第2章 第3話:ライバルな二人
リリーはアイリスとセシリアに挟まれたまま午前の授業を受けていた。
(二人とも授業中はちゃんと真面目に授業をうけてくれるのよね。ただ休憩時間になるとセシリアとアイリス様がいがみ合っちゃうのがねぇ……)
最初の休憩でセシリアが一緒にお手洗いに行こうよと、リリーの手を取ると、そのままトイレへと連れて行ったり、その次の選択授業ではリリーと同じ科目を受講していたアイリスがセシリアに見せつけるようにリリーの腕に自らの腕を絡めたりと、2人がリリーを取り合っていたのだった。
午前の授業終了の鐘が教室に鳴り響くと、魔法基礎学の授業を担当していた女性教師が生徒たちの方を向いた。
「今日の授業はここまでにします。今日の内容をちゃんと復習しておくように」
そう言って教室を出ていくと、教室の雰囲気が一気にお昼休み特有の開放感に包まれた。
ここでリリーが二人に声をかけた。
「私はメイドのクロエと学食へ行かせてもらいますが、お二人はランチはどうなさいますか?」
リリーの問いかけに両サイドの二人が同時に答えた。
「よろしければ、リリーさんとご一緒させていただきますわ」
「私も学食に行く予定だから一緒に行こうよ」
アイリスとセシリアはお互いに睨み合う。
「アイリス様は婚約者であるレオン王子とお昼を食べに行かれてはいかがですか?リリーさんのお相手は私がしっかりしておきますから!」
あからさまに作った笑顔をアイリスへと向けるセシリアに対し、
「そんな心配はしていただかなくて結構ですわ。王子との婚約は学園の外でのお話ですから。それに今は学園の友人との関係を築くことが大切です。あなたこそ婚約者候補になりそうな男性でもお探しになられたらいかがかしら?あれならファンデンブルグ公爵家の伝で殿方を紹介しますわよ」
そう言ってアイリスはセシリアに優雅に微笑み返した。
この状況にいたたまれなくなったリリーが二人に声をかけた。
「せっかくですから三人で学食へ参りましょう。私、お二人ともっと仲良くなりたいですから……」
言っている内容には一切嘘偽りはないのだが、なぜかどっと疲れを感じてしまうリリーであった。
ーーー
学食へ移動したリリーたち三人と二人のメイド。
王立学園の学食は一般的な学食と違い、一流のシェフが調理を行っていた。
この食堂では学生とその使用人が自由に食事をとることが出来た。
リリーたちは『本日のランチ』という普通の学食で言うところの『日替わり定食』にあたる物を食べることに決めたのであった。
ここでクロエがリリーに提案する。
「わたくしがお嬢様の分もお持ちしますので、お嬢様は席でお待ちいただければと思います」
そう言うクロエにリリーが注意をする。
「クロエ、ここではあまり身分を振りかざすことはよしとされないわ。王立学園の教えの一つに『学ぶ者に身分の貴賤はない』というものがあるのよ。だから、私は貴族だからといって、他の生徒がちゃんとしていることは、私もできるだけするようにしたいの。わかってくれるわね?」
「お嬢様、その考え方とても素敵です!」
潤ませた瞳でリリーを見つめるクロエであった。
そしてそれを聞いていたアイリスもまたリリーの行動を見習うのであった。
順番が来て、料理を受け取った五人は空いている席を探す。
リリーがいち早く壁際のテーブル席が丸ごと空いていることに気が付く。
「あそこのテーブルがちょうど空いているので、あそこの席にしましょう」
そう言ってセシリアとアイリスに移動を促した。
テーブルまでやって来たリリーたち。
(こういう時は中央から遠い壁際はアイリス様より身分の低い私が座るべきよね)
リリーはマナー講座を思い出しながら、壁際の中央の席に腰を下ろした。
そしてその隣にクロエがリリーのお世話をするために座ろうと移動すると、それよりも素早くセシリアがクロエが座ろうとしたリリーの右隣りの席を占拠した。
クロエは一瞬唖然としたが、気を取り直し、リリーの左隣に座ろうと視線を向けると、その席にはすでにアイリスが占拠しており、その隣にはマリーが座っていた。
(なんでお嬢様のお隣が両方占拠されているのよ!かくなるうえはどちらかを排除することもやむなしか……)
ここでクロエにリリーが声をかけた。
「クロエ、お昼の時のお世話はいいから好きな席に座りなさい」
「わかりました、お嬢様」
そう言うとクロエは向かい側の席とセシリアの隣の席で迷うが、最終的にリリーからの距離が30センチほど近いセシリアの横の席に座った。
その光景は見方によっては、リリーが左右に二人ずつ美少女を侍らせているようにも見えた。
(なんで横一列に並んで座ってるの?こういう時って最低でも二人は向かい側に行くものじゃないの?)
「リリー?どうかしたの?」
隣に座るセシリアに心配されてしまうリリーであった。
「大丈夫よ。ちょっと面白い座り方になったなっと思っただけだから……」
(これじゃまるで『最後の晩餐』の絵みたいじゃない!この中に裏切り者がいて、明日私は捕まっちゃうってか!誰が私を陥れようとしているのよ……)
リリーの頭の中では、小人のリリーが頭を抱えて動揺していた。
ちなみにメインディッシュのお皿の上には魚の切り身がのっており、飲み物にはぶどうジュース、そしてパンがトレイの上にのっていた。これはまさに最後の晩餐のメニューであった……。
「さぁ、リリーさん。いただきましょうか」
「さぁ、リリー、食べようよ」
「え、ええ、そうですわね」
こうして始まった昼食は、リリーの両サイドに座る二人が楽しそうにしているのと反対に、真ん中に座るリリーは何かにおびえているようであった。
(このままでは私の精神が持たないわ!これは一刻も早くセシリアとアイリス様に仲良くなってもらわないと……。本来の目的である『セシリア × アイリス』のイチャイチャを見るためにも頑張るのよ、リリー!)
そう心に誓うリリーであった。
第2章第3話をお読みいただきありがとうございます。
今回はセシリアとアイリスのリリーを巡る争いと、その二人をくっつけて鑑賞したいリリーのやり取りを描かせてもらいました。
ちなみに『最後の晩餐』の話を入れましたが、最後の晩餐のメニューは『魚の切り身』『ワイン』『パン』だったそうです。
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