はそこまで望んでいるわけではない。しくじらずに殺せ。それだけで良い」


「しくじらずに?」


「そうだ。

 殺すとき、大月が言うことは絶対に何も聞くんじゃないぞ。

 下等な動物だと思うんだ。

 ただ、殺せば良い。仕留め損なうなよ。

 しくじれば、お前が殺られると思え」


「それ、どういうことだよ」


「問題は二つある。

 一つは、影世で生命の危機を感じるほどの状況に陥れば、

 必ず現世の方にも強い影響が及ぶということ。

 影世で殺せば現世の方でも死ぬが、そうでなくても向こうには必ず影響がある」


「もう一つは?」


「もう一つは、大月が反撃してきた場合。

 お前の場合は、こちらの方が重要かもしれないな。

 影世でのお前の身体能力は強化されてるから、簡単には死なない。しかし」


「……死ぬこともある?」


「そういうことだ。

 影世の人間たちは、野蛮で暴力的。

 グズグズ迷っているうち武器を奪われ、逆に殺されることもある」

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