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『百合オタクの私は、女主人公と悪役令嬢のカップリングにLOVE注入いたします』 ~二人をくっつけようとしたのになぜか二人に狙われている私~  作者: サッサン
第2章:パーティ結成!『リリーズ・コート』

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第2章 第1話:運命のクラス分け

入学式の翌日の早朝。クロエがリリーを起こしに寝室へやってきた。

無防備な寝顔を間近で眺めつつ、「お嬢様の寝顔、尊いです……ッ」とハァハァ息を荒くするクロエ。

その熱い吐息がかかるのに合わせて、リリーの顔は徐々に悪夢でも見ているかのような苦悶の表情へと変わっていく。

そのまま5分ほど主の寝顔をたっぷり堪能したクロエは、シュッといつもの冷静で有能なメイドの表情に戻り、静かに声をかけた。


「お嬢様、朝ですよ。起きてください」


そう言って、何事もなかったかのように優しく肩を揺らしてリリーを起こすのであった。

眠い目をこすりながらゆっくりと起き上がるリリー。


「おはよう、クロエ。なんだか目覚める直前にハアハア言ってるストーカーに追われる悪夢を見たような気がするわ。あれは何だったのかしら……」


「そんなのは気のせいですよ。それよりも早く着替えて学園に行く準備をしませんと。制服はこちらに置いてありますので」


そこには昨日から着始めた真新しい王立学園の制服がきれいな状態でハンガーにかけられていた。

王立学園の女生徒の制服は、裾がしっかりと膝下まであるクラシカルな紺色のジャンパースカートと、白いブラウス、それにスカートと同じ紺色のショート丈のボレロジャケットを羽織るスタイルであった。


(ほんとにクロエは優秀ね。ダンジョン攻略にもついてこられる実力も持っているし、専属メイドにして本当に正解だったわ)


「クロエ、いつもありがとうね」


リリーは手櫛で寝癖を直そうとしながらお礼を言った。


(リリー様に感謝の言葉を頂けるなんてなんて素晴らしい日なんでしょう!それに、寝癖を気にされるリリー様も最高に愛らしいです)


「寝癖などは出発前に私が直して差し上げますので先に他の準備をしてしまいましょう。あと、朝食の準備はできておりますので、着替え終わったらダイニングへお越しください。もしお着換えにお手伝いが必要であれば仕方ないので手伝って差し上げますが……」


「それぐらい一人でできるから大丈夫よ。着替えて顔を洗ったらダイニングへ行くからよろしくね」


クロエはリリーのあっさりとした返答に内心で血の涙を流し、(お嬢様の下着姿を拝むチャンスが……!)と悲痛な叫びを上げながらも、表情には一切出さずに完璧な一礼をして部屋を出て行った。


ーーー


現在、リリーが住んでいるのは、王立学園からほど近い高級住宅街の一角にある学園の特別寮である。

この寮にはキッチンやダイニングはもちろん、使用人用の部屋まで完備されており、学園に多額の寄付金を入れている貴族や裕福な商人の子息・令嬢たちだけが入寮を許されていた。

これとは別に、一般生徒や平民が入るための通常の寮も用意されている。

リリーは父親の財力によってこの特別寮の一室をあてがわれ、専属メイドのクロエと二人で優雅に暮らしていた。


(王都のこんな素敵な部屋にクロエと二人で住めるなんて本当にお父様に感謝ね。ここなら誰の目もないから自由にダンジョンや魔物討伐にも行けるわ)


クロエに髪を梳かされながらそんなことをリリーが考えていると、クロエが声をかけた。


「お嬢様、準備がすべて終わりました。そろそろ学園へ向かいましょう」


一部の、王都内に家がある貴族の子息や令嬢だけは馬車での通学をしているが、寮に住んでいる者たちは基本的に徒歩である。

リリーの歩く後ろに、ぴったりとくっつくようにして歩くクロエ。


「クロエ、あまりに近すぎないかしら? それに時々『くんくん』って音がするような気がするんだけど……」


「そんなことはありません。王都は私たちにとって、いまだ未知の土地です。何があってもすぐに対応できるようにお傍に控えているのです。それに、匂いを時折嗅ぐことによってお嬢様を堪能……ではなく、お嬢様に毒ガスなどの危険が及ばないか確認しているのです」


(お嬢様のかぐわしい匂い、私を蕩けさせるまさに『毒ガス』!最高です……ッ!)


つい本音を漏らしそうになるクロエであった。


(今一瞬、不穏な単語が聞こえた気がしたけど、クロエに限ってそんなことはないわよね。きっと私の聞き間違いだわ)


リリーはクロエの本質に全く気が付いていなかった。


ーーー


学園に到着した二人は、クラス分けの発表がされている掲示板の方へと移動した。

そこには既に多くの学生たちが集まっていた。


(ゲームの設定どおりでいくのなら私はセシリアやアイリス様と同じクラスのはずよね)


一年生の張り出しの表をクロエが見つけて戻ってきた。


「お嬢様、あちらが一年生のクラス分けが書かれているエリアのようです」


クロエはリリーの手を取り、その掲示板のあるエリアまで連れて行った。


(お嬢様の手はなんてすべすべなんでしょう……)


こんなときにも全くぶれないクロエであった。

クロエに手を引かれ、一年生の掲示板にやってきたリリーは迷わずにSクラスの表を見た。

Sクラスの表の一番上には『リリー プル ストリングス』の名前が書かれていた。


(成績順に名前が書かれているみたいね)


リリーのすぐ下には『レオン プル ルミナリア』の名前が書かれていた。

ちなみにこれは「ルミナリア王国のレオン王子」ということになる。

ルミナリア王国では王族や貴族は『名前 + プル + 土地名(国名)』となる。


(本来だったらレオン王子が一番上に来るはずだったのよね。私レオン王子の活躍の場を取っちゃったことで目をつけられたりしないかしら……)


そしてレオンの下にはリリーの推しの一人である悪役令嬢『アイリス プル ファンデンブルグ』の名前が書かれていた。


(これで晴れてアイリス様のお姿を毎日拝むことが出来るのね!後は在学中にいかにセシリアとアイリス様の二人を仲良くさせるかだわ)


さらにSクラスの真ん中あたりに主人公である『セシリア オルコット』の名前が載っていた。


(セシリアの名前もちゃんとあるわね。あとは私がうまく立ち回って二人の仲を取り持つだけで、私が待ち望んだ『セシリア × アイリス』のイチャラブ百合モードを特等席で拝むことが出来るのよ!)


リリーが物思いにふけっていると、後ろから声をかけられた。


「リリー!ここにいたのね。リリーと同じクラスになれたみたいでよかったわ。これから改めてよろしくね」


セシリアが満面の笑みでリリーのもとへ駆け寄ると、彼女の手を取り、喜びをあらわにした。


「ええ、こちらこそよろしくね」


そう言って握られた手を握り返したのだった。


(こうやって推しの美少女を間近で見れる喜び。それに近くで見ると長いまつげや整った顔立ちとかセシリアの美少女っぷりが良くわかるわ)


その瞬間セシリアは強烈な殺気を感じ取った。


(わたしのお嬢様の手を、私に断りもなく勝手に握るとは、許すまじ、勇者セシリア!)


セシリアは殺気の出どころを探ろうと、殺気が放たれた方を向いた時には、すっかりその気配は消えていた。


(先ほどの殺気、一瞬で消えてしまったけど勘違いだったのかしら……。リリーと同じクラスになれた嬉しさで、少し気持ちが緩んでいたのかもしれないわ。これからはリリーと一緒にいて、どんどん二人で共に成長していかないとだめね!)


「それじゃ、一緒に教室に向かいましょ」


リリーがそう言ってセシリアに移動を促したとき、さらにもう一人、リリーに声をかけてくる人物がいた。

後ろに専属のメイドであるマリーを従えたアイリスである。

ちなみにアイリスはゲーム内でレオン王子の婚約者であるが、悪役令嬢として弾劾され、婚約破棄の末、豪商の後妻として買い取られて不幸になる設定であった。                            

アイリスの存在に気が付いたリリー。           


(アイリス様……なんてお美しいのかしら。)


太陽の光を浴びて黄金に輝く、美しい縦ロールの金髪。吸い込まれるような、宝石のように煌めく黄金色の瞳。そして、細部まで仕立ての良さが伝わる制服を誰よりも優雅に着こなすその立ち姿は、まさに『完璧な公爵令嬢』そのものであった。


(こんな素敵な美少女を悪役令嬢として不幸にしようだなんて絶対にさせないわ! アイリス様の未来は私が必ず守って見せる!)                      


リリーは心の中で熱く誓うのであった。

アイリスがスカートの裾を美しく捌き、膝を曲げる完璧なカーテシーの姿勢で挨拶を始めた。


「突然失礼いたしますわ、リリー嬢。私、『ファンデンブルグ公爵家』の次女で『アイリス』と申しますの。よろしければ今後は『アイリス』とお呼びください。」


(アイリス様が向こうから私に接近してきてくれるだなんて! きっと大金で雇った超一流の講師のもとで学んだ礼儀作法と、冒険者として稼いだ多額の報奨金をつぎ込んで購入した『美しさアップ』のアイテムを沢山使ったおかげだわ!)


「ご丁寧な挨拶、痛み入ります。私は『ストリングス子爵家』の三女、『リリー』と申します。アイリス様と一緒のクラスになれたこと、大変光栄に思っております。よろしければ、私のことも『リリー』と気軽にお呼びいただければと思います」


リリーも優雅にカーテシーを返しながら挨拶を行った。

ここでセシリアも挨拶しようと、アイリスの方を向いて口を開いた。


「私は『セシリア オルコット』といい……」


しかし、そのセシリアの挨拶はアイリスによって阻まれる。


「私、あなたには何の興味もございませんの。私が興味あるのはリリーさんだけですから。さぁ、リリーさん。一緒に教室へ参りましょう」


そう言ってリリーの手を取ろうとするアイリス。だが、その手をセシリアが間に入って阻んだ。


「ちょっと待ってよ。リリーは私と一緒に教室に行くのよ」


そして、その二人の攻防に強い怒りを覚えるクロエ。


(どっちも違います! リリーお嬢様を教室へエスコートするのは、このクロエの役目なんですから!)


この異常事態に焦るリリー。


(これって確か、『レオン王子ルート』に入った時の2年時のクラス分けイベントで、セシリアと婚約者のアイリス様がレオン王子を巡って争う場面のやつじゃないの! それがなぜ入学時に私を間に挟んで争ってるのよ! 歌謡曲の歌詞じゃないけど、私のために争わないで!)


リリーのそんな動揺など露知らず、セシリアとアイリスが左右からリリーの腕に自分の腕を絡め、バチバチとお互いに火花を散らす中、リリーはなすすべもなく教室へと連行されて行くのだった。

そして当然のごとく、その後ろを歩くクロエは背中に般若のお面を背負っていた。

これらの一連の様子をアイリスの後ろで少し離れてみていた専属メイドのマリーが困惑し、おろおろしながらついて行くのであった。

第2章第1話をお読みいただきありがとうございます。


第2章からは入学後のお話になります。

セシリアとアイリスを引っ付けたいのに、なぜか二人に挟まれてしまうリリーの運命やいかに……。

次回の投稿をお待ちください。


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